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【書評ウォッチ】原発、憲法、アベノミクスって? 選挙前に争点を知る

   原発をつづける? 憲法をどうするって? アベノミクスで何が良くなるの? 4日公示される参議院選挙の争点をめぐる特集が朝日新聞の読書面トップに。今の安倍政権や自民党の政策に批判的な本が並んだ。「政治の季節」前夜の論点整理にはタイムリーな企画になった。

   ちょうど与野党の幹事長討論会を各紙とも他のページで報じているが、自民党以外は「原発ゼロ」。それでも自民党が勝つのだろうか。ここらで争点の中身を「ああ、こういうことか」と知っておく必要はありそうだ。【2013年6月30日(日)の各紙からI】

安全神話が作られるまで

『新版 原子力の社会史』(吉岡斉著、朝日選書)
『新版 原子力の社会史』(吉岡斉著、朝日選書)

   これから新聞もテレビも選挙一色かと思うとうんざりするが、政権与党が衆議院で圧倒的多数の現状では、今度の参院選が社会の方向を決めるキーになるのは確かだ。安倍政権の「基本政策をどう評価するか」と評者・早稲田大学の齋藤純一さんがあげるのは『新版 原子力の社会史』(吉岡斉著、朝日選書)。

   福島第一原発の事故までの70年間、日本の原子力開発はどう進められてきたのかを科学技術政策の研究者が語る。原発の再稼働と輸出を政府与党が進めようとしている今だからこそ、しっかり踏まえておくべき話だ。

   本は「批判的立場の人々は政府審議会のような政策に影響を及ぼしうる機構から排除され、国民一般が政策形成に影響を及ぼすための制度も不在だった」と、安全神話が作られるまでを解説している。

政治家の本心を見きわめる

   そういえば、昨年衆院選の自民党公約は「3年以内に結論を目指します」だった。あの時点で再稼働となぜ言わなかったのか、票を得るために本心を隠したのか。政治家がはっきりモノを言わない以上、有権者は本その他でしっかり見きわめるしかない。そういう意味でもタイムリーな書評ではある。

   景気刺激と金融緩和のアベノミクスに関連しては、『世界の99%を貧困にする経済』(ジョセフ・E・スティグリッツ著、徳間書店)をあげ、評者は弱者への再配分を説く。アベノミクスで潤うのは誰だろうか。憲法問題では『いま、「憲法改正」をどう考えるか』(樋口陽一著、岩波書店)を薦める。

   どれも政権与党に批判というより危機感さえにじむ。その立場を差し引いても、政権交代からの浮かれムードに流されないために、この際、役に立ちそうな参考文献だ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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