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【女の相談室】乳がん・卵巣がんの親族がいたら 20~25%の割合で遺伝性の恐れ

   乳がんや卵巣がんの約10%が遺伝性のがんといわれ、特定の遺伝子変異が関わっていることがわかっている。最近、日本で初めての大規模な患者の遺伝子調査が行なわれ、親族の中で2人以上の発症者がいると、約20~25%という高い割合でその遺伝子変異を持っていることがわかった。

   親族に乳がんや卵巣がんの患者がいる人は、ぜひ専門医に相談しよう。

  • アンジェリーナ・ジョリーさんは予防的に乳房を切除した
    アンジェリーナ・ジョリーさんは予防的に乳房を切除した
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「BRCA1」「BRCA2」という遺伝子の変異が関係

   この調査を行なったのは、遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)の治療に携わる医療関係者の研究団体「日本HBOCコンソーシアム」の研究チーム。2015年1月に調査を発表、ウェブサイト上に公開している。

   それによると、遺伝性乳がん・卵巣がんの発症には、「BRCA1」「BRCA2」という遺伝子の変異が関係しており、この変異があると乳がん・卵巣がんの発症リスクが一般より10倍近く高くなる。具体的には、変異がある人の乳がんの発症リスクは41~90%、卵巣がんの発症リスクは8~62%に達するという。このため、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが乳房を全摘したように、欧米では予防のために積極的な切除手術を行なうことが少なくない。

遺伝子変異が見つかり、乳房や卵巣を切除した人も

   研究チームは、東京都内の4つの病院で2012~2014年の3年間に、親族に乳がんや卵巣がんを発症した女性がおり、自分も発症し遺伝子検査を受けた827人の女性を対象に選び、遺伝子を分析した。827人の間では親族関係はなかった。その結果、88人に「BRCA1」、75人に「BRCA2」、1人に両方の遺伝子変異が見つかった。全体の遺伝子変異の発見率は約20%だった。

   また、827人に血縁者を加えた合計986人の女性の遺伝子を分析すると、250人(約25%)に遺伝子変異が見つかった。発見率が増えたのは、変異があった患者の血縁者が多く検査したためだ。そして、986人のうち62人が卵巣を、28人が乳房を、検査で異常が見つかった段階で予防のために切除したという。

   つまり、親族に2人以上の乳がんや卵巣がんの発症者がいる女性は、5人に1人、または4人に1人の割合で遺伝性がんの体質であることになる。同コンソーシアムは、2016年度は全国30施設以上で、遺伝性乳がんと卵巣がんの本格的な調査を行なう予定だ。親族に乳がんや卵巣がんの患者がいる人は、精度の高い検査を受けるよう呼びかけている。