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敷島製パン、コオロギ商品めぐり対応苦慮 デマや陰謀論も拡散...提携企業は法的措置を検討

   Pascoで知られる製パン大手「敷島製パン」のコオロギパウダー入り商品を巡り、虚実ないまぜの情報が数多く広まっている。

   昆虫食への強い抵抗感からか、間違った憶測にもとづく批判や、こじつけのような言説が少なくない。提携企業は風評被害に対し、法的措置も辞さないとしている。

  • 商品サイトより
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電凸や不買を呼びかける投稿も

   敷島製パンは20年12月から、昆虫食の大学発スタートアップ「FUTURENAUT」(群馬県高崎市)と共同で「Korogi Cafe(コオロギカフェ)」シリーズを展開している。

   パンやフィナンシェなどにコオロギパウダーを配合し、通販限定で販売する。将来の食糧不安に備えた取り組みだ。発売開始2日で完売したほど好評を博し、メディアにも多く取り上げられている。

   しかし、23年2月中旬ごろから昆虫食の是非がツイッターで議論となり、敷島製パンにも飛び火した。

   冷静な意見表明やファクトに基づく指摘がある一方、「Pascoの生産ラインでコオロギ入りも作っていると思うと(中略)買う気にもならない」「パッケージにコオロギ粉入りと明記してもらいたい。不用意に食してアレルギー出る人もいるかも知れない」などと真偽不明の情報が広まった。陰謀論や荒唐無稽な言説を根拠に、いわゆる電凸や不買を呼びかける投稿もあった。

   過剰なバッシングには、「心理的嫌悪感は分かるけどPasco不買とかさ、短絡的過ぎるよ」「デマに対しては厳格な対応をすべきかと」とあきれる声も少なくない。

敷島製パンの見解

   シリーズの商品サイトでは、2月28日までに上部の目立つ位置に注意事項が掲載された。

   コオロギカフェは専用の施設で製造しており、それ以外の商品とは工場建屋、製造ライン、製造スタッフが異なると説明する。そのため他商品にコオロギパウダーが混入する可能性はなく、使用する予定もないとした。

   Q&Aページも28日に更新された。具体的な変更箇所は不明だが、主に次の説明が記載されている。

【アレルギーについて】
コオロギには甲殻類に似た成分が含まれており、えびやかになど甲殻類アレルギーの方にとってはリスクが高いと言われています。そのため、下記のような注意喚起文を赤字でラベルに表示しています。「本品で使用している食用コオロギパウダーは、えびやかになどの甲殻類と類似した成分が含まれています。えびやかにのアレルギーをお持ちの方はお控えください」

【販売について】
「Korogi Cafe」シリーズ商品は公式オンラインショップ専用の商品であり、スーパーやコンビニエンスストアで販売していることはありません。また、KorogiCafe商品はコオロギを使用していることが特長であるため、コオロギを使用した商品であることをパッケージにも分かりやすく記載しております。

【原料のコオロギについて】
Pascoで使用しているコオロギパウダーの原材料となっているコオロギは、専用の農場にて、大豆やトウモロコシから作られた餌を厳密な管理下で与え養殖されています。

FUTURENAUTの見解

   FUTURENAUTも21日、「弊社に食用コオロギの安全性に関するお問合せが増えております」として、Q&Aを公開した。

https://futurenaut.co.jp/%E3%82%B3%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%82%AE%E3%83%BB%E6%98%86%E8%99%AB%E9%A3%9F%E3%81%AE%E5%AE%89%E5%85%A8%E6%80%A7%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%A6%8B%E8%A7%A3/

「寄生虫についてどう対応していますか」
「コオロギには酸化グラフェンが含まれているという研究を見ました」
「加熱処理について、沸騰水で40分、オーブンで7時間という事だが、本工程で安心というエビデンスがあるのか」
「世界や日本でコオロギを食べていなかったのは、安全性の観点で問題があったからではないですか」
「妊婦の方が流産する可能性がある成分が入っているのか」

などの質問が寄せられているとし、例えば「コオロギには発ガン性があるという研究を見ました」には、「弊社ではそのような学術研究があることを把握しておりません。ご覧になった査読付き研究論文をご提示ください」と回答。

   「コオロギの菌数や残留農薬が心配です」には、「弊社では、食品衛生法に基づく菓子製造の許可を取得し、管理された設備を使用し(衛生管理基準である)HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の方法に基づき食品を製造しております。また、加工食品について定期的に食品微生物と残留農薬の自主検査を行い、品質管理を徹底しています」と説明した。

   「科学的根拠のない風評の流布」には顧問弁護士と相談の上、厳正に対処するとしている。

   自社メディアでは16日に「少なくともうちは、国から多額の補助金、助成金、研究費が入ってるわけではありません。(昆虫食の会社に限らず申請ができるような持続化補助金や、そういったものは利用はしていますが、それは昆虫食だからもらえる補助金ではありません)」とも発信している。

   敷島製パン広報室に3月1日、取材を申し込むと「弊社としての回答は差し控えさせていただきます」、FUTURENAUTからも「大変申し訳ありませんが、昨今の倫理観やリテラシーに欠けた情報拡散の現状を鑑みてお断りいたします」と返事があった。