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食べ物の「プリン体」悪者どころか超重要成分! 上手に付き合うコツを医師がアドバイス

   食生活が豊かになった現代の日本で、最近やたらと悪者扱いされている成分の1つ――それが「プリン体」だ。含有量を抑えた食品をスーパーやコンビニの店頭で多く見かける。ところがプリン体はほとんどの食材に含まれ、アミノ酸や脂肪と並ぶ「3大うまみ成分」の1つといわれる。さらに生命活動の維持に重要な役割を担っている。摂取過多は健康に良くないとしても、現代人の抱く"悪者"イメージは少々偏っているようだ。

   現代の日本人はプリン体とどう接していくべきか。東京・両国の両国東口クリニックの理事長、大山博司医師に話をうかがった。

  • 現代人の食事にプリン体は多く含まれている
    現代人の食事にプリン体は多く含まれている
  • 現代人の食事にプリン体は多く含まれている
  • 両国東口クリニックの大山博司理事長
  • プリン体の8割は体内で作られる
  • 多くの健康診断には「尿酸」の値を示す項目が含まれている
  • 「尿PH」の値もチェックすべし。6.2~6.7が望ましい
  • プリン体を抑えたビール類は大手メーカー各社から発売されている
  • 海そう類はプリン体が少ないわけではないが、痛風リスクはそれほどではなく、尿酸値の改善につながる成分を含む
  • 赤身の魚にプリン体は多く含まれている。エビも要注意
  • 肉や魚に含まれているプラス成分は、サプリメントで補うのも手
  • ヨーグルトには、プリン体に働きかける乳酸菌を使用したものも

プリン体はエネルギーの源。残りカスに抗酸化作用も

   ――スーパーやコンビニのお酒コーナーに行くと、「プリン体ゼロ」という言葉をよく見かけます。人体にとってプリン体は悪いものなのですか。

   「われわれの体は細胞で構成され、その一つひとつに遺伝子が組み込まれています。そしてプリン体は遺伝子の構成成分の一つです。細胞はいろいろな活動をするときエネルギーを使います。例えば筋肉細胞は収縮して動きます。その際にプリン体の一種である『アデノシン三リン酸(ATP)』という物質をエネルギー源として使うのです。動物も植物も全てプリン体を持っています」

   ――プリン体は細胞のエネルギー源となっているだけでなく、プリン体から作られる「尿酸」に抗酸化作用があると聞きました。

   「尿酸はプリン体を使った後の最終産物――いわばゴミです。ところがそのゴミは抗酸化物質でもあります。抗酸化といえばビタミンCが有名ですが、尿酸と違い人の体内で生成することができません。プリン体も尿酸もゼロでいいわけでは決してないのです」

   ――人間の体内で生成されるプリン体はどれくらいなのでしょう。

   「プリン体の約8割は体内で生成されます。一方、食べ物から入るのは2割程度です。血液中の尿酸値を示す『血清尿酸値』(尿酸値)は7.0mg/dL未満が正常値の範囲内です。これを超えると『高尿酸血症』となるので注意した方がいいですね。尿酸がたまり続けると痛風のリスクがあります」

ラーメンや鍋のスープ、レバーは要注意。ビールは...

   ――どんな食べ物にプリン体は多く含まれていますか。

   「種類を問わず肉はプリン体を多く含みます。一番多いのはレバーやキモといった内臓。魚介類だとエビやイカ、カツオにマグロ。意外にも赤身の魚はプリン体を多く含みます」
「尿酸値は筋肉の運動とのかかわりも強く、アスリートは意外に尿酸値が高いです。筋肉をつけるためにタンパク質を補いたい方は、肉や魚ではなくプロテインでとるとよいでしょう」

   ――野菜はどうなのでしょう。

   「ブロッコリーとかアスパラガス、ホウレン草の茎(くき)の部分、豆類のプリン体は比較的多いです。ただし野菜のプリン体は比較的尿酸を上げにくい。食品の成分表を見ると『こんなに高いのか』と気にする方もいるでしょうが、肉や魚介類の数値よりも少し低く見ていいでしょう」

   ――確かに日本人の食事は洋風化しています。一方で近年は小食化も指摘されています。

   「食べすぎているわけではなく、尿酸値を上げやすい食事になっています。肉類の摂取量は増えて野菜のそれは減りました。あとは糖分のとりすぎ。糖分ではぶどう糖は尿酸値を上げませんが、甘味料として最近多く使用される果糖は尿酸値を上げます」

   ――原材料にプリン体が少なくても、調理する過程で吸収しやすいものに変化することはあり得るのでしょうか。

   「例えばとんこつスープのように、濃厚なだしをとったものはプリン体が溶け出しています。ラーメンのスープは一杯あたりプリン体が200mg近く含みます。これは一日あたり摂取量目安の約半分です。しかも液体は吸収も高い。鍋料理も汁にプリン体が流れています」

   ――プリン体といえばビールが挙げられます。やはり含有量は多いのですか。

   「ビールのプリン体は尿酸になりやすく、体内に吸収されやすい。しかもビールを飲む人は何Lも飲んでしまいがちで、トータルでは無視できない量になりがちです。そのような観点でいえば、プリン体を抑えたビール類の方が尿酸値を上げにくいといえます」

   ――同じアルコールのワインはいかがですか。

   「ワインには痛風を抑制する働きのあることが知られています。ポリフェノールが影響しているようで、これはコーヒーにも当てはまります。ポリフェノールが尿酸を下げる効果は、ある程度証明されており、いろんなデータを見ても尿酸値が下がっています。アンセリンやフコイダン、ビタミンCや葉酸といった成分も同様の働きがあります」

   ――お腹いっぱい食べないと満足できない人はどうすればいいのでしょう。

   「穀物類――ご飯やパスタに含まれるプリン体はそんなに多いものではありません。太っている人はカロリー調整が必要ですけれども、普通はそんなに制限しなくてもいい。ところで卵はプリン体をほとんど含みません。卵は1つの細胞で、プリン体は細胞に1つしかないからです。パスタなら魚介類の入ったメニューより、卵を使ったカルボナーラのほうがベターといえます」

腸内でプリン体に作用する乳酸菌が存在する!?

   ――痛風予防の本を読むと、おすすめの食品の一つに牛乳やヨーグルトが挙げられています。その理由を教えてください。

   「牛乳やヨーグルトといった乳製品はプリン体が少なく、乳タンパク質自体に尿酸を少し排せつさせる働きがあるとされています。さらにあるヨーグルト食品に含まれる乳酸菌は、プリン体をある程度除去できるようです」

   ――除去!? いったいどのような仕組みなのか教えてください。

   「要するに口から入ったプリン体が腸で吸収されるとき、体内でPA-3乳酸菌がプリン体を分解する――プリン体を取り込んで自らの栄養にするとイメージすればいいでしょう。体内で生成されるプリン体には影響がありませんが」

   ――そのようなヨーグルトがあるのは朗報です。ただしプリン体と向き合っている人は、生活習慣を正すことが大前提と感じます。レバーや魚介類の摂取量を注意する以外に、尿酸値の高い人はどんな点に気をつけるべきでしょうか。

   「とにかく水分をたくさんとって尿を出すようにしましょう。汗も水分を排せつしますが、プリン体はほんの少ししか含まれていません」
「尿の酸性度を示す『PH値』は、尿酸が一番溶けやすい6.2から6.7がちょうどいい。最近は酸性尿の人が多いです。そこで尿をアルカリ化する食品――野菜やキノコ、海藻、果物、酢、クエン酸を多くとるといいですね。豆類はプリン体がちょっと多いけれども、そんなに気にしなくていい部類なので、適度に食べるとよいでしょう」

   ――食事に細心の注意を払っても尿酸値が下がらない人はどうすればいいのでしょう。

   「食事で改善できる部分は尿酸値でいうと0.5から1ぐらい。尿酸値が8や9もあって既に痛風も起こしているような人は、薬を使ってコントロールした方がいいですね。長期間薬を続けても大きな副作用は少ないですから」