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高カロリーのアイスクリームが「健康食」? 秘密は100兆個の腸内細菌にあり

   ある人にとっては脂肪を減らす健康的な食べ物でも、別の人には体重増加をもたらす不健康な食べ物となり、そもそも「万人向け」ダイエットなど存在しないという研究成果が2015年11月、国際医学誌「セル・プレス」に発表された。

   論文を発表したのは、イスラエルのワイツマン科学研究所のチーム。約800人の男女に1週間にわたって様々な食べ物を食べてもらい、体への影響を調べた。調査の参加者は1週間の間、血糖値モニターを装着、5分おきに変動を記録した。食後に体重を測定、BMI(肥満指数)のデータもとった。また、消化吸収を助ける腸内細菌の状態が分析できるよう糞便のサンプルを採取し、詳細に記録した。

  • 寿司よりもカロリーたっぷりのアイスクリームの方が「健康的」な人もいる
    寿司よりもカロリーたっぷりのアイスクリームの方が「健康的」な人もいる
  • 寿司よりもカロリーたっぷりのアイスクリームの方が「健康的」な人もいる

脂肪が少ないトマト食べたら血糖値上昇

   その結果わかったのは、同じ食べ物に対する人々の体の反応に大きなばらつきがあり、まったく正反対の代謝反応を示すケースが少なくなかったことだ。たとえば、脂肪が少なく栄養豊富で健康な食べ物とみなされるトマトを食べた後、血糖値が急上昇する女性がいた。また、何人かの人々は、高カロリーのアイスクリームを食べた後より、低カロリーの日本の寿司(すし)を食べた後の方が血糖値の上昇傾向がみられた。

   研究チームのエラン・セガル博士はこうコメントしている。

「まったく同じ食べ物に、個人と個人の間で決定的に違う反応が見られたことは驚きでした。日常の食生活で、何を食べて、どのように栄養をとりいれるべきかについて、いかに私たちが無知だったか思い知らされました。これまでは、小麦や白米より全粒の穀物や玄米の方が低脂肪で栄養もあり、健康的であると勧めてきましたが、これからは個人の特徴に合わせた栄養分析や健康食の選択が必要だと痛感しました」

善玉と悪玉の腸内細菌が体調や体質に大きな影響

   どうして、同じ食べ物に個人差が出るのだろうか。人間の腸には様々な細菌が100兆個以上も生息し、食べ物を分解して消化吸収作用を行っている。善玉、悪玉の腸内細菌がおり、両者のバランスが体調や体質にまで大きな影響を与えている。個人によって腸内細菌のバランスが違い、その人ごとに特定の腸内細菌が食べ物の栄養吸収や血糖値の変動に影響を与えているらしい。

   セガル博士は、「郵便で糞便のサンプルを送ってもらって腸内細菌を分析し、その人に合わせて最も健康的な食事を提供するシステムを開発すべきかもしれない」と語っている。