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SL列車、現役最古の国産車ついに引退へ 長期運休、老朽化で終了の例も...運行は各地で「綱渡り」

   熊本県を拠点に走ってきた「SL人吉」が2024年3月で運転を終了し、九州から「動くSL」が姿を消す見通しになった。列車をけん引する蒸気機関車「58654号機」は1922年11月製造で、国産の現役SLとしては最も古い。JR九州の2022年10月24日の発表によると、部品や技術者の確保が難しくなったことが原因。

   それ以外にも車両の故障で長期間にわたって運休したり、老朽化で運行終了を発表したりする事例が出ており、SL列車の運行は綱渡りが続いている。

  • 運転終了を発表したSL人吉(2012年9月撮影)。「58654号機」にとっては3回目の引退だ
    運転終了を発表したSL人吉(2012年9月撮影)。「58654号機」にとっては3回目の引退だ
  • 運転終了を発表したSL人吉(2012年9月撮影)。「58654号機」にとっては3回目の引退だ

釜石線「SL銀河」は「旅客車(キハ141系)の老朽化」

   58654号機にとっては、今回が3回目の引退だ。製造後は浦上機関区、若松機関区、人吉機関区などで運行され、75年に最初の引退を迎えた。肥薩線の矢岳駅(熊本県)横にあるSL保存館で保存されてきたが、ボイラーを入れ替えるなど大修復を経て、88年に「SLあそBOY」として豊肥本線の熊本-宮地間で運転を再開した。だが、2005年には老朽化や台枠のゆがみで運行継続が難しいとして、2回目の引退を迎えた。

   その後、設計時の図面が見つかり、九州新幹線全線開業(11年)に向けてキャンペーンを行う必要が高まっていたこともあり、台枠を作り直して09年に熊本-人吉を結ぶ「SL人吉」として運行を再開。20年7月の豪雨で肥薩線の一部が不通になってからは、熊本-鳥栖間で活躍してきた。

   釜石線の釜石-花巻間を結んできた「SL銀河」も、23年春で運行を終える。先頭の「C58 239号機」は40年に製造され、山田線・釜石線・大船渡線で活躍し、72年に引退。復興支援と地域の活性化を目的に車両を修理し、14年4月から運行されてきた。

   JR東日本盛岡支社が21年11月に発表した運行終了の理由は、機関車ではなく「旅客車(キハ141系)の老朽化」。キハ141系は、1977~82年にかけて製造された50系客車にエンジンをつけてディーゼルカー(気動車)に改造した車両で、JR東日本がJR北海道から譲り受けた。釜石線には勾配が急な部分があり、客が乗る車両にもエンジンがついている必要があった。

山口と北海道ではSL故障→ディーゼル機関車に

   運行終了の予定がないSL列車も、車両トラブルに苦慮している。山口線の新山口-津和野間を結ぶ「SLやまぐち号」が一例だ。22年5月に蒸気機関車の「D51 200号機」の炭水車に亀裂が見つかり、ディーゼル機関車の「DD51形」を使った「DLやまぐち号」として運行を続けてきた。10月からSLの運行再開を目指してきたが、8月10日、10~11月も「DLやまぐち号」として運行することを発表。22年中のSL運行再開は断念した。

   「貴婦人」の愛称で知られる「C57 1号機」も「SLやまぐち号」をけん引してきたが、20年10月に故障。それ以降、運用に復帰できていない。

   逆に運行再開にこぎ着けられそうなのが、釧網本線の釧路-標茶間などを走る「SL冬の湿原号」だ。「C11 171号機」で、22年1月にピストン部品の損傷が発覚。3月のシーズン終了までディーゼル機関車で運行した。その後修理が完了したとみられ、22年8月には黒煙を出して試運転する様子が目撃されている。近く23年1~3月の運転計画が発表されるとみられる。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)