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出産前に赤ちゃんの性別知りたい? 聞く、聞かないで「子育て観」に差

   赤ちゃんができると、「どっちかなあ~」と生まれてくる子が男の子なのか女の子なのかワクワクする。プレママ(妊婦)たちのウェブサイトは、「あなたは、赤ちゃんの性別を知りたい派? 聞かない派?」の話題でいつもにぎわっている。

   事前に性別を知りたいか、聞かないかで、ママの子育て観に大きな差があるという研究があるのをご存じだろうか。「知りたい派」は完璧主義、「聞かない派」は自由主義だというのだが、思い当たる面はありますか?

  • 「知りたい派」「聞かない派」それぞれ特徴があるようだ
    「知りたい派」「聞かない派」それぞれ特徴があるようだ
  • 「知りたい派」「聞かない派」それぞれ特徴があるようだ

知りたい派は「完璧主義」、聞かない派は「自由主義」

   いくつかのプレママのウェブサイトによると、事前に性別を知ることのメリットは「赤ちゃんグッズの準備がしやすい」「名前を決めやすい」「『次は男の子がほしい』などという周囲のプレッシャーをさけやすい」など。一方、聞かないことのメリットは「ワクワク感があり、出産時の励みになる「妊娠中に『どっちだろうね』と夫婦の会話が盛り上がる」などだ。

   女性向け投稿サイト「発言小町」でも、「お腹の子の性別を聞いた? 聞かなかった?」は盛り上がる話題のため何回も特集しており、2009年11月17日付では次のような声が相次いだ。

「第3子だけ聞きました。上2人は女の子で、主人は長男です。義母は昔の人で、長男に男の子は当たり前。『男の子はいつ? 年取っちゃうわよ』と言われ続け、出産前にも『女の子でも次があるしね』などと言われ、恐る恐る医師に聞いたら、男の子! 思わずガッツポーズをその場でしました!」
「3児のママですが、3人とも聞きました。せっかちな性格なので。出産準備が楽だし、名前が早く決まると、お腹に話しかける時に呼んであげられます。私個人の意見ですが、生まれてから性別を聞いて、ものすごく喜ぶこともありません。無事に生まれてきたことと、やっと会えたことの方にものすごく感動するので」
「聞きませんでした。生まれてくるまでのお楽しみにしたかった。どっちでも健康ならよかったからです。服も白や黄色にして、生まれてから買い足せばいいやと思っていました」

   聞かないつもりだったのに、医師や助産師の不用意なミスでわかってしまった人が非常に多い。

「女医さんがエコーを見ながらひとこと。『あ~、立派なのが付いていますね~』。私がポカンとしていると、『あれ? わかっちゃった? 今ので? ごめん、ごめん』」
「うちは3人娘。全員聞くつもりがなかったのに、長女はカルテに書き込むのが見えてしまいました。三女の時は逆子でした。緊急搬送された別の病院で、先生が生まれる前に、『あはは、女の子やね』と言いました(逆子だったので見えていた)。思わず殺意がわきました(笑)」

   逆に、性別を聞いたことで希望と違い、泣き崩れる妊婦も少なくないという。ともあれ、性別を知るか、聞かないかで多くのドラマがあるが、それとは別に、ママの子育て観の違いを反映しているという研究をまとめたのが、米オハイオ州立大学のグループだ。2014年8月、心理学専門誌「Personality and Individual Differences」に発表した。

女の子を『理想的な女性』に作り上げ、ずっと影響力を

   182人の妊婦を対象に、「生まれてくる子の性別を事前に知る・聞かない」行為と子育てに対する考え方との関連を調べた。一般的な性格・心理テストのほかに、次の項目についても詳細なテストを行なった。

   (1)男女の役割分担に関する平等意識調査:「子育ては男女平等で行なうべき否か」「男性は仕事、女性は家庭という考え方が強いか」「男の子だから活発に、女の子だから可愛らしくという考え方が強いか」など。

   (2)新しい考え、動きへの開放性調査:「従来の習慣を大事にするか、新しい社会の動きに積極的に参加する気持ちが強いか」など。

   (3)子育て完璧主義の意識調査:「子どもに対しどのくらい完璧性を求めるか」「子どもの自主性をどのくらい重んじることができるか」など。

   対象者の約3分の2が出生前に赤ちゃんの性別を知っていた。調査の結果、次のことがわかった。

   (1)平等意識調査:このテストで高得点をとった人(男女平等意識が高い人)は、性別を聞かない割合が、得点が低い人に比べ87%低かった。聞かない派の母親は、知りたい派の母親に比べ、男性も子育てを担うべきだという意識が非常に強く、共働きの割合が高かった。また、学歴も高く、「女の子だからピンクや紫色の可愛い服を着せなくては」という考え方をとらない人が多かった。

   (2)開放性調査:このテストで高得点をとった人(新しい考え方への共感度が高い人)も聞かない派の母親が多かった。聞かない派の母親は妊娠を自然なものと考え、事前に性別を知ることには意味がないと考える人が多かった。

   (3)完璧主義調査:このテストで高得点をとった人(子育ては完璧に行なわなくてはという意識が高い人)は、知りたい派の母親が多かった。知りたい派の母親は、性別を知ることで妊娠中の不安を和らげたいと考える傾向が強かった。

   この結果について同大学のレティシア・コティラ博士は、大学の発表資料の中でこうコメントしている。

「自分の赤ちゃんの性別を知りたがるかどうかは、子育て方に対する母親の考え方を反映しています。性別を知りたがらない母親は、子どもの性別に合った服・おもちゃ・色をそろえる気があまりなく、子どもの自由な意思に任せたいと考える傾向があります。一方、知りたがる母親は、例えば、女の子だと分かると、ピンクや紫色の物をそろえたがります。そのことによって、女の子を『理想的な女性』に作り上げ、その子が大人になるまで、常に女性として何がふさわしいかを考え、子どもに影響力を及ぼそうとするのです」

   つまり、知りたがり派のママは「子育て完璧主義」「男女の役割は異なり、女性は家庭に」「男の子は男らしく、女の子は女らしく」といった考え方が強く、聞かない派は「自由放任の子育て」「共働きで共同作業」「『男の子・女の子らしく』という考えを押し付けない」という考えが強いというわけだ。

「お腹にいる間くらい好き勝手にさせてあげたい」

   いったい、性別を知りたがるママはどのくらいいるのだろうか。ある産婦人科医のウェブサイトによると、「クリニックによって教えないところもあるが、私の経験では、ざっと9割の妊婦さんが性別を知りたがる」とある。

   こうした日本人ママの傾向に疑問を投げかけるママもいる。ノルウェー人の夫と結婚したある日本人ママのサイト「to apekatter ノルウェー人との生活」(注:『to apekatter』はノルウェー語で『2匹のサル』の意味)の2015年1月28日付の「出産前に子どもの性別を聞かない理由」というコーナーにこう書いてあった(要約抜粋)。

「私が赤ちゃんの性別を聞いていないというと、『え~! なんで~!』ともんのすごい驚かれることが多くて、逆にこっちが驚くほど。実は、これを言うと『ややこしい』と思われるから旦那くん以外には言わへんかったけど、『女の子やから○○』とか『男の子やから○○』とか、そういう社会から期待される性的役割から、できるだけわが子を守ってあげたかったから。生まれた後は、『男の子やからやんちゃ』とか『女の子やから育てやすい』とか周りから勝手にラベルを貼られるんやから、お腹におる間くらい好き勝手にさせてあげたかった」

   日本のママの間ではこうした愛情は少数派なのだろうか。