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毎日30~40分のランニングが寿命を9年延ばす 「長生き遺伝子」の長さから判明

   ランニングが健康にいいことは多くの研究で明らかだが、毎日30~40分のランニングが寿命を約7~9年も延ばすことがわかった。

   米ブリガムヤング大学の研究チームが、細胞の「長生き遺伝子」の長さから分析し、医学誌「Preventive Medicine」(電子版)の2017年5月10日号に発表した。汗を惜しまず努力すれば、報われるということだろうか。

  • 毎日のランニングが寿命を延ばす
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健康長寿のカギを握る「テロメア」

   ブリガムヤング大学の5月10日付プレスリリースによると、この研究をまとめたのは同大学のラリー・タッカー教授(運動科学)だ。タッカー教授は、健康長寿のカギを握るものとして最近注目を浴びている「テロメア」に着目した。

   私たちの体を形づくる37兆個の細胞。生きているかぎり分裂し、入れ代わり続けている。例えば皮膚の細胞は1、2か月で新たな表皮に入れ代わる。この細胞分裂に深く関わっているのが、細胞の染色体の先端にあるテロメアだ。正体は、塩基という化学物質。細胞が分裂するたびに少しずつ数が減り、短くなる。生まれた時は約1万5000個ほどだが、35歳で約半分に減少。6000個を下回ると染色体が不安定になり、2000個になると細胞がこれ以上分裂できなくなる「細胞老化」状態に陥る。テロメアが減ると新たな細胞ができなくなるため、「命の回数券」とか「長生き遺伝子」などと呼ばれる。逆にいうと、テロメアが長い人ほど長生きすることになる。

   タッカー教授は、米政府機関の疾病予防管理センター(CDC)の国民健康栄養調査に参加した5823人のデータを対象にした。この調査の参加者は、30日間にわたり、ランニングやウォーキング、水泳など62の身体活動のデータ(運動時間や運動の強さ・内容など)が記録されているばかりか、テロメアの長さも登録されている。そして、運動の強度とテロメアの長さの関連を調べた。

中途半端な運動では寿命に関係なし

その結果、次のことがわかった。

(1)運動の強度として、男性は毎日40分、女性は毎日30分のランニングを週に5日する人(高強度の運動)は、ほとんど体を動かさない人に比べ、テロメアの長さは約9年の寿命分長い。

(2)同じく男性は毎日40分、女性は毎日30分のランニングを週に5日する人は、適度に体を動かしている人(中程度の運動)に比べ、テロメアの長さは約7年の寿命分長い。

(3)しかし、適度に体を動かしている人(中程度の運動)と、ほとんど体を動かさない人との間では、テロメアの長さに統計上の差がなかった。

   1日30~40分のランニングといえば、約6~8キロの距離になり、かなりの運動量だ。このぐらい激しく運動すると、7~9年も寿命が延びるが、それより軽い運動ではテロメアの長さには影響はないというわけだ。今回の結果について、タッカー教授はプレスリリースの中でこうコメントしている。

「生物学的な老化を遅らせたいと思うのなら、少々の運動では効果がないということです。毎日高いレベルの運動を行なう必要があります。高強度の運動がテロメアの長さに影響を与えるメカニズムは不明ですが、細胞の炎症や酸化ストレスと関係している可能性があります。運動に、炎症と酸化ストレスを抑える効果があると思われます」