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日本の新聞から夕刊がなくなる? 毎日が東海3県で廃止へ、コロナ禍3年で地方7紙が決断...背景は

   毎日新聞社は2023年2月7日付の朝刊に掲載した社告で、3月末で岐阜、愛知、三重3県の夕刊を休刊すると発表した。3大全国紙が本支社の拠点で夕刊の発行をやめるのは、毎日新聞北海道支社の08年8月末以来、14年7か月ぶり。

   全国紙以外にも、特にこの3年は地方紙でも夕刊の休刊が相次ぐ。速報性に劣ることを背景に朝刊しか購読しない世帯も多く、部数減や輸送コストアップ、配達のための人手不足が追い打ちをかけている。

  • この3年で県紙7紙から夕刊が姿を消す(写真はイメージ)
    この3年で県紙7紙から夕刊が姿を消す(写真はイメージ)
  • この3年で県紙7紙から夕刊が姿を消す(写真はイメージ)

名古屋で「独り負け」だった毎日新聞

   毎日新聞は、東海3県の夕刊休刊にともなって、地域面を「東海ワイド面」として刷新するほか、夕刊に掲載している記事を朝刊に収録する。社告では、休刊の理由を「読者の皆様のライフスタイルの変化に対応するため」と説明しているが、毎日新聞は名古屋では「独り負け」の様相を呈してきた。

   日本ABC協会がまとめた22年上期(1~6月)の平均販売部数によると、最も部数が多いのが中日新聞で朝刊192万7216部、夕刊23万7342部。全国紙では、朝刊ベースでは朝日→読売→日経→毎日の順に多い。朝日新聞が朝刊23万2834部、夕刊4万4207部で、朝刊のみ発行している読売新聞が13万3930部。日経新聞が朝刊12万8241部、夕刊6万4458部で、毎日新聞が朝刊6万1796部、夕刊1万5718部と続く。毎日新聞夕刊の部数は19年上期は2万2837部で、コロナ禍を経た3年間で31.2%減少。残りの3紙も、夕刊は同様に3割程度減少している。

   新聞業界では、朝刊または夕刊の片方しか購読しない「セット割れ」が問題化してきた。朝夕刊両方を購読する「セット率」をみると、22年上期は中日新聞12.3%、朝日新聞19.0%、日経新聞50.3%、毎日新聞25.4%だ。元々のシェアやセット率の低さ、部数の減少を背景に夕刊の休刊を決めたとみられる。

「セット率」100%でも3紙が夕刊やめる

   夕刊がなくなるのは名古屋の毎日新聞に限った話ではなく、県紙レベルでは、コロナ禍の3年で7紙から姿を消す。大分合同新聞(大分)と徳島新聞(徳島)が20年3月、東奥日報(青森)が20年8月、山陽新聞(岡山)が20年11月、高知新聞(高知)が20年12月、熊本日日新聞(熊本)が21年9月に発行を打ち切った。静岡新聞(静岡)も23年3月いっぱいで夕刊の廃刊を決めている。

   19年上期時点のセット率を見ると、大分合同新聞100.0%、徳島新聞10.5%、東奥日報98.2%、山陽新聞8.6%、高知新聞62.7%、熊本日日新聞11.8%、静岡新聞100.0%。セット率が100%に近い3社が夕刊をやめる判断をしている。この7県は全国紙やブロック紙が夕刊を発行していない地域だ。複数の新聞を扱う販売店の場合、朝刊は複数紙を一度に配ることができるが、夕刊は県紙のみを配ることになり、効率が悪くなってしまう。

   配達の人手に言及したのが、東奥日報の社告だ。「全国的に朝夕刊を完全セットで発行している新聞社は東奥日報社を含めて2社だけです」と断った上で、夕刊をやめる理由を次のように説明している。

「新聞製作にかかる原材料費や輸送コストが上昇し、広告も減少するなど新聞販売を取り巻く環境は悪化を続けております。本紙各販売店においても、配達員不足が深刻さを増し、人件費がアップする一方、少子高齢化と人口減少で購読者も減少しています。さらに、消費税増税や新型コロナウイルスの影響で折り込み広告が激減するなど販売店経営を圧迫しております」

   現時点で朝夕刊の両方を発行しているブロック紙と県紙は、前出の静岡新聞を除くと、北海道新聞(北海道)、河北新報(宮城)、東京新聞(東京)、新潟日報(新潟、タブロイド判の「Otona+(おとなプラス)として発行)、北陸中日新聞(石川)、北國新聞(石川)、信濃毎日新聞(長野)、中日新聞(愛知)、京都新聞(京都)、神戸新聞(兵庫)、西日本新聞(福岡)の11紙を残すのみだ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)