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「食べるな危険」毒キノコの季節到来 「豊作」予感させる不吉なデータ

   秋の訪れを感じさせる涼しい気候になってきた。秋の味覚のひとつが、マツタケに代表されるキノコ類だ。だが同時に、毒キノコの被害も心配しなければならない。

   厚生労働省は、確実に食用だと分かるキノコ以外は採ったり食べたりしないように呼びかけているが、近年は10月になると2ケタの食中毒の発生件数が報告されている。

  • むやみにキノコを採ってはいけない(写真は毒キノコのベニテングタケ)
    むやみにキノコを採ってはいけない(写真は毒キノコのベニテングタケ)
  • むやみにキノコを採ってはいけない(写真は毒キノコのベニテングタケ)

「暑い夏の後に適度な降雨」が発生条件

   各地で毒キノコ「カエンタケ」が目撃されたとの報道が増えてきた。

「猛毒のキノコ『カエンタケ』が、兵庫県内の公園やキャンプ場などで相次いで確認されている」(神戸新聞・2016年9月16日付)
「触るだけでも危険な猛毒キノコのカエンタケが、仙台市太白区長町越路の山林で見つかった」(河北新報・2016年9月22日付)
「福島市小鳥の森で27日、猛毒キノコ『カエンタケ』が見つかった」(福島民友・2016年9月28日付)

   産経新聞電子版も2016年9月31日、奈良県で近年カエンタケが大量発生していると報じている。

   カエンタケはブナやナラの根元に群生し、オレンジや赤の目立つ色で、土から人の指が出ているような形が特徴だ。毒性が強く、触っただけで炎症を起こす。誤って食べると発熱や下痢、腹痛、さらには消化器不全や脳神経障害を起こす。死亡した例もある。

   山歩きやキノコ狩りを楽しむシーズンだが、素人判断で採ったり、そのまま他人にあげたりするのは禁物。しかも2016年の秋は、場所によっては毒キノコに遭遇する機会が増えそうなのだ。

   厚労省は、多くのキノコが発生する条件として「夏の気温が高く、その後の適度な降雨があり、朝晩の気温が低下する」を挙げている。

   カエンタケの目撃報道があった地域の8月の平均気温を、気象庁のデータをもとに調べた。月ごとの平均気温が出ている都市で見てみると、神戸市は29.4度、奈良市は27.8度で、ともに過去5年間では2013年と並び高温トップタイ。また仙台市は25.7度と、2012年以降では2番目に暑い夏だった。

猛暑の2012年10月は過去5年で最多の患者数

   降水量はどうか。9月の3都市のデータを調べると、奈良市が256.5ミリ、神戸市が187.5ミリ、仙台市が314.0ミリで、いずれも同月の平均降水量を上回っていた。いずれの都市も、8~9月にかけて「夏が高温、その後に適度の雨量」という条件を満たしていたことになる。そして10月に入ると、各地で最低気温が10~15度程度まで下がってきた。

   過去5年間の毒キノコによる食中毒は、2012年10月が件数、患者数とも群を抜いており、それぞれ51件、155人となっている。振り返るとこの年の夏は猛暑だったようで、気象庁が2012年9月3日に発表した資料を見ると、8月初めは「気温が平年を大幅に上回り広い範囲で猛暑日となった」「北日本と東日本では下旬の気温がかなり高く、北日本では1961年以降最も高かった」とある。

   ほかの年も、過去5年間では10月に10件以上の毒キノコによる食中毒が報告されている。各地で暑い夏だった2016年は、特に注意したい。