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リプトン「ミルクティー」なぜ元の味に? 1年での再変更、異例アニメで告知...森永乳業に聞いた舞台裏

   惜しまれながらも終売した「リプトン紙パック」シリーズの定番商品「リプトン ミルクティー」の復活を知らせるアニメーションが大きな注目を集めている。

   キャラクターのセリフや背景に描かれた小物などには、終売を惜しむ客から寄せられた「ご意見」が反映された。中には「どうして変わったんや」「失望」などの厳しい声もある。

   こうした声を製造・販売元の森永乳業はどのように受け止めていたのか。J-CASTニュースは2023年3月27日、同社に取材した。

  • 2022年3月まで販売していた「リプトン ミルクティー」が復活
    2022年3月まで販売していた「リプトン ミルクティー」が復活
  • 2022年3月まで販売していた「リプトン ミルクティー」が復活

「すべての皆さまのご期待に添えていないことを申し訳なく感じておりました」

   森永乳業は昨年3月、リプトンシリーズの「ミルクティー」を終売し、新たにリニューアル商品「ロイヤルミルクティー」を発売した。

   それから約1年。同社はリプトンのミルクティーを復活させるとして23年3月20日、「667通のラブレター」と題した短編アニメーションを公開した。あらすじは次のようなものだ。

   主人公のトーマと唯は甘くも苦い青春時代を共にしてきた。しかし謎の転校生のルミが現れ、その生活が一変する。お互いの世界から相手が消えてしまったのだ。二人はそれぞれの痕跡をたどりながら手紙を送り続ける。「君を愛してる」「心から大好きでした」などと気持ちが高まった二人は走り出す。

「どうかお願いします、戻ってきて」

   強く願い続けた二人は、薄紫に色づく夜明けの平原で再会を果たす。手を伸ばした先にはリプトンのミルクティーがあった。そしてネタばらしが始まる。

   このアニメーションは、ミルクティーのファンからの問い合わせ内容をもとに製作された。転校生のルミは、リニューアル商品「ロイヤルミルクティー」が元ネタとなっている。つまり、ロイヤルミルクティーの登場とともに姿を消したミルクティーを惜しむ物語だ。

   トーマと唯の情熱的な叫びはすべて、ファンから寄せられた赤裸々な声だ。キャラクターが着用している服に描かれた英字ロゴや、背景の交通標識、店の看板など細かなところにも「復活希望」「ご飯よりもミルクティー」などのコメントが採用された。中には「リニューアルはいらない」「購入をやめてしまいました」など叱責するような声もある。

   厳しい声を含む問い合わせの数々を、どのように受け止めていたのか。森永乳業は取材に対し、次のように述べる。

「『リプトン ロイヤルミルクティー』の発売後、『新しい商品もおいしい』といった嬉しいお声を頂く一方で、従来の『リプトン ミルクティー』の復活を望むお声があることも認識しており、すべての皆さまのご期待に添えていないことを申し訳なく感じておりました」

なぜ赤裸々な「問い合わせ」を採用したのか

   従来のミルクティーの発売とともに、昨年3月に登場したロイヤルミルクティーは終売となる。1年での再変更に抵抗は無かったのか。森永乳業はロイヤルミルクティーも多くの人に支持されていたことから、社内では何度も慎重に検討を重ねていたと明かす。

   しかし23年3月までに667件もの再販を希望する声が押し寄せられたため、もとの味わいに戻したミルクティーの販売を決意した。商品パッケージには、ファンに向けて次のようなコメントを載せている。

「待たせて、ごめん。あの日、勝手に味を変えてごめんなさい。あなたが"もとの味に戻して"と手紙をくれたから。森永乳業史上最多のご意見が届いたから。もとの味に戻しました。だかれこれは新発売ではなく、もとの味で、旧発売」

   プロモーションには、電通PRコンサルティングが携わった。取材に対し、アニメーションにファンの声を採用した狙いについて、商品を飲んだことが無い人にもその熱量を客観的に伝えることだったと明かす。

「復活してほしいことを懇願するファンのみなさまの実際のドラマチックな言葉にこそ、リプトンミルクティーの『価値』がぎゅっと圧縮されているように感じ、そのお声の数々を、ラブレターに見立てて『アニメ』として公開することを企画しました」

   アニメーションは青春恋愛アニメのセオリーをすべて詰め込んだと自負する。台詞だけでなく主題歌の歌詞、映像内のイラストにも問い合わせ文言を入れることについては、「いかに違和感なく入れられるかが肝」だったという。特設サイトでは、採用した客からの問い合わせ内容と、その受け止めなどを紹介している。

喜びの声は「667通」を超えるのか

   特設サイトの末尾では、ミルクティーの復活に対する感想をツイッターなどに投稿してほしいと呼びかけている。

「復活したリプトンミルクティーに『喜び』の声やお言葉をいただけると大変うれしいです・・・
僭越ながら・・・できれば667通以上・・・喜びの声、お待ちしております」

   森永乳業は、消費者からの意見で広告を作るのは初の試みだったとして、公開するまで「お客さまからどのような反応をいただけるか不安」だったという。

   公開後はSNSを中心に大きな反響があった。特設サイトへのアクセス数は公開から3日で1万回を超えたという。公式ツイッターアカウントでの動画再生数も27日19時現在までに231万1000回を超える大きな反響があった。問い合わせ窓口には24日時点で約100件の感想が寄せられた。

「『リプトン ミルクティー』の復活を受けて大きな反響を頂いたことを大変嬉しく感じており、弊社としましても、多くの方から愛されている商品であることを再認識いたしました。
皆さまからの想いで復活した『リプトン ミルクティー』を、これからも多くの方にお楽しみいただけたらと考えております。お問い合わせをいただいた方をはじめ 、『リプトン ミルクティー』をご愛飲いただいていた方に改めてお楽しみいただくとともに、今回の復活をきっかけに、これまで飲んだことのない方にもぜひお試しいただけたら幸いです」

    今後も継続的にミルクティーを販売すると意気込む。ロイヤルミルクティーの終売について、森永乳業は「ご愛顧いただいた皆さまには、何らかの形で感謝の気持ちをお伝えしていけたらと考えております」と述べた。