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徴用工問題「解決策」に抗議集会も 割れる韓国世論、本当にこれで「決着」となるのか

   韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が2023年3月16日から2日間の日程で日本を訪問する。議論の対象に含まれそうなのが、元徴用工訴訟の問題に対して韓国政府が発表した「解決策」だ。

   韓国では各地で抗議集会が開かれるなど、世論の反発は強い。ただ、それでも少しずつ前向きな動きも出始めている。尹氏も、解決策で示された方針で賠償すれば事態は収まるとみている模様だ。ただ、政権支持率は1か月ぶりに「4割割れ」で、先行きは見通せない状況だ。

  • 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。日韓首脳会談では元徴用工訴訟をめぐる「解決策」も話題になりそうだ(写真:AP/アフロ)
    韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。日韓首脳会談では元徴用工訴訟をめぐる「解決策」も話題になりそうだ(写真:AP/アフロ)
  • 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。日韓首脳会談では元徴用工訴訟をめぐる「解決策」も話題になりそうだ(写真:AP/アフロ)

野党代表は「自衛隊の軍靴が再び韓半島(朝鮮半島)を汚す」

   解決策は、韓国政府傘下の財団が寄付金を集めて日本企業の代わりに原告に賠償金を支払う内容。勝訴が確定した原告は15人(うち存命は3人)で、利息含めて約40億ウォン(約4億2000万円)が支払われる。3月15日、韓国の鉄鋼大手ポスコが40億ウォンを寄付することを発表。肩代わりする賠償金の原資は確保された形だ。

   原告側は、日本企業による直接の賠償や、謝罪を改めて表明することを求めてきた。解決策ではこの点が盛り込まれておらず、原告のうち生存している3人全員が、解決策を批判している。

   野党「共に民主党」は、解決策への批判を強めている。李在明(イ・ジェミョン)代表は3月11日に開かれた集会で、今回の解決策を機に日韓米の軍事協力が強化されるとして、

「(日韓米の)合同演習を口実に、自衛隊の軍靴が再び韓半島(朝鮮半島)を汚すということが発生しかねない」

などと主張。3月15日にも、解決策の撤回を求める集会を開いている。

   ただ、必ずしも「反対一色」というわけでもない。忠清北道(チュンチョンブクド)の金栄煥(キム・ヨンファン)知事は3月7日、フェイスブックに

「私は国益のためなら喜んで親日派になる」
「尹大統領と朴振(パク・チン)外相の愛国心に頭を下げて敬意を表する」

などと書き込んだ。

   コメント欄には賛否両論が書き込まれる中、韓悳洙(ハン・ドクス)首相は、

「知事、励ましの言葉ありがとう。健康に注意してください」

と書き込んだ。金氏は22年に与党「国民の力」から出馬して当選している。

元徴用工遺族「今、重要なのは『克日』であって『反日』ではない」

   原告側にも動きが出始めている。朝鮮日報は3月15日、遺族のうち3人が解決策に賛成する意向を示したと報じた。韓国政府による解決策発表後、原告側が公然と賛成の意向を表明するのは初めてだという。記事によると、遺族は尹氏が未来志向を掲げたことに共感しているほか、韓国が経済大国になったことを背景に「今、重要なのは(日本に勝つ)『克日』であって『反日』ではない」とも説明。日韓首脳会談では、岸田文雄首相から元徴用工らを「慰撫(いぶ)する温かい一言があればいい」とも述べたという。明示的な謝罪までは求めていないという点で、従来の原告側の姿勢よりもハードルが下がったとも言えそうだ。

   読売新聞が3月15日朝刊に掲載した尹氏のインタビューによると、韓国の政権が変わると約束が覆されたり、韓国の財団が日本側に対して支払いを求めたりする懸念について、次のように回答。世論を抑え込むことに対する自信を見せた。

「関係する国民を説得し、理解を求め、後に求償権の行使にならないようにする方法について検討し、今回、強制徴用の解決策に対する結論を下した。だからおそらく、その部分は心配に及ばないと私は判断している。政府のこのような立場、結論によって弁償がされれば、おそらく、これ以上の議論は収まるのではないか」

   調査会社「リアルメーター」の調べによると、3月第2週(3月6~10日)の政権支持率は38.9%で、前週より4ポイント下落している。「4割割れ」は2月第2週以来4週間ぶりだ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)