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新型コロナで深刻「一人暮らしの若者の孤独」 専門家が重視する疲労と孤立の解消

   新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務や外出自粛が長期化している。単身で暮らす若者は、誰にも会わず、孤独を抱えるケースも少なくない。J-CASTトレンドが、一人暮らしで在宅勤務がメインの20代男女4人に聞いたところ「夜なかなか眠れない」、「急に寂しくなる」といった悩みがあがった。

   コロナ禍で、孤独やストレスとどう付き合えばよいか。大妻女子大学大学院人間文化研究科臨床心理学専攻主任の古田雅明教授に取材した。

  • コロナで若者が抱える「孤独とストレス」(画像はイメージ)
    コロナで若者が抱える「孤独とストレス」(画像はイメージ)
  • コロナで若者が抱える「孤独とストレス」(画像はイメージ)

からだからの「サイン」を見逃すな

   古田教授は、一人暮らしにとって、コロナ禍の状況は大きなストレスであり孤独を感じやすいと指摘する。ストレスを生む刺激を「ストレッサー」と言うが、そもそもストレッサーは、職場の人間関係や日々の業務など日常生活に必ず潜んでいる。

   一方で、「このストレッサーによる圧力が長引くと疲労が蓄積してきます。これまでコロナ禍に対応できてきた人も、さすがに長期化している今の段階はストレッサーにうまく対処できないことがあっても不思議でありません」と説明する。

「ストレスの問題は、追究していくと『疲労』と『孤立』にいたると言われています」

   その解消には、疲労からの回復と、孤立させない、または孤立から脱却するための支援が必要だ。まず、疲労からの回復には、生活リズムを整え、仕事は休むなど、休養をとることが重要だという。ストレス状態は段階的に進む。最初に肩こりや肌荒れ、冷え性などさまざまな身体症状が現れる。これは「疲労回復に努めましょう」という、からだからの「サイン」なのだ。

   どうしても仕事が気になる人は、業務中に「タイマーをセットして時間が来たら休憩する」、「時間割を作り作業に取り組む」など、時間を区切る工夫をすると良い。

普段使わない感覚を刺激する

   次に、孤立を防ぐために、日常的に家族や友人と、テレビ電話など顔を見合わせて会話できる機会があると良い。

   古田教授は、ひとりで簡単にできるストレス対処法として、日頃あまり使わない感覚を使うと良いとアドバイスした。とくに、パソコンの画面ばかり見ているなら、嗅覚や触覚に働きかけると気分転換になる。

   たとえば、視覚への刺激として絵や花、朝日、夕日を見る。聴覚への刺激として音楽やラジオを聴く、歌う、電話する。好きな匂いを嗅ぐ、外の空気を吸うなど嗅覚を刺激するのもよい。さらには、手触りの良いものを触る、自分でマッサージをする、冷たい「氷」を握るのも推奨される。

手を差し伸べるのは誰にでもできる

   それでもうまく対処できずストレス状態が続くと、こころが悲鳴をあげる。意味もなく涙がこぼれることも。

「ストレス状態に対処できない自分を責め、誰にも理解されない苦しみと孤独感から、さらにつらく感じることもあります。この段階になったら、ためらわず専門家に相談すると良いでしょう」

   ただ古田教授は、コロナ禍で受診やカウンセリングに対する潜在的なニーズはあると感じているが、実際には感染リスクなどから精神科受診や対面での接触は避ける人が多い印象だという。だが、オンラインでの診療やカウンセリングは、まだ浸透はしていない。

「精神科やカウンセリングでは、相手と直接お会いして関係性を築きながら問題解決を目指す部分が大きい。また、情報漏えいのリスクなどもあり、オンライン対応が非常に難しいところです」

   学会などではコロナ禍での対応について議論が進められており、今後に期待がかかる。

   ストレスをひとりでため込み、深刻な状態になる前に、前述のように周囲の人と会話し、頼るのがよい。しかし、自分からなかなか助けを求められない性格の人もいる。

   そこで、ぜひ心にとめてほしい。一人で過ごす人に手を差し伸べるのは、誰にでもできるということを。たとえばメールの返信が深夜になるなど、普段と違う様子があれば、声をかけよう。「大丈夫?」、「電話しようか」の一言で、その人は救われるかもしれない。