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ロボットの「お願い」なら聞いちゃう 介護現場の未来図が見えてきた

【あさイチ】(NHK)2017年4月27日放送
「こうすれば充実!親の介護」

   全国の高齢者施設に介護用ロボットを導入して、成果を見る実証試験が行われている。番組が取り上げたロボットは、入居しているお年寄りに声を掛けたりする「コミュニケーション型」だ。

   このタイプは、高齢者の体を支えたり持ち上げたりするわけではない。代わりに、本人が自発的に行動するのを促す役割を持つ。

  • ロボットが介護を担う時代が(写真はイメージ)
    ロボットが介護を担う時代が(写真はイメージ)
  • ロボットが介護を担う時代が(写真はイメージ)

日中ベッドで過ごす時間はほとんどなくなった

   実証試験では、19種類の市販のコミュニケーションロボットを使っている。番組はまず、名古屋市にある介護施設を紹介した。入居者に介護、食事、入浴といったサービスを提供している。

   ここでは、各部屋に卓上の小型ロボットが置かれている。入居者の介護プログラムに応じて各人に活動を促す声掛けをする。ロボットはカメラと連動しており、施設スタッフが入居者のプライバシーを侵害しない範囲で部屋の様子を検知できるのが特徴だ。

   ひとりの女性入居者が日中1時間以上ベッドで横になっていると、ロボットが「どうされましたか」「そろそろリビングに出ませんか」と呼びかけた。女性がいそいそと起き上がると、今度は「くつはきちんと履けていますか」。高齢者の場合、くつを履かない、あるいは履き方が中途半端で歩き出すと転倒につながる恐れがある。

   89歳の女性は、ロボットに「ラッキーちゃん」と名付けた。「ちゃんと私を守ってくれるんだと思って」と、かわいがっている。

   効果も上々だ。女性は1年前に転んで腰椎を骨折し、自室のベッドで横になる時間が多かった。そこでロボットに、起床時や3回の食事、施設内でのアクティビティーの時間に合わせて、ベッドから起きて動くように毎日声を掛けさせた。

「お茶の準備ができました。食堂へお越しください」

   ラッキーちゃんのこんな声を聞くと、女性は動き出す。導入から半年後、日中にベッドで過ごす時間はほとんどなくなった。移動も、以前は車椅子に乗って施設の職員に押してもらったが、最近では歩行器を使って自力で動いている。さらに杖を持って歩く努力も始めた。

促すタイミングと適切な促し方が大切

   同じ名古屋市の介護老人保健施設が導入したのは、「ネコ型ロボット」だ。ネコのぬいぐるみに見えるが、体中あちこちにセンサーが取り付けられており、触り方やなでる位置によって鳴き声をあげたり、のどを鳴らしたりと多様な反応を見せる。

   病気で右半身が不自由な87歳の女性。以前は職員がお茶を勧めても、なかなか飲まなかった。そこで「ネコちゃんが『飲んで』と言ってますよ」と話しかけると、女性はお茶を口にするようになった。ほかにも、部屋に閉じこもりがちだった人が出るようになり、入居者の間でネコの話題で会話が弾むようになったという。

   スタジオで見ていたゲストたちも、驚いた様子だ。

俳優の藤本隆宏「介護ロボットというと、力でヘルプしてくれると思ったら、全く違うんですね」
エッセイストの岸本葉子「ロボットの登場で(高齢者が)動けるようになるんですね」

   介護を長年研究している医師の大川弥生氏は、「促す」重要性を力説した。介護とは「力技」で高齢者を手伝うことと思いがちだが、促すことで本当は本人ができていたことをやれるようになり、それを繰り返せばさらに多くのことができるようになる。

   気をつけたいのは、促すタイミングと適切な促し方だ。

   タイミングは、単に話しかけるだけではなく高齢者が今どのような状態にあるかを確認するのが大切。しかし――。

MCの井ノ原快彦「家で介護している人が、毎日いいタイミングで優しく声掛けできるだろうか」

   すると、親を5年間介護した経験のある岸本が「そうなんですよ!」と声を上げた。

岸本「(家族が)自分の都合で(高齢者に)声をかけたり、声音も安定していない...」

   大川医師は、高齢者に対してつい「自分でできるんだからやりなさい」と言いたくなることがあるので、注意しなければならないと指摘した。一方ロボットなら、その心配はない。ただ毎日同じセリフを話しても今度は高齢者が飽きてしまうので、バリエーションを持たせるようプログラミングしているという。

大川医師「ロボットが、人間が、ではなく、ロボットをうまく使って介護の質を上げると考えると良いでしょう」