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「成人式の振袖を、卒業式は違う色で着たい」 紅赤から桜色へ...願い叶えた職人技に驚き「魔法みたい」

   「成人式で着用した振袖を、卒業式は違う色で着たい」――こんな願いに応えた着物職人たちの技術が「魔法みたい」とツイッターで注目を集めた。成人式のために仕立てた鮮やかな紅赤色の着物が、柔和な桜色に染め替わった。色抜きを得意とする職人夫婦が元の色をきれいに抜き取り、振袖を仕立てた職人が新たな色に染め直したそうだ。

   J-CASTニュースは2023年2月10日、振袖を仕立てた池内友禅(京都市)の池内真広(まさひろ)さんに取材した。

  • 柔和な桜色に染め替わった振袖
    柔和な桜色に染め替わった振袖
  • 柔和な桜色に染め替わった振袖
  • 鮮やかな紅赤色の振袖(元の色)
  • 柔和な桜色に染め替わった振袖
  • 鮮やかな紅赤色の振袖(元の色)
  • 脱色後の振袖

1着で親子の願いを叶えた

   池内友禅は、京都・嵐山で着物や帯を手掛ける工房だ。職人の池内さんは4日、着物を染め替える技術があるとツイッターで紹介した。話題になったのは6日。実際に染め直した淡いピンクの振袖を紹介したことをきっかけに、大きな注目を集めた。

「とても珍しい濃色から薄色への振袖の染め替え。鮮やかな紅赤色が柔和な鴇色(ときいろ)に生まれ変わりました。ご両親が選ばれた成人式の色、本人が希望した卒業式の色。一着でどちらの願いも叶えることができました」

   ツイッターでは「この技術、信じられない!」「これぞ職人技」などと驚く声が寄せられ、10日17時までに約43万7000回表示され、約2000件のリツイート、約8000件の「いいね」が寄せられた。

   池内さんは取材に対し、着物の色を抜く技術「抜染(ばっせん)」に秀でた職人夫婦の協力で、新たな色に染め直すことができたと説明する。

脱色に長ける職人夫婦の協力があった

   依頼主は、過去に池内友禅で振袖を仕立てた親子だった。娘が成人式で着た振袖を卒業式では薄い色で着たいと希望し、母と相談に訪れた。池内さんは「薄い色かぁ」と苦心した。着物の色を薄めることは基本的にはできない。しかし、抜染を得意とする職人には心当たりがあった。

   池内さんによるとこの職人は、夫婦で何十年にもわたって研究を重ね、ほとんどの着物の色を抜くことができる技術を確立したという。過去にアンティーク着物の色を薄めてほしいという依頼を受けた際に、色抜きを頼んだことがあった。

「自分たちで仕立てた着物の色を抜いてもらうのは初めてでした。実際に依頼して、こんなに変わるんだ、あの赤色はどこに行っちゃったんだろうと驚きました。 着物の模様以外の部分の両面に、殊な抜染糊を用いて丁寧に色を抜いているのだそうです。約16メートルある柄付きの振袖の色を抜くというのは、技術から見ても作業量からみてもすごいと感じました」

   振袖は、ほとんど真っ白な状態に。柄の部分は綺麗に元の色が残されていた。池内友禅では、白くなった着物の上から新たな色を加えた。「引き染め」という刷毛を引きながら染めていく方法で、白い着物が淡いピンク色に染め上げた。こうして染め替えられた着物を、依頼した親子は喜んでいたという。

   池内さんは、「自分たちも驚いた技術をもっと多くの人に紹介し、興味を持ってもらいたい」と感じ、染め替えの様子などをツイッターで紹介したという。

「想像以上の反響があり驚きました。職人夫婦にもお伝えしたところ、喜んでいらっしゃいました。着物を再生する技術を培うことを生き甲斐だとおっしゃっていられたので、その技術を知ってもらえて嬉しかったようです」

   池内さんは、今後も伝統的な手描友禅染の美しさや、染色の面白さを多くの人々に伝えていきたいと意気込んだ。