J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

フェイク広告が巧妙化...ヒカキン被害に TikTok「読み上げ音声」を悪質利用、運営会社「誠に遺憾」

   「毎晩飲んでいたらガチでやせていた」「嘘だと思うなら一回飲んでみて」人気ユーチューバーのHIKAKIN(ヒカキン)さんの声がサプリメントを紹介するこの広告動画、実はフェイクだった――。

   著名人が、ネット広告での権利侵害の被害を訴えるケースは少なくないが、「声」の無断使用は珍しいといえる。「AI音声」が普及する中、同様のトラブルは今後増えそうだ。

  • ヒカキンさん
    ヒカキンさん
  • ヒカキンさん

「脂肪がごっそり落ちて、トイレ壊れた」

   問題の広告は、「嫁が最近愛用している謎の粒」とのナレーションで始まる。

   脂肪の塊が排泄時に排出される信じがたいイメージ映像とともに、「本当はやめて欲しい。理由は脂肪がごっそり落ちて、トイレ壊れたから」と実体験ともとれるエピソードを語り、「やったのはコレ。毎晩飲んでたらガチでやせてた。10年太ってた嫁が40キロ台になるって思ってなかった。しかも2か月たっても体重キープしてる」と「シボローカ」という商品名のサプリメントを宣伝し始める。

   「実はこれ、効果もパッケージにしっかり書いてある。ガチで効率良い体重ストンサプリなんだけど男性用に開発されているから女性はあっという間にやせる。今ならこの動画限定で実質無料でもらえる。どうせ追加料金あるんだろと思ってたけど2回目買わされてとかもないからガチのマジで実質無料。普通に買ったら6000円くらいするからキャンペーン終わる前に急いで。嘘だと思うなら一回飲んでみて」と甘言を並べて購入を勧めた。

   知名度の高いインフルエンサーが夢のような痩身効果をうたっていると、思わず信じてしまいそうだが、ヒカキンさんは動画制作に一切関与していなかった。本人が2月21日、否定した。

視聴者「ヒカキンさんのイメージダウンに関わる」

   ヒカキンさんはユーチューブチャンネルで、視聴者からの情報提供で事態を把握したと報告した。「僕の声が勝手に使われている」と怒気を込め、被害の全容を明かした。

news_20230222195811.jpg
ヒカキンさんが被害を訴える動画より

   ヒカキンさんは22年10月、TikTokと公式にコラボレーションし、TikTok動画の「テキスト読み上げ機能」に声のデータを提供した。ユーザーが動画編集時に入力したテキストを自動音声化できるサービスで、新たにヒカキンさんの声が加わった。

   ヒカキンさんによれば、TikTokの運営会社はヒカキンさんの読み上げ機能を広告では使えないよう設定していたが、規制回避のためユーチューブ広告として配信されていた。

   ヒカキンさんに情報提供した視聴者は22日、J-CASTニュースの取材に、2月8日に「YouTube ショート」で見かけたと答えた。

   「一瞬TikTokの音声機能とは気づかず、あのヒカキンさんがこんな怪しいサプリの宣伝をしているのか...」と驚いたといい、「ヒカキンさんのイメージダウンに関わる無許可使用で非常に悪質だと感じます」と指摘した。

   著名人が、ネット広告での肖像権侵害を訴える例は少なくないが、「声」が無断使用されたのは珍しいとみられる。ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者・西村博之氏の「おしゃべりひろゆきメーカー」が話題になるなど「AI音声」が普及する中、同様のトラブルは今後増えそうだ。

UUUM、バイトダンスの見解

   ヒカキンさんが所属するUUUM広報は取材に「HIKAKINが動画で話していること以上に回答できることはございません。今後も何かある際にはHIKAKINから発信していく方針です」とした。

   TikTokを運営するバイトダンス広報は、「ユーザーの皆様に楽しく動画を作成していただくための機能を、ルールを違反してまで、悪用されたことについては誠に遺憾です」と答えた。

   TikTokでは、個人アカウントとビジネスアカウントでシステムが分かれており、TikTok広告を配信できるのは後者のみだという。

   ヒカキンさんが話したとおり、「テキスト読み上げ機能」はビジネスアカウントでは使えず、商用利用は規約違反としている。問題の動画は個人アカウントで作成され、監視の目が届かない別のプラットフォームに配信されたようだ。

news_20230222195845.jpg
人気の「テキスト読み上げ機能」

シボローカを販売する企業は...

   「シボローカ」を販売するのは、通信販売会社の「ヘルスアップ」(千葉県柏市柏)。

news_20230222195910.jpg
「シボローカ」の広告例
news_20230222195932.jpg
「シボローカ」の広告例

   同社をめぐっては、消費者団体の「消費者機構日本」や「埼玉消費者被害をなくす会」から、商品の注文画面などに消費者の誤認を招くような表示があるとして、是正を求められた過去がある。

   ヘルスアップは21年10月になくす会に対し、「今後もより一層のコンプライアンス意識をもち、プロモーション活動の適正化をはかって参ります」と回答していた。

news_20230222195958.jpg
消費者機構日本ウェブサイトより
news_20230222200031.jpg
埼玉消費者被害をなくす会ウェブサイトより

   ヘルスアップにも取材を申し込んでいるが、現在までに回答はない。回答があれば、追記する。