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「火災保険また値上がりか...」 自然災害の頻発でツケが契約者に回ってくる

   火災保険料が2022年もまた値上がりすると報じられている。このところ、ほとんど毎年のように値上がりしている。火災保険料は3年分とか5年分とかまとめて払う人が多い。

   自分が更新期を迎え、新たに払うときにはじめて値上がりに気づいて、びっくりすることになる。

  • 近年は大雨、洪水といった深刻な風水害が増えている
    近年は大雨、洪水といった深刻な風水害が増えている
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「前回から3割ほど値上がり」と通知

   東京郊外に住む70代の男性は、21年5月に大手損保火災保険の更新期を迎えた。3年ごとに納めている。「前回から3割ほど値上がりしています」と、代理店からの通知にあった。新たな契約書を見てびっくりした。

   8万8500円となっていた。ちなみに3年前の契約時は、6万5970円だった。約34%の値上がりだ。内訳は火災保険本体が3万9500円(前回は2万6980円)、地震保険が4万9350円(同3万8990円)。値上がり率は火災保険本体が約46%、地震保険が約27%。

   住んでいるのは築約40年の公団団地。これまではだいたい、「3年間で数万円の保険料」だった。ところが今回は「10万円」が目の前に迫ってきた。このペースだと次の更新時期には12~13万円になりかねない。団地内で火災があったわけでもないのになぜ大幅値上げなのか、と疑問を感じた。

   この男性は、郷里の中古住宅の火災保険も払っている。かつて親が住んでいた家で現在は無人。60平方メートルに満たない築50年以上の老朽家屋だ。5年ごとの更新期になり、最近、大手損保代理店から通知が届いた。今回は5万2300円。前回は4万670円だったので、やはり3割近い値上がり。内訳をみると、地震保険の部分が約6割もの値上げになっていた。

火災保険+地震保険セットの加入者多い

   火災保険には様々な種類があるが、基本的には火災を軸に、風水害などによる損害を補償する保険だ。地震は対象外。したがって別途、地震保険とセットで入っている人が多い。更新時期には「火災保険+地震保険」の案内が届くことになる。

   火災保険料は、直近では今年1月に値上がりした。その前は19年10月。ほとんど毎年のように値上がりしているのは近年、日本のあちこちで大規模な風水害が頻発しているためだ。その結果、損保会社の支払いが増え、巡り巡って末端の保険料アップになっている。

   地震保険は、「地震保険に関する法律」に基づき、政府と損保会社が共同で運営している保険だ。このところ段階的に引き上げられている。今年1月にも値上げした。地震のリスクは全国で異なるので、居住地によって保険料にかなりの差がある。火災保険に付帯する形で加入契約する。火災保険加入者の7割弱が地震保険にも入っているとみられている。

   このところ全国で多発する風水害や地震。その被災地の光景などをテレビで見ている限りは他人事だが、ほどなく火災保険や地震保険の値上げという形で、被災地以外の人にも影響が及ぶことになる。

「不正横行」という指摘も

   火災保険の値上げはまだまだ続くようだ。朝日新聞は5月20日、「火災保険料、来年度にも値上げへ 契約期間は5年に短縮」、読売新聞5月28日、「火災保険料が大幅値上げへ...自然災害増、値上げのスピード追いつかず」と報じている。日経新聞も6月10日、「火災保険料、4年で2割上昇 値上げ3回。家計に重荷」「相次ぐ風水害、保険金支払い膨らむ」という記事を出している。

   火災保険の保険料は、業界団体の損害保険料率算出機構が、目安となる「参考純率」を固め、金融庁の審査後に正式発表される。次の値上げが迫っており、6月中旬に約10%の引き上げが決まると報じられている。これを受けて損保各社は22年度に保険料を引き上げる。

   「参考純率」の値上げ幅について読売は、「11%よりも大きくなる可能性が高い。19年に参考純率が4.9%引き上げられた際には、損保大手4社は保険料を6~8%値上げした経緯がある」と書いている。実際に払う保険料は「11%以上」の値上げになりそうだ。

   保険の契約期間について朝日は、「今は最長10年の火災保険の契約期間を、5年に縮めることも決める見通し。短縮して保険料の値上がり分を反映しやすくする」と書いている。その場合、長期割引の額も減ることが予想されている。いずれにしろ、保険契約者にとって厳しい内容だ。

   温暖化が進んで水害のリスクは今後も続く。保険料のアップは、所得の少ない層にダメージが大きい。

   一方で、火災保険の支払いには、灰色の部分があるともいわれている。月刊誌「FACTA」21年6月号は、「火災保険料の値上げの理由は災害の多発ではない」という記事を掲載している。実際に修理したかどうかを確認せずに、保険金が支払われる制度なので詐欺まがいの請求がまかり通っているというのだ。「肌感覚では、ここ数年で申請された火災保険の6割近くが不正」という損害保険登録鑑定人の声を紹介、「金融庁には警察との連携も視野に入れた対応が求められている」と指摘している。