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【Paris発】クリスマスの余話として ツリーにまつわる「エコ事情」

   カトリックの国フランスで、クリスマスは、一年で最も大きなイベント。12月に入ると、街角の花屋、スーパーマーケット、マルシェなどで、生木のクリスマス・ツリーの販売が始まる。そして、1月初旬にはゴミ収集所に役目を終えたツリーが、山のように積み重なって……。昨今のエコ意識の高まりから、ツリーの使い捨ては環境破壊につながるのでは?の声なのだが――。

IKEA、ツリー回収してエコ貢献活動

街の花屋で売られている生木のツリー
街の花屋で売られている生木のツリー

   フランスでも、プラスチック製ツリーを飾っている家庭も少なくないし、何回でもリユースできるので、「生木よりエコだ」という意見もある。たしかに、「森林伐採+ゴミが増える」という環境へのマイナス効果を考えれば、「生木=自然=エコ」という図式は成り立たないのだが、それでも伝統行事に使うツリーは生木じゃなきゃ、とこだわるフランス人が多いのも確かだ。

   そこで、スェーデン家具メーカーIKEAの生木ツリー回収活動は注目を集めている。

   日本のIKEAも同様の活動を行っているが、フランスIKEAのツリー回収は2003年から続いている。この冬は販売価格20ユーロのツリーを1月の3日~15日の間に、購入した店に持っていくと、19ユーロのIKEA商品券がもらえる。回収されたツリーはコンポスト施設で、堆肥に生まれ変わるのだという。さらに、フランスIKEAはツリーの売上げから1本につき1ユーロを森林保護団体に寄付しており、去年は寄付金が約20万ユーロ。なるほど、1ユーロで生木のクリスマス・ツリーを飾ることができて、しかも自然保護に貢献できるというわけだ。

   しかし、ツリーを車で買いに行き、それをまた車で持って行く。そのツリーは当然コンポスト施設までトラックで運ばれる。CO2排出量を考えれば、自宅の物置に仕舞っておけるプラスチック製のツリーの方がずっとエコじゃないか、という意見も出ている。

仏エコ・サイトでもツリーめぐり話題に

パリの区役所前にもツリーが パリの区役所前にもツリーが

こんな風に石畳の路地にも飾られていたりする こんな風に石畳の路地にも飾られていたりする

   フランスのとあるエコ・サイトには、プラスチック製・ツリー否定派の意見が載っていた。その理由は、生分解されにくいプラスチック素材からできていること。アジアで製造されているものが多く、長距離輸送がCO2の大量排出につながること。また、リユースに関して、フランス家庭での平均利用年数は3年に過ぎないこと、などが挙げられているが、これはちょっと疑問だ。

   我が家のプラスチック製ツリーは今年で3年目だが、人から譲り受けた中古品で、まだ数年は使えそう。そんなに簡単に壊れるものでもないし、倹約志向の強いフランス人が、3年おきに買い換えるだろうか? さらに、プラスチックツリー否定派は、庭に植えなおす、もしくは植木鉢に植えておけば、生木でも何年も使える、と結論していた。でも、“庭”は、庭付きの家に住んでいる人しか実行できないし、“植木鉢”っていうのも、1年中、家の中(もしくはベランダ)にクリスマス・ツリーがある、っていうのもなぁ……。

   結局、エコ効果に関して生木とプラスチックは一長一短、どちらを選ぶかは、その人の好み、こだわりによりけり、というところでしょうか。

江草由香

【プロフィル】
江草由香(えぐさ ゆか)
フリー・編集ライター。96年からパリ在住。ライターとして日本のメディアに寄稿しながら、パリ発日本語フリーペーパー『ビズ』http://www.bisoupfj.comの編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。趣味は映画観賞。