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【パリ発】愛用者50万人、喫煙規制の強まるフランスで注目を集める電子タバコ

   フランスは、主要先進国G7の中で最も喫煙率が高く、25%を超えている。他国と同じように、喫煙規制は強化され、 2008年からは、駅、美術館など公共の場所および、レストランやカフェでも喫煙が禁止されているし、タバコの値段は毎年のように上がり、現在、最低6.3ユーロで、隣国スペインの2倍近い。にもかかわらず、喫煙者の数は増え続け、特に15~19歳の喫煙率が24%、20~25歳で41%と若い層で高い。また、喫煙が原因とされる死亡者数が毎年7万人近いとされる。そんな中で注目を集めているのが電子タバコだ。

禁煙効果が高く、受動喫煙の害がなく、おしゃれなイメージもある優れモノ

「喫煙は殺人」と書かれたたばこパッケージの警告
「喫煙は殺人」と書かれたたばこパッケージの警告 電子タバコメーカーの直営ショップ
電子タバコメーカーの直営ショップ

   電子タバコとは、煙の代わりに蒸気を吸引する、タバコの形をした器具のことで、ミント、フルーツなどの味と香りが付いていて、フランスでは、少量のニコチンが入っているタイプも販売されている。喫煙者には禁煙効果が期待できるし、煙が発生しないので、受動喫煙の心配もない。パリでは、サンジェルマン地区などのハイソな界隈に、電子タバコブランドの直営ショップがあり、その店構えもスタイリッシュ。ウィンドーに並ぶ電子タバコもデザインがおしゃれだ。本体は60ユーロ程度で、その他にバッテリーや充電器が必要。あとは、好みのリキッドを購入する。フランスの某ブランドのフレーバーをみると、タバコ味から、リンゴ、メロン、チョコレート、キャラメル、アプリコットパイ、バニラアイスクリームなんてものまであって、何やらおいしそうだ。健康にいいイメージがあり、遊び心もあるためか、フランスではすでに50万人もの愛用者がいるそうだ。

本物のタバコよりは健康的だが、体への害も懸念され、医薬品化の動きも

カラフルでデザインもおしゃれな、電子タバコ
カラフルでデザインもおしゃれな、電子タバコ

   市民権を得た一方で、電子タバコの体への害を懸念する声も出ている。まずは少量といえども、ニコチンが含まれているものがあること。発がん性物質の疑いがある、プロピレングリコールが使われていること。さらに、電子タバコを試して、そこから本当のタバコに興味を持つ若者が出てくるのではないか、という声も。「喫煙者の健康には有効だが、タバコを吸ったことがない人には有害」と屁理屈めいた意見まで飛び出し、ついには、2013年10月8日、欧州議会で、たばこ規制案が提出された際に、電子タバコを薬局のみで扱える医薬品にする、という修正も盛り込まれた。医薬品としての基準を定めることによって、安全性や効能に疑いがある商品の流通を防ぐことが目的らしい。電子タバコメーカーは戦々恐々と議会の様子を見守ったが、結局、この法案は採択されず。しばらくは、嗜好品扱いで、誰でも気軽に買えることになる。


【プロフィル】
江草由香(えぐさ ゆか)
フリー・編集ライター。96年からパリ在住。ライターとして日本のメディアに寄稿しながら、日仏バイリンガルサイト『ビズ・ジャポン』http://www.bisoujapon.comの編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれる―女32才厄年 フランスに渡る』。趣味は映画観賞。