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復調の村上宗隆「WBC燃え尽き症候群」払拭か 元侍ジャパン戦略コーチが指摘する「完全復活の可能性」

   プロ野球ヤクルトの村上宗隆内野手(23)が2023年5月21日に横浜スタジアムで行われたDeNA戦に「4番・サード」で先発出場し、今季7本目の本塁打を放った。試合は3-3の引き分けに終わったが、村上は5打数2安打2打点を記録し主砲として存在感を示した。

  • 村上選手(写真:CTK Photo/アフロ)
    村上選手(写真:CTK Photo/アフロ)
  • 村上選手(写真:CTK Photo/アフロ)

「WBCのメンタル的な影響が大きい」

   今季は開幕から打撃不振が続き、4月は本塁打わずか1本、打率は.152まで落ち込んだ。5月に入ってからは打撃が向上し、22日時点で5月の打率は.274まで上昇。今季通算打率は.207と依然として低い数字だが、ここにきて復活の兆しが見えてきた。

   昨季、史上最年少の3冠王に輝き、3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本代表の主軸として活躍した村上。完全復活は近いのか。J-CASTニュースは、ヤクルトOBで19年にコーチを務めた橋上秀樹氏(57)に分析してもらった。

   橋上氏は開幕からの不調要因のひとつにWBCの影響を挙げた。13年大会で戦略コーチを務めた経験からWBCに出場した選手が開幕から調子を維持する難しさを解説した。

「今季ここまでの不調を技術的なものと考えるか、それともWBCの影響と考えるか。私は後者でWBCのメンタル的な影響が大きいと思います。WBCでの張り詰めた緊張感の日々が長く続きましたから。終わってしまうとどうしても緩むというかホッとする部分が出る。ペナントレースが始まってもWBC以上の緊張感やそれ以上高い集中力は、なかなか自分の意思ではどうにもならないと思います」

   13年大会にコーチとして出場した経験から「WBCはペナントレースと別次元の戦いを強いられる」とし、「大会終了直後は息を大きく切らして高い山を登り切った感じで、達成感というよりは心身ともに疲労困憊という感じです」と振り返った。13年大会は準決勝でプエルトリコに敗れ、決勝進出を逃した。

「6月にかけて爆発する可能性は十分にある」

   今季の村上のバッティングは、昨季と比べて技術的に大きな変化は見られないという。一方でバッティング後の表情の相違を指摘した。

「昨シーズンの良い時に比べると、球を捉えた時と凡打した時の表情が明らかに違う。しっくりきていないというか、良いと感じている打席が少ないと思います。その裏返しに凡打した時、捉えきれなかった悔しさがあまり表情に出てこない。集中力がないからこそ悔しさも出てこない。しっかり集中して凡打した場合は悔しさが自ずと出るもの。凡打した時に悔しさが出ないということは結局、投手と対峙する前の気持ちがそれほど高まっていない証かなと思います」

   橋上氏は、5月に入りWBCの精神的疲労は徐々に回復してきたとし、5月30日に開幕するセ・パ交流戦が完全復活に向けての契機になる可能性を示唆した。

「良くも悪くも交流戦はリセットできる。今の村上選手にしてみれば対戦の多いセ・リーグのピッチャーとよりは、質の高いあまり対戦のないピッチャーと対戦したほうがさらに集中力を高めることになる。3冠王を取るような選手が開幕から1ヵ月以上不調で徐々に数字が上がってきている。これから6月にかけて爆発する可能性は十分にあるでしょう。時間が経ってきて少しずつWBCの燃え尽き症候群みたいなものが薄れかかってきて本来のメンタル、シーズン中のメンタルになりつつあると思います」

   チームは21日時点でリーグ5位に低迷しており、主砲の復活が上位浮上のカギを握る。