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岸田氏はキーウ、習近平氏はモスクワ訪問 重なった会談で「北東アジアの深い溝浮き彫りに」海外報道

   G7(主要7か国)首脳としては最後になった岸田文雄首相のウクライナ訪問とゼレンスキー大統領との首脳会談だが、世界各国のメディアの関心は比較的高かった。中国の習近平主席がロシアを訪問し、プーチン大統領と首脳会談を行ったタイミングと重なったためだ。

   中国がロシア側、日本が「ロシアに対抗して欧米の側に立つアジアの主要国」だという立ち位置が鮮明になり、「北東アジアの深い溝」が浮き彫りになっている。

  • キーウ郊外のブチャを訪問する岸田文雄首相。習近平首相のモスクワ訪問と対比するメディアも多かった(写真:ロイター/アフロ)
    キーウ郊外のブチャを訪問する岸田文雄首相。習近平首相のモスクワ訪問と対比するメディアも多かった(写真:ロイター/アフロ)
  • キーウ郊外のブチャを訪問する岸田文雄首相。習近平首相のモスクワ訪問と対比するメディアも多かった(写真:ロイター/アフロ)

「2人のアジアのリーダーによる、驚くべき分割画面」

   米CNNは、

「G7のアジアのメンバーがウクライナを訪問するのは初めてで、この地域の米国の同盟国が訪問するのも初めて」

だと紹介し、2つの首脳会談で

「ウクライナ戦争をめぐる北東アジアの深い溝を浮き彫りにしている」

と指摘している。その理由を次のように説明した。

「日本はウクライナに対して多額の援助を約束する一方で、中国は、世界の敵で戦犯容疑者になった、孤立を深めるプーチン氏を支持する唯一の声だ」

   米ワシントン・ポスト紙は、首脳会談のタイミングが重なったことを「2人のアジアのリーダーによる、驚くべき分割画面」だと表現し、日本が「欧米の側に立つアジアの主要国」だとアピールを強めているとみている。

「岸田氏が、この地域で自己主張を強める中国を視野に、欧州と東アジアの安全保障上の懸念を結びつけ、(日本が)ロシアに対抗して欧米の側に立つアジアの主要国だとアピールしようと努力していることを強調するものであった」
「中国とは象徴的で対照的であり、ロシアの侵攻がアジアにおける安全保障のあり方をどのように変えてきたかを浮き彫りにした」

   米ニューヨーク・タイムズは2つの首脳会談を

「東アジアの近隣諸国からの支持を競い合う舞台」

   だと表現した。

「岸田首相は自由を支持し、 習は戦争犯罪人の側に立っている」

   英BBCは、両首脳が「紛争の反対側を戦略的に訪問している」とする一方で、2つの訪問が重なったことは「驚くべきこと」だと報じた。

   日韓の関係改善が、北朝鮮対応で足並みがそろう点で米国を安心させることを指摘しながら、

「ウクライナ訪問は、間違いなく米国に歓迎されるだろう」

   とした。

   この指摘は、米国のラーム・エマニュエル駐日大使のツイートに色濃く反映されていると言えそうだ。3月21日午後のツイートで、岸田氏について

「ウクライナ国民を守り、国連憲章にうたわれている普遍的な価値を促進するために、歴史的なウクライナ訪問を行った」

とする一方で、習氏を

「ウラジーミル・プーチンを国際刑事裁判所から守り、この戦争に反対する国際世論から彼をかばうために訪問している」

と表現。

   習氏を強い言葉で非難しながら、岸田氏のウクライナ訪問を評価した。

「2人はともに欧州を訪問している太平洋地域の首脳であるが、 岸田首相は自由を支持し、 習は戦争犯罪人の側に立っている。 明るい未来のためには、どちらの太平洋地域のリーダーがふさわしいパートナーだろうか」
「習近平は、自国民を殺害するイランの指導者や、兵士がまるで『肉挽き機』で殺されるような前線に国民を送り込むロシアの戦犯、そして民を飢えさせる北朝鮮の指導者を容認している。人々を守る指導者もいれば、政府が自国民を残虐に扱うことに手を貸すものもいる。 あらゆる人々の明るい未来を望む指導者がいる一方で、 片や自由の灯を消そうとしているものがいる」

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)