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「茶碗にご飯粒残す」のはマナー違反?SNSで論争 専門家は「違反も何もないと正直思います」

   お茶碗にご飯粒を残す人とは食事に行きたくない――。そんな投稿がX(旧ツイッター)で大きな話題になり、「めちゃくちゃ分かります」「ご飯がもったいない」など共感する声が多く上がった。

   こうした投稿はSNS上でしばしば注目を集め、ご飯粒を残す人に対して辛辣な言葉で非難するコメントもみられる。なぜ嫌悪感を示す人が多いのか。茶碗にご飯粒を残すことはマナー違反なのか。

   漫画家・荒木飛呂彦さんの漫画「岸部露伴は動かない 富豪村」などでマナー監修を務めたマナーコンサルタントの西出ひろ子さんは、「ご飯粒を残すことを不快に思う人もいれば、不快に思わない人もいる。自分と違う人のことを悪く言ったりしないことが、本来のマナーのあり方だと思う」と取材に見解を示す。

  • (写真はイメージ)
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  • 西出ひろ子さん(本人提供)
  • 西出ひろ子さん(本人提供)

「マナーは人を傷つけるためにあるものではありません」

   2023年9月下旬、茶碗にご飯粒が残す人と食事に行きたくないという主旨の投稿がXで大きな話題になった。茶碗に米粒が残っている写真も添付されており、「こんな残し方は流石にないですね」「この残し方はひどい」と嫌悪感を示す声が上がった。

   中には「友達にもなりたくない」「品性疑う」などの攻撃的な言葉で非難するコメントもある一方、「いちいちマナーとか問わない」「別になんでもよくね」と擁護する意見も一部でみられた。

   こうした投稿は以前からSNS上でしばしば注目を集めている。茶碗にご飯粒が残っている状態で「ごちそうさま」と言う人は嫌いと主張する22年の投稿や、こうした人とは絶対に相容れることはないと述べる17年の投稿は、どちらも広く拡散した。

   茶碗にご飯粒を残すことに対して嫌悪感を示す人が多いのはなぜか。西出ひろ子さんは(1)米農家や食器を洗う人などに対する思いやりがある(2)ご飯粒が残っている茶碗の見た目を「汚い」と感じる人もいる――とJ-CASTニュースの取材に説明する。

   茶碗にご飯粒を残すことはマナー違反なのか。西出さんは「違反も何もないと正直思います。『違反』という強い言葉を使うと、それに傷ついてしまう人もいると思いますし、マナーは人を傷つけるためにあるものではありません」と見解を示す。

「ご飯粒を残すことを不快に思う人もいれば、不快に思わない人もいる。自分と違う人のことを悪く言ったりしないことが、本来のマナーのあり方だと思います」

「マナーは思いやりの気持ちを表すもの」

   茶碗にご飯粒を残さない方が良いのか――。西出さんは「日本では、その方が良いと思う人が多いでしょう」とした上で、「国などよってその考え方は異なるため、答えは一つではない」と断じる。日本ではきれいに食べ終えることで「食事を食べ終わりました」という意味になる文化や考え方がある一方、中国では提供された食事を残すほうが良いとされているという。

「他の国では違う考え方もあるから、一概に『これはダメ』と決めつけるのはもったいないかなと思います。マナーは決めつけられるものではなく、自分で選択していかないといけません」

   マナーは相手の立場に立つことだと強調する西出さんは、米を作る人や皿を洗う人などの立場に立って考えてみれば、茶碗にご飯粒を残さない方が良いと、日本では言えるとの見解を示しつつも、「そのように出来ない理由のある人もいるでしょう」として、それは決まり事と言い切れないとも述べる。

「マナーは決まり事ではなく、相手の立場に立ってお互いがハッピーになるために存在します。英語の『マナー』は、日本語に訳せば礼儀という言葉になります。漢字の『礼』は思いやり、『儀』は型を指します。マナー=礼儀とは思いやりの心を形に表すものですが、型を重視すれば、それは儀礼になってしまうんですね」

   自分が不快感を覚える食べ方をする人とはどう接するべきか。西出さんは自分とは異なる人に疑問を抱いたときにコミュニケーションを取る重要性を訴える。お互いに理由が分かれば、「それならいいか」と受け止めたり、相手が傷つかないようにクッション言葉を使って伝えたりすることができると説明した。

「ご飯粒を残すことに不快感を抱くことは、それはそれでいいんです。でもいろいろな相手がいます。不快に思う人もいれば、不快に思わない人もいる。マナーは思いやりの気持ちを表すものなので、相手に応じて答えが変わるのです」