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ワクチン接種が東京五輪に間に合わない 「1日100万人」でも効果は4~6週間後

   新型コロナワクチンの接種が少しずつ広がっている。このペースで進むと、東京五輪前にはかなりの接種率になるのではないかという期待感も一部で出始めている。

   ひょっとして東京五輪は滑り込みセーフで、「安心安全」な大会にすることができるのか。

  • 東京五輪では世界中から大勢の人がやって来るが、ワクチンの予防効果は100%ではない
    東京五輪では世界中から大勢の人がやって来るが、ワクチンの予防効果は100%ではない
  • 東京五輪では世界中から大勢の人がやって来るが、ワクチンの予防効果は100%ではない

開幕までに接種率は3割弱の見通し

   野村総研は2021年5月31日、ワクチン接種と、その後の状況についての見通しを公表している。日経新聞がその内容を報じている。イスラエルや英米など先行国の接種状況から、以下のことが分かったという。

・1回目接種率が2割前後に届くまでの間に新規感染者数が減少へと転じ始める。
・1回目接種率が4割前後に達したあたりから、新規感染者数の減少傾向が明確になる。
・2回の接種率が4割前後に近づくにつれ、新規感染者数の抑制・低減傾向が強まる。

   こうしたデータを日本に当てはめると、1日最大100万回の接種ができることを前提とした場合、五輪が開幕する7月23日段階の1回目ワクチン接種率は約29%。4割に達するのは8月20日、「2回接種率 4割」は最短で9月9日だという。

   これは「1日100万回」を前提としているので、回数が増えれば早まる。逆に回数が1日80万回となった場合には、日本が1回目ワクチン接種率 4割に達する日は9月10日までずれ込むという。

   かなりのペースで接種が進んでも、実態として「抑制・低減傾向」が明確になる前に、五輪に突入することになりそうだ。

「100%の発症予防効果」は得られない

   特に注意しなければならないのは、ワクチンは接種してすぐ効果を表すものではないということだ。厚生労働省がウェブサイト「新型コロナワクチン Q&A」でシビアな現実を伝えている。

Q:ワクチン接種後に新型コロナウイルスに感染することはありますか。
A:ワクチン接種後でも新型コロナウイルスに感染する場合はあります。また、ワクチンを接種して免疫がつくまでに1~2週間程度かかり、免疫がついても発症予防効果は100%ではありません。

   さらに以下のように詳しく説明している。

「ファイザー社の新型コロナワクチンは、通常、3週間の間隔で2回接種します。最も高い発症予防効果が得られるのは、2回目を接種してから7日程度経って以降です。体の中である程度の抗体ができるまでに1~2週間程度かかるため、1回目の接種後から2週間程度は、ワクチンを受けていない方と同じくらいの頻度で発症してしまうことが論文等でも報告されています。また、臨床試験においてワクチンを2回接種した場合の有効率は約95%と報告されており、100%の発症予防効果が得られるわけではありません」
「武田/モデルナ社の新型コロナワクチンは、通常、4週間の間隔で2回接種します。臨床試験において、本ワクチンの接種で十分な免疫が確認されたのは、2回目を接種してから14日以降となっています。また、ワクチンを2回接種した場合の有効率は約94%と報告されており、ファイザー社の新型コロナワクチン同様、100%の発症予防効果が得られるわけではありません」

「安心安全」への不安が残る

   この説明を読むと、ファイザー社製のワクチンは効果を発揮するまでに約4週間、モデルナ社製は「4週間+14日」、つまり6週間かかることになる。1回目の接種が終わってから、1か月か1か月半たたないと、効果が表れないというのだ。五輪開幕までに約3割の国民がワクチンを打てたとしても、その効果は8月末から9月上旬にならないと出てこない。単純に1回目の接種率だけを見て「安心安全」の判断はできないとがわかる。

   しかも有効率は94~95%だというから、20人に1人ぐらいには効かない。接種したから安心だというわけではない。かなりの確率でまだコロナに感染するリスク、感染を広げるリスクが残っている。

   米疾病対策センター(CDC)によると、米国でワクチン接種を完了した7500万人強のうち、5814人が新型コロナに感染した。そのうち45%は60歳以上だった。

   NHKは日本の状況を報じている。それによると、医療従事者への先行接種が始まった2月17日から4月15日までにワクチンを接種した約185万人のうち、231人に接種後に新型コロナウイルスへの感染が確認された。このうち205人は1回目の接種後だった。接種者に占める感染者の割合は、0.01%となっている。

   ワクチンの接種から効果が出るまではタイムラグがあり、しかも100%の効果ではない。6月4日には、大阪市消防局の50代の救急隊員が、1回目のワクチン接種は終えていたにもかかわらずコロナに感染、死亡したと報じられている。海外で使われているアストラゼネカ製や中国製ワクチンの効果はさらに落ちるとされている。「接種済み」ということで来日してくる五輪関係者も少なくないことが想定されるだけに「安心安全」への不安が残る状況となっている。