長い間、完成の待たれたニューヨークの2球団の新しい球場が、4月にそろってオープンした。ヤンキースが「ニュー・ヤンキースタジアム」。一方、メッツ(メトロポリタン・ベースボール・クラブの略称)の新球場は、銀行のシティグループが命名権を持ち「シティフィールド」と呼ばれている。政府から多額の救済措置をうけたシティバンクの名前が掲げられた新球場をみて「我々の税金で救われた銀行の名前ではなく、納税者球場にすべき!」という声もあり。
同じ町のチームが対戦するヤンキースとメッツの対戦は、お互いの球場に地下鉄で行けるので、ニューヨークでは、サブウェイシリーズと呼ばれます。
さて、この新球場サブウェイマッチの勝敗は?
レストランガイド「ザガット」のニューヨークで最も人気のあるレストラン部門で、長い間1位、2位を独占している「グラマシータバーン」「ユニオンスクエアカフェ」を経営するダニー・マイヤーが出店するのは、メッツのシティフィールド。BBQレストランの「ブルースモーク」、メキシカンの「エル・ヴェラノ・タケリーヤ」、多種類のソースと共に揚げたてのフレンチフライを提供する「ボックスフリッツ」を出店し、VIP ラウンジの「デルタスカイ360クラブ」も担当する。
なかでもニューヨーカーの羨望の的になったのが、超人気のハンバーガー店「シェイクシャック」の出店だ。挽きたてのジューシーな肉と、バーガー用に特別に焼かれたパンとの絶妙のコンビネーションに、特製ソースが加わるバーガーは、行列の途切れることのない超人気店。1号店のあるマディソンスクエアパークには、その行列の長さをチェックできるテレビカメラも設置されているほど。
メッツには、マイヤー以外に、「ノブ」や「トライベッカグリル」、現在、話題沸騰のニューレストラン「コルトン」のオーナーのドリュー・ニーポレントが、レフト側にレストラン「アセラクラブ」を出店。これらのレストランで提供するワインは、オークションを行う「ザッキーズ」がセレクションを担当するなど話題に事欠かない。シティフィールドには、これらのハイエンドレストランだけでなく、独立記念日のホットドッグ大食い大会で有名な「ネイサンズ」のホットドッグ、旧スタジアム時代から親しまれている地元ピッツア店、イタリアンヒロサンドイッチ、そして、アメリカのファーストフードで、なくてはならない地位を確立した寿司のテイクアウトもあり。
ニュー・ヤンキースタジアムも、「ジョニーロケッツ」や「ハードロックカフェ」、マンハッタンの高級精肉店「ロベル」の肉を提供する店の出店で対抗しているが、誰がみても、今回のサブウェイシリーズの勝者はメッツだ。
しかし、ヤンキースが負けていないのは、1試合のチケット価格。メッツを大きく引き離し1席2625ドルなり。って、冗談?と、お思いの方、どうぞ、以下のヤンキースの入場券販売アドレスでご確認下さい。
上階の安い席はファンでぎっしり、フィールドに近い高額の座席はガラガラで、テレビにも、それがしっかり映し出され、痛々しいばかりだったが、とうとう値下げが決定した。と、言っても、1250ドルです。
エアコンの効いた室内で、革張りの椅子に腰かけて、高級ワインを飲みながらドライエイジされたステーキを食べて野球を観るより、炎天下のスタンドで、ホットドッグにビール、そしてクラッカージャックが、野球らしくていいと思うのは、負け惜しみかな?
坂本真理
【プロフィル】
坂本真理(さかもと まり)
明治大学卒業後、在日米空軍横田基地で写真中隊に勤務。ロータリークラブ大学院奨学金で、アメリカ留学後、東京で「AERA」や「Hanako」など雑誌の写真の仕事をし、99年からニューヨークのアッパーウエストサイドに在住。