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雪でスタックしたバス、通行人約10人で押して脱出 「危険だ」とSNSで指摘...京都市「離れてと言うべきだったかも」

   雪道でスタックした京都市バスを約10人がかりで押して脱出させた様子を撮るなどした動画がツイッターにいくつか投稿され、反響を集めている。

   通行人の優しさを讃える声が出る一方、もしバスがバックしてきたら危険ではとの指摘も相次いでいる。どのように考えるのか、市側に取材した。

  • 京都市バス(今回のバスではありません)
    京都市バス(今回のバスではありません)
  • 京都市バス(今回のバスではありません)
  • バスを懸命に押す通行人ら(ツイッター投稿の動画から)

「滑って下がってきた車両に挟まれてしまう」などと指摘される

   運転手がアクセルを踏むと、左後輪がうなるような音を立てる。路面は、雪が積もって、凍結状態だが、タイヤにチェーンは巻かれていなかった。

   タイヤの下には段ボールのようなものが敷かれたが、空回りしてなかなか進まない。段ボールが外れると、別の乗務員が駆け寄って、タイヤの前にまた出していた。

   この動画は、2023年1月25日午前10時過ぎにツイッターに投稿された。

   場所は、周囲に映るビルなどから、京都市下京区内の高瀬川にかかる「四条小橋」付近であることが分かる。橋の前後で少し坂になっており、そこでスタックしたようだ。

   ツイッター上では、他にもいくつか動画や写真が投稿されている。そのうちの1つを見ると、スタックしたバスを通行人の男女6人ほどが懸命に押していた。バスは、前後に揺れ動きながら少しずつ前進する。乗務員が橋のたもとに積んであったとみられる融雪剤の袋を持ってきて、右後輪の周りにその白い粉をまく。

   バスを押す通行人は、10人ほどに増え、運転手もアクセルをふかすと、ようやくバスが脱出して、手伝った通行人から拍手が起きていた。

   こうした手助けに対し、「みんな優しい」「市民バスへの愛が感じられる」との声が上がった。その一方で、バスを押す行為については、疑問の声が相次いでおり、「滑って下がってきた車両に挟まれてしまう恐れが」「危険だらけで見てて怖いな」などの指摘が出ている。

「頼んだわけではなく、10人ぐらいが自主的に集まった」

   現場に居合わせたという人が1月26日、J-CASTニュースの取材に次のように話した。

「出勤時にたまたま、バスのタイヤが空回りしているのを見ました。高校生らしき人がバスを押すと、次々に通行人の方が集まっていました。バスが脱出するまで、4分足らずだったと思います。そのときは、危ないと言う人はいませんでしたが、後から考えると、危険な行為だったかもしれません。バスの方は、近寄るなと言う必要もあったと思いますが、あまり責めるとかわいそうな気もして、複雑な気持ちになりますね」

   バスを運行する京都市交通局の運輸課は26日、当時の状況について、交差点で停車した後、青信号で発進しようとすると、バスの後輪が空転したと明かした。

「通行人の方には、こちらから頼んだわけではなく、10人ぐらいが自主的に集まったと聞いています。バスがバックするような斜面ではなく、運転手は、ちょっと押してもらえば走り出せるとの判断だったのだと思います。ただ、本来なら、『危ないので、離れて下さい』などと言うべきだったかもしれません」

   バスのそばにいた別の乗務員は、後続していた他系統のバス運転手だったとした。今回は、通行人の手助けで脱出したが、スタックしたときは、近くの営業所から人が出ることになっているという。

国交省「状況を確認する余地はあると考えている」

   タイヤにチェーンを巻いていなかったことについては、こう説明した。

「バスは、チェーンの必要がある路線を走っていませんでした。坂のある郊外の一部路線では、チェーンを巻いていますが、平らな市街地については、チェーンは必要がないとの認識です。起伏は若干ありますが、坂はほとんどありません」

   今回のバスは、西日本JRバスに業務委託しており、運転手は同社の所属だった。

   同社の広報室は1月26日、取材に対し、「確かに、転倒などをしてしまう可能性があると思います」と答えたうえで、「自然とお手伝いをする通行人の方が集まったため、バスを停車したまま救援を呼ぶ取り扱いにはなりませんでした」と説明した。

   バス会社の指導に当たる国交省の近畿運輸局京都運輸支局の輸送部門担当者は26日、取材にこう話した。

「バスを押すことが危ないと判断する基準がありませんので、お答えすることは難しいです。チェーンについても同様で、大きな事故になれば関係する余地はありますが、警察の判断になると思います。ただ、積雪による運休状況がまとめて報告されることになっていますので、状況を確認する余地はあると考えています」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)