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泣き止まない子にスマホはアリ? 育児放棄か救世主か専門家も二分

「おはよう日本」(NHK)2017年1月25日
「どう考えますか?『スマホ育児』」

   番組が取り上げたのは、幼い子どもを持つ親にとって悩ましいテーマだ。家事で忙しい時に、「ワ~」とぐずって離れない子ども。子どもにスマートフォン(スマホ)の動画を見せるとピタリと泣き止むため活用する家庭が多いが、これが「スマホ育児」や「スマホ放置」と批判を浴びている。

  • スマホは泣く子への最終手段?
    スマホは泣く子への最終手段?
  • スマホは泣く子への最終手段?

小児科医会「育ちをゆがめて視力にも悪い」

   日本小児科医会は2013年にウェブサイトで「スマホに子守りをさせないで!」と警鐘を鳴らすパンフレットを公開した。番組では紹介しなかったが、パンフレットは主にこんな問題点を指摘している(要約抜粋)。

(1)赤ちゃんの「泣き」や「ぐずり」には意味があります。子育てアプリを見せるのではなく、「どうしたの」などと声かけや抱っこを繰り返すことで親子の絆ができます。子育てアプリを見せると赤ちゃんの育ちをゆがめる可能性があります。

(2)幼児期は視力が発達する重要な時期です。スマホを見ていると視野が狭くなり、周囲への注意力が低下します。

(3)絵本のように親子が同じものを見て共感しあう時間を過ごすことが大事です。親は子どもに積極的に話しかけることが言葉の発達では大切。2歳まではテレビやDVD、スマホ、タブレットなどを見せることは控えましょう。

   報道局の飯田暁子記者が街に出て、50~70代の女性たちに「スマホ育児」の感想を聞くと、否定的な声が多かった。

「スマホを子どもに与えるなんて、よくないわよ」
「あまりいい感じしないです」
「うちの孫も使っていますよ。時代の波ですかねえ」

   飯田記者は、子育て支援施設に来ているママたち123人に、どんな場合に子どもにスマホを与えているかアンケート調査を行なった。すると、78%が「子どもにスマホを使わせたことがある」と回答。使用頻度については「ごくたまに」と「週数回」が73%。時間も「数分から30分以内」が大半の89%だった。

「バスや電車でぐずった時に周りの目が気になって、ついつい。本当に最終手段で使っています」
「泣いた理由が分からなくて泣き止まない時に、気分転換にパッと見せると一瞬で泣き止んでくれます」

と、やむを得ずに使わせている人が多かった。

子どもの発達の専門家「上手に使えば大丈夫」

   アンケートに答えたママの中にイラストレーターのうだひろえさんがいた。5歳と2歳の子どもがいて、家の中でのケンカは日時茶飯事だ。

うださん「母親になる前は、スマホ育児に批判的でした。子育てに手抜きをしていると思って見ていました。ところが今は、家に仕事の電話が入ってきた時に泣かれると、スマホは欠かせなくなりました。2人に見せると、ピタリとおとなしくなります。救世主ですね」

   うださんは、病院の待合室で子どもに大泣きされる母親を描いた漫画を見せた。周囲の刺すような視線に母親自身が心の中で大泣きしている。

「もうすぐ呼ばれるのでここで待っていないといけないし。どうしよう(涙涙涙)。泣きたいのはこっちだ! 世間様の目がイタイ!」

   こんな母親たちの悩みに、子どもの発達に詳しい恵泉女学園大学・大日向雅美学長はこうアドバイスする。

大日向学長「スマホを短時間与えるぐらいで発達がゆがむことは全くありません。母親なら子どもをほんの5分10分、1人でおいておきたい時はあります。スマホを渡して静かにさせることは子育ての現実としてあり得ることです。もっとどっしり構えて、上手に使えば大丈夫ですよ」

悩めるママたちを温かく見守ろう

MCの阿部渉アナ「節度を持って使えばいいというわけですが、小児科医会では警鐘を鳴らしているわけですから、迷う親もいるでしょうね」
飯田記者「小児科医会に取材すると、スマホに頼って使いすぎることが問題なのでパンフレットを作ったと言っています。どう使うかは、それぞれの家庭で考えて、頼りきりにならないことが大事です」
MCの和久田麻由子アナ「どのくらいの時間なら使っても大丈夫ですか」
飯田記者「実際に使う上限については、視力の低下を気にする母親がアンケートでは多かったです。日本眼科医会によると、どうしてもIT機器を使わせる場合は、次の3つのポイントを守ることが大事です。(1)画面から50センチ離れる(2)その状態でも画面がよく見える(3)連続使用は50分以内におさめること、です」

   最後に飯田記者はこう強調した。

飯田記者「取材した母親たちの多くがこう語っていました。『電車の中で子どもに泣かれたら、泣き続けられても、スマホを渡して静かにさせても、どちらにしても周囲から白い目で見られます』と。私たちは温かく見守ってあげることが大切です」