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中国の海外旅行解禁に「透明性の高いデータ欠如」 感染拡大に米国も警戒感、水際強化を検討

   中国政府が入国時の隔離措置を撤廃するのに続いて、中国人観光客の海外旅行も順次解禁する方針を2022年12月27日に発表した。

   だが、中国国内の感染が拡大する中で、日米は「透明性の高いデータが欠如している」「詳細な状況把握が困難」だとして、新たな変異株の流入を警戒。米国も水際対策強化を検討している。

  • 中国の海外旅行解禁に警戒する国が増えている(写真:ロイター/アフロ)
    中国の海外旅行解禁に警戒する国が増えている(写真:ロイター/アフロ)
  • 中国の海外旅行解禁に警戒する国が増えている(写真:ロイター/アフロ)

マレーシア、インドも対策強化

   中国国家移民管理局の12月27日の発表によると、23年1月8日から中国国民が海外旅行や友人訪問のために行うパスポートの更新手続きなどを「秩序をもって再開」する。これに先立って、一度は緩和された水際対策を強化する動きが出始めている。

   インドの空港では、12月24日から入国者のうち2%を無作為に選んでPCR検査を行っている。陽性者についてはゲノム解析を行い、隔離される。インド保健・家庭福祉省は方針変更の理由を「世界各国で感染事例が増加している」と説明。検査対象は中国からの入国者に限らないが、中国での感染者増加を念頭に置いているとみられる。マレーシア保健省も12月27日、入国者の追跡・監視を強化すると発表している。

   韓国は12月16日から入国時の検疫を強化する「ターゲット(ターゲット)検疫」の対象として中国を指定。聯合ニュースは12月27日、「追加措置の必要性を検討している」とする防疫当局の声を伝えている。

中国では米大使館が業務縮小

   米国政府では、感染拡大で中国でのビザ発給業務に影響が出ている。在中国米大使館は12月15日、感染拡大にともなって業務を縮小し、北京の大使館、上海、武漢、瀋陽、広州の総領事館で通常のビザ発給業務を停止すると発表している。

   CNBCなど米メディアが報じたところによると、米政府高官は

「国際社会では、中国で感染者数が急増していること、ゲノム配列データなど透明性の高いデータが欠如していることに対する懸念が高まっている。このデータがなければ、公衆衛生当局が変異株を特定し、感染拡大を抑えるための迅速な対策を講じることがますます困難になる」

として、新たな水際対策を検討する考えだ。

   岸田文雄首相は12月27日午後、中国での感染拡大を受けて

「中央と地方、政府と民間の間の感染情報が大きく食い違っているなど、詳細な状況の把握が困難であり、日本国内でも不安が高まっている」

と発言。米国とある程度認識を共有しているとみられる。

   日本の水際対策強化は12月30日から。具体的には(1)中国本土からの渡航者および中国本土に7日以内の渡航歴のある者すべてに入国時検査を実施する(2)入国時検査での陽性者についてはすべてゲノム解析の対象とし、待機施設で原則7日間隔離する(3)入国検査に万全を期すため、今後の中国便の増便等について制限を行う、の3点だ。

ブルームバーグ、日本は水際対策強化を「迅速に発表」

   中国に対する水際対策強化を行っている国は必ずしも多くなく、ブルームバーグは

「日本は、到着時に新型コロナ検査が陰性であることを条件とする措置を迅速に発表した」

と報じている。

   中国外務省の汪文斌副報道局長は、12月27日の定例会見で、世界の感染状況について

「国境を越えた安全な旅行を確保し、世界の産業とサプライチェーンを安定させ、世界の経済成長を回復させるために、科学に基づいたアプローチで協力していくことが求められている」

とした上で、水際対策強化に対して

「すべての国にとって、コロナ対応策は、通常の人的往来に影響を与えない、科学的根拠に基づいた適切なものである必要があると常に考えている」

と不快感をにじませた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)