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「総理、逃げるんですか!」→「一言だけ答えよう、じゃあ」 岸田首相が異例の答弁、3分30秒で何を語ったのか

   広島市で開かれていた主要7カ国首脳会議(G7サミット)が2023年5月21日に閉幕したことを受けて岸田文雄首相が開いた議長国会見で、記者席から「総理!逃げるんですか!」いった声があがり、一度は離れた演台に戻って会見を再開する場面があった。

   日本の首相が首相官邸で開く記者会見では、打ち切りに対する抗議を受けて追加で質問を受けた事例はあるが、国際会議後の会見では珍しい。

  • 司会者が会見終了を宣言する中、最前列の記者が質問を求めた
    司会者が会見終了を宣言する中、最前列の記者が質問を求めた
  • 司会者が会見終了を宣言する中、最前列の記者が質問を求めた
  • 「逃げるんですか!」の声を受けて「一言だけ答えよう、じゃあ」と応じる岸田文雄首相
  • 記者の質問に応じる岸田文雄首相

記者の問いかけに応じ、メモなしで答弁

   会見は14時30分から15時にかけて30分間を予定していたが、前の予定が長引いて14時42分にスタート。約23分にわたって冒頭発言し、日本メディアから2問、外交メディアから2問ずつ質問を受けた。この時点で、予定よりも10分長い40分が経過。司会者が終了を告げる中、数人の記者が質問を求めた。

   記者が撮影していた後方のカメラ席からは、最前列の記者が手を挙げて何かの声をあげていることは分かったが、その内容までは聞き取れなかった。首相官邸が公開している動画によると、記者は

「総理、待ってください。核軍縮ビジョンについて聞かせてください。1問だけでいいので。総理!逃げるんですか」

などと声をあげていた。岸田氏は一度は演台を離れ、書類を入れたファイルを秘書官に渡したが、「逃げるんですか」と言われた直後に「一言だけ答えよう、じゃあ」と演台に戻った。

   「核軍縮ビジョンについて答えろという質問でありました」と切り出した答弁では、22年に発表した「核兵器のない世界」に向けた行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」の内容に言及。G7として核軍縮に焦点を当てた初めての独立文書「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」で、「その(「ヒロシマ・アクション・プラン」の)考え方に基づいて、G7で努力していこう、こういったことを確認した」などと、メモなしで3分30秒ほどかけて説明した。記者は

「(聞き取れず)なんですけども、その点はお聞かせいただけませんか?」

と質問を続けたが、岸田氏はそのまま退出し、記者会見は終了した。

ドイツ、英国のG7議長国会見は...?

   安倍信三元首相が首相官邸で開いた会見では、記者の求めに応じて追加の質問を受けたことがある。20年3月14日には

「答えられないんですか?」
「こんなので記者会見って言えるんですか?」

といった声があがり、同6月18日の会見では

「外国メディアが当たっていません」

という求めに応じた。

   ただ、日本が前回議長国を務めた16年の伊勢志摩サミット後の議長国会見は約32分。日本メディアと外国メディアから2問ずつ質問を受けた。日本政府が国際会議や首脳会談後に開く首相会見では、この運用が慣例化している。

   ただ、日本以外が議長国を務めた際の記者会見は様相が異なる。22年の独エルマウサミット後の会見は43分30秒ほど。15分近くにわたって冒頭発言があり、11人が質問した。9人が質問し、会見開始から38分が経過したところで司会者から「あと2問」のアナウンスがあり、さらに2人の質問に答えて終了した。

   21年の英コーンウォールサミットの会見は37分ほど。冒頭発言は7分ほどで、残る30分で7人が質問した。答弁を受けて追加質問をする記者や、答弁を遮ってマイクなしで反論する記者もいた。質問した大半が英メディアの記者で、米国のニューヨーク・タイムズ記者が質問冒頭に「国外の記者も(質問できる記者の)リストに加えてくれたことを感謝したい」と述べた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)