J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「風邪かな」と侮ると声を失う恐れも 声のかすれが2週間続いたら要注意

【チョイス@病気になったとき】(NHK)2015年10月24日放送
「気になる声のかすれ」

   「ごめん、急に声が出なくてなって」と電話で謝ったり、カラオケでこぶしを効かせる時にのどが詰まったりしたことはないだろうか。「風邪だろう」と軽く考えていると思わぬ重い病気が潜んでいることも。

MCの星田英利「僕は毎朝、声がガラガラですよ。今もそうだけど」
MCの浜島直子「私もいつものど飴のお世話になっています」
リポーターの徳田章アナ「それがなかなか治らないようだと、重い病気の可能性が出てきます」
  • その声のかすれ、ちゃんと診てもらったら
    その声のかすれ、ちゃんと診てもらったら
  • その声のかすれ、ちゃんと診てもらったら

会話しないでいると声帯の筋肉が減っていく

   声を失った経験を持つ高齢女性Sさんが登場する。歌の趣味が高じて自宅にカラオケ店を開いた。6年前、体調不良になり店を休業した。その後で突然声がかすれるようになり、そのうち会話もできなくなり、筆談に頼る有様に。内科医を3軒訪ねたが、いずれも「風邪」。4件目に専門病院を訪れて、「声帯萎縮」と告げられた。Sさんを診断した東京医療センター耳鼻咽喉科の角田晃一医師が解説する。

角田医師「のどの奥にある声帯の筋肉がやせ細る病気です」
浜島「Sさんの場合は、何が原因で筋肉が減ったのですか?」
角田医師「店をやめて、お客さんとの会話がなくなったためです。声帯は筋肉が閉じたり、開いたりして声を出します。野球のトレーニングと同じ。普段から練習していないとプレーはできません。加齢が原因でもなります。70歳以上の人の7割は声がかれて、声帯萎縮になっています」
徳田アナ「声がかれるだけでなく、むせやすくもなりますね」
星田「よく、みそ汁やラーメンを食べる時、ゲホ~とむせますが、アレもそうですか?」
角田医師「はい。むせて食べ物が声帯を通過して肺に入ると、誤嚥(ごえん)性肺炎になる恐れがあります。声帯は、食道から気管支に食べ物が入るのを防ぐ『肺の門番』と呼ばれる重要な器官です」

「ああああ~」が何秒続くかで自分でチェック!

   声のかすれが2週間以上続いたら、声帯萎縮を疑って耳鼻咽喉科を受診するといいそうだ。内視鏡の検査で判明するが、自宅でも簡単にわかる「声帯萎縮の早期発見方法」を角田医師が披露した。思いっきり息を肺に吸い込んだ後、「ああああ~」と声を出して、何秒間続くか測る。男性で15秒未満、女性で12秒未満だと要注意だ。

   さっそく浜島と星田が「ああああ~」と挑戦。浜島44秒、星田26秒。浜島の声帯の筋肉力と肺活量が光った。

星田「声帯萎縮はどうやって治すのですか? 会話を増やすとか?」
角田医師「おっ、いい質問ですね。声帯の筋トレを行うといいですよ」

   ここで角田医師がスタジオで、自宅でできる非常に簡単な「声帯トレーニング」を実演した。方法はこうだ。

   (1)リラックスした姿勢で椅子に座る。

   (2)拝むように、両方の手のひらを胸の前で合わせる。

   (3)両手に瞬間的に力を入れて押し合うと同時に、短くはっきりと「1」と発声する

   (4)同様に「2」「3」......と「10」まで行う。

   運動の目安は1~10までを朝晩2セットずつ、1日に計4セット。ポイントは、声を「1(ッイチ!)」「2(ッニ!)」「3(ッサン!)」と短く出すと同時に手にグッと力を入れること。かといって、力まないこともコツだ。

   角田医師「テニスの選手がボールを打つ時、『ウォッ!』と発声しますね。あれと同じで瞬間的に体に力を入れると、声帯の筋肉がパッと閉じます。声帯萎縮の人がこれを1か月続け、70人中68人の声が元通りになっています」

   Sさんの声も2か月で完全回復。歌の趣味を再開した。

声帯を失っても「第2の声」を取り戻せる

   しかし、声のかすれにはもっと恐ろしい病気が潜んでいる。「喉頭がん」だ。70代の男性Tさんは17年前、「喉頭がん」と診断された。声のかすれを半年間も放置したのでがんが進行、声帯を含めた喉頭部分を全部摘出した。営業マンだったので声が命だったが、自分の命の方を選択したのだ。

   声を失ったTさんだったが、手術後に懸命にリハビリに励み「第2の声」を取り戻し、日常会話ができるようになった。現在、1週間に3回、喉頭摘出手術を受けた人々の発声指導をしている公益社団法人「銀鈴会」の道場に通い、声を失った後輩の患者さんたちにボランティアで発声法を教えている。

   Tさん自身が「第2の声」を出してみせながら、発生方法をこう説明した。

「ゲップの要領で息を吐き戻しながら、食道を震わせるのです。最初に呼吸法をしっかり練習すると、3か月で『こんにちは』が言えるようになります」

   ちょっとガラガラした声だが、はっきりと言葉が聞こえる。実はTさんが手術しようか迷っていた時、ある先輩が見舞いに来てくれた。先輩も喉頭がんで声を失ったが、第2の声を会得しており、「大丈夫。君も喋れるようになる」と励ましてくれたので手術を決断したという。

Tさん「私が今日、生きて喋ることができるのは先輩のおかげです」

   第2の声は「食道発声」といい、新しく声帯として機能する食道を「新声門」と呼ぶそうだ。

星田「いやあ、素晴らしい! 先輩に勇気づけられて、今度は同じ患者さんたちを勇気づけているなんて」
浜島「声をあなどってはいけませんね。声は健康のバロメーター。体が出す病気のSOSのサインなのですね」