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やせた少女は背骨が曲がりやすい 思春期の50人に1人、原因不明

   やせ型の少女は背骨が曲がる「思春期特発性側弯(そくわん)症」という病気にかかりやすいことが慶応義塾大学の渡辺航太専任講師らの研究でわかった。しかも、小さい頃からバレエを習っている子ほどリスクが高いという。

   研究成果は整形外科の専門誌「The Journal of Bone&Joint Surgery」(電子版)の2017年2月15日号に発表された。

  • 背中が曲がっている少女が50人に1人
    背中が曲がっている少女が50人に1人
  • 背中が曲がっている少女が50人に1人

バレエをしている少女がなりやすい

   J-CASTヘルスケアの取材に応じた渡辺専任講師によると、側弯症は背骨がねじれるように曲がる病気だ。神経や筋肉の病気、脊椎の異常などが原因で起こる場合もあるが、大半は原因が特定できない「特発性側弯症」というタイプだ。その中で最も多いのが10歳以降の思春期に発症する「思春期特発性側弯症」で、人口の2%、50人に1人にみられる。

   女子に圧倒的に多く、男子の10倍に達する。軽症の人は、日常生活やスポーツにまったく支障はない。重症の人は(50~100人に1人の割合)手術が必要だ。「問題は中等症の人です。今は手術が必要なくても、将来、高齢者になった時にさらに曲がる心配があります」と渡辺専任講師は言う。そのため、小中学校では学校健診の一環として側弯症の脊椎検診が行なわれている。

   これまでの研究では、原因はわからないものの、次のような要因に関係があるといわれてきた。

(1)遺伝の影響が強く、発症の原因の60%は遺伝に関係しているという報告がある
(2)重い通学カバンを持ったり、肩掛けカバンを使ったりする生活習慣が影響するという指摘があり、通学はリュックにした方がよいといわれてきた。また、布団やベッドの硬さが影響しているのでという説もある。
(3)スポーツとの関連も指摘されている。バレエ、新体操をするとなりやすいという報告がある。過去の研究報告では、プロのバレエダンサー(女性)の24%に側弯症がみられた。そして、側弯症のダンサーの83%に生理不順があり、生理との関連が疑われた。

バスケットとバトミントンの少女はなりにくい

   このように情報が錯そうし、患者や家族が疑心暗鬼になっているのが現実だ。そこで、研究チームは大規模な調査で、「思春期特発性側弯症」とこれら遺伝やスポーツ歴、生活習慣との関連を調べた。調査には、学校健診などで側弯症が疑われた女子中学生2600人の協力を得た。身長や体重、スポーツ歴、家庭環境、母親の妊娠中の状況、出産の状況、出生後の発育など38項目を詳しく聞き取り調査した。そして、エックス線写真で思春期特発性側弯症かどうか検査すると、約半数の女子が側弯症と診断された。

   その結果、次のことが明らかになった。

(1)やせ型の子ほどなりやすい。肥満度を示す体格指数「BMI」が18.5未満の「やせ傾向」の子は、「標準体型」(BMI18.5~24.9)の子に比べ、発症するリスクは1.38倍だった。以前からBMIが低い、やせている子はなりやすいことがいわれてきた。原因としては摂食障害、過剰な運動、骨のカルシウム・ミネラル不足、ホルモンバランスの異常などとの関連が考えられ、改めて裏付けられた形だ。
(2)遺伝性が高い。母親が側弯症ではない子に比べ、母親が側弯症の子は発症するリスクが約1.5倍になる。
(3)スポーツ経験では、バレエとの関連が高い。バレエをしない子に比べ、バレエをする子は1.3倍なりやすい。しかも、早くバレエを始めた子ほどなりやすく、7歳以下から始めた子は1.38倍だった。新体操は、やっている子の数が少なかったため、統計学的な結果が出せなかった。
(4)逆にバスケットボールやバドミントンをしている子はなりにくく、それぞれ、していない子に比べて0.69倍、0.61倍だった。
(5)通学カバンの重さや、肩掛けカバンかリュックかどうか、布団やベッドの硬さなどの生活習慣は発症リスクとは関係がなかった。

「体型」が先か、「スポーツ」が先か、研究はこれから

   今回の研究で、「やせ型の少女」になりやすく、「スポーツの影響」の可能性があることがわかった。「バレエをしている子」のリスクが高いというショッキングな結果が出たが、渡辺専任講師はこう指摘する。

「少女のもともとの体型がスポーツの選択に与える影響を考える必要があります。バレエをしたから側弯症になったのか、側弯症になるほどやせた子だからバレエを続けているのか、わかりません。バスケットやバトミントンの子がなりにくいのも、競技のためではなく、筋肉質の体型だからかもしれません」

そして、これからの研究についてこう語った。

「やせ型の子に多いことと、生活習慣は関係がないことがわかったことは、疑心暗鬼にとらわれている患者と家族にとっていい情報提供になりました。また、遺伝性が高いこともわかりました。関連する遺伝子も突きとめているので、今後は発症のメカニズムを解明して治療に役立てていきたい」