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「夜トイレが近い」人は塩分とりすぎ?
減塩するとグッスリ眠れる理由が判明

   おしっこがしたくなって夜中に何度も起きてしまう夜間頻尿。寝不足につながる症状に悩む人は少なくないだろう。高齢のせいなどと一般に考えられてきたが、大きな原因の1つに塩分のとりすぎがあることが長崎大学病院泌尿器科の松尾朋博助教らの調査で明らかになった。

   研究成果は2017年3月26日に英ロンドンで開かれた欧州泌尿器科学会年次集会で報告された。松尾助教は「塩分の過剰摂取がのどの渇きをまねき、水分のとりすぎにつながっています」と指摘している。夜、トイレが近い人は塩分を控えることから始めたらいかが。

  • 夜トイレの近い人は塩分とりすぎに注意
    夜トイレの近い人は塩分とりすぎに注意
  • 夜トイレの近い人は塩分とりすぎに注意

塩分を減らすとトイレの回数が半減

   2017年4月21日付の長崎大学の発表資料によると、松尾助教らは長崎大学病院などで経過観察中の50~78歳の男女321人を対象に12週間にわたって減塩指導を行ない、夜間頻尿の回数などを追跡調査した。ちなみに厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、1日の塩分摂取量として男性8グラム、女性7グラムが目安とされている。

   J-CASTヘルスケアの取材に応じた松尾助教の話では、減塩指導は次のような方法で行なった。

「減塩に関してパンフレットを用いて4週間おきに栄養指導しました。年配の方では、味覚が低下しやすいので知らないうちに高塩分摂取になりがちな方もいます。そのような方には宅食などのデリバリーサービスに変更したり、男性の患者さんには実際に食事を作ってくれている奥さんやご家族にも極力栄養指導したりしました」

   その結果、減塩指導が功を奏して223人が1日平均11.0グラムから8.0グラムに塩分を減らした。一方、98人が逆に1日平均9.6グラムから11.0グラムに塩分を増やしてしまった。それに伴い、塩分を減らした人は1晩の排尿回数が平均2.3回から1.4回に減少した。しかし、塩分を増やした人は平均2.3回から2.7回に増えた。1日全体の総尿量に占める夜間の割合も、塩分を減らした人は27.7%だが、塩分を増やした人は30.5%だった。塩分が増えると夜トイレに行きたくなるのだ。

   ほかに、尿意切迫感や尿失禁回数、残尿感、下腹部痛、尿道痛など、おしっこに関する「生活の質」も比較すると、塩分を減らした人はかなり改善効果がみられたが、増やした人はまったく改善しなかった。これらのことから、松尾助教は「夜間頻尿の原因は様々ですが、塩分の摂りすぎが独立した重要な原因の1つと考えられます」と指摘する。

香辛料やカフェイン、炭酸飲料、果物も控えよう

   塩分をとりすぎると、なぜ夜トイレに行きたくなるのだろうか。松尾助教はメカニズムをこう説明する。

「基本的には塩分のとりすぎでのどが渇き、水を飲みすぎるからだと考えます。水を飲みすぎると昼夜を問わず多尿・頻尿になるし、また塩分と水分をとりすぎると、むくみ(浮腫)の原因にもなります。特に、足のむくみは夜間多尿の原因になることがわかっています。さらに、塩分のとりすぎはカテコラミンという交感神経系に作用するホルモンに影響を与えます。カテコラミンの分泌が乱れると尿の量が増えるのです」

   ふだんの食生活の中で、夜間頻尿にならないようにするには何に気をつければいいのだろうか。松尾助教はこうアドバイスする。

「最近の報告では夜間頻尿の3割は、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脳梗塞、睡眠時無呼吸症候群など)と関連しているといわれています。また、生活習慣病になると夜間頻尿などの排尿障害のリスクが上昇する報告があります。だから、生活習慣病にならないことが大切です。減塩は生活習慣病の予防に有効です。ほかには、香辛料や利尿作用の強いカフェインを含む飲料水、また、糖分のとりすぎは体の冷えの原因になるので、炭酸飲料や果物のとりすぎにも注意するといいでしょう」