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人肉スープ、奇形人間、死人喰い… 残酷過ぎて封印された「グリム童話」とは

   赤ずきん、ラプンツェル(髪長姫)、カエルの王様――子どもから大人まで、知らない人はいない「グリム童話」だが、実はいくつかの版があり、初版から版を重ねるごとに、残酷あるいは性的な話が削られて、現在のかたちになったことを知る人はそう多くはないかもしれない。

   桑名怜訳『封印されたグリム童話』(宝島社、1470円)ではそんな「削除」されてしまった話の中から、「もっとも残酷でグロテスク」という33話を選び紹介している。

兄が弟を「屠殺」し最終的に一家がみな死亡

『封印されたグリム童話』
『封印されたグリム童話』

   棍棒殴り、目潰し、心臓えぐり、メッタ刺し、人肉スープ、奇形人間、人喰い、死人の肝臓の炙り焼き、死体だらけの部屋、手足切断――普通の人なら想像するだけで目を覆いたくなるような、残虐描写のフルコースが供される。さらに、設定自体も荒唐無稽であったり、不条理な展開を見せたりするので、好事家にはたまらない一冊といえるだろう。

   なかでも強烈なのは、ある子どもが「屠殺ごっこ」で肉屋となり、豚役の少年をナイフで「屠殺」するも、「林檎を選べば無罪、銀貨を選べば死刑」という裁判にかけられ無罪放免となる「子どもたちの屠殺ごっこ」だ。同じテーマで、兄が弟を殺し最終的には一家がみな死んでしまうというバージョンが収録されているのもぞっとする。

全編に漂う理解不能な不気味さ

   このほか、ブラッドソーセージ(血液を材料に混ぜたソーセージ)が、レバーソーセージ(ブタの肝臓で作ったソーセージ)を食事に招待する、まったく「ふうがわりな食事会」や、昼寝中にスカートを切られただけで、自分が誰なのかわからなくなってしまう女性を描いた「ハンスの奥さん」など、ほぼ全編に漂うなんとも理解不能な不気味さが、かえってページを繰る指を止めさせない。

   暑い夏、日本の「怪談」で涼をとるのには「もう飽きた」という人は、ドイツの昔話で「ひんやり」するのはいかが。

   2012年7月上旬、刊行された。