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藤井聡太二冠タイトル戦の強行日程 羽生善治「七冠」は神業で勝ち続けた

   将棋の藤井聡太二冠が、王位と棋聖の防衛戦真っただ中だ。第92期棋聖戦では2021年6月6日、18日に渡辺明名人と対局し勝利、7月3日に第3局を控える。第62期王位戦は豊島将之竜王と6月29?30日にかけて第1局を戦い、敗れた。次戦は7月13~14日、その翌週も対戦がある。さらに7月25日からは、第6期叡王戦にチャレンジャーとして挑む。

   6月から7月にかけて毎週のようにタイトル戦という、過酷なスケジュールをこなす藤井二冠。だが過去には、それよりずっと多い「七冠」だった棋士がいる。羽生善治九段だ。七冠達成当時の1995年の戦いぶりを、日程から振り返ってみた。

  • 2019年4月「ニコニコ超会議」に出席した藤井聡太七段(当時) 写真:森田直樹/アフロ
    2019年4月「ニコニコ超会議」に出席した藤井聡太七段(当時) 写真:森田直樹/アフロ
  • 2019年4月「ニコニコ超会議」に出席した藤井聡太七段(当時) 写真:森田直樹/アフロ

「毎月」タイトル争い

   1995年度の羽生氏は竜王・名人・王位・王座・棋王・棋聖の6タイトルを防衛しつつ、王将戦に挑戦。最終的に谷川浩司王将(当時)を破り、七冠を達成した。当時、叡王のタイトルは存在しなかったため、タイトル総なめとなった。

   日本将棋連盟が出版している「羽生善治全局集 七冠達成まで」(以下「全局集」、2015年9月30日初版)には、1995年前後の羽生氏の各対局の結果や、自戦記が記されている。

   防衛戦をこなしつつ七冠に挑戦する羽生氏だが、95年は4~5月に名人戦、6~7月に棋聖戦、7~8月に王位戦、9月に王座戦、10~12月に竜王戦、翌96年1~2月に王将戦(挑戦)、2~3月に棋王戦と、毎月タイトル戦に臨んでいた。

   「全局集」を参考に、例として棋聖戦や王位戦が行われた95年7月前後を細かく振り返ると、以下のような日程だった。

6月19日 第66期棋聖戦五番勝負第1局 三浦弘行五段(当時。以下の肩書きも同じ)に勝利
6月28日 第66期棋聖戦五番勝負第2局 三浦弘行五段に勝利
7月4~5日 第36期王位戦七番勝負第1局 郷田真隆五段に敗北
7月8日 第66期棋聖戦五番勝負第3局 三浦弘行五段に勝利
7月13~14日 第36期王位戦七番勝負第2局 郷田真隆五段に敗北
7月22日 第29回早指し選手権本戦 木下浩一五段に勝利
7月24~25日 第36期王位戦七番勝負第3局 郷田真隆五段に勝利
8月8~9日 第36期王位戦七番勝負第4局 郷田真隆五段に勝利
8月21~22日 第36期王位戦七番勝負第5局 郷田真隆五段に勝利
8月28~29日 第36期王位戦七番勝負第6局 郷田真隆五段に勝利

   棋聖戦の間に王位戦をはさみ、さらに王位戦の間には早指し選手権をこなすなど、現在の藤井二冠と同じハードなスケジュールだったことが分かる。

棋王防衛、王将挑戦、全勝

   次に、羽生氏が七冠を決めた第45期王将戦の前後の日程を見てみる。1996年1~2月半ばだ。

1月11~12日 第45期王将戦七番勝負第1局 谷川浩司王将に勝利
1月20日 第29回早指し選手権決勝 南芳一九段に勝利
1月22~23日 第45期王将戦七番勝負第2局 谷川浩司王将に勝利
1月29日 第14回全日本プロトーナメント 丸山忠久六段に勝利
2月1~2日 第45期王将戦七番勝負第3局 谷川浩司王将に勝利
2月5日 第45回NHK杯争奪戦本戦 谷川浩司王将に勝利
2月8日 第16回オールスター勝ち抜き戦 中田宏樹六段に勝利
2月10日 第21期棋王戦五番勝負第1局  高橋道雄九段に勝利
2月13~14日 第45期王将戦七番勝負第4局 谷川浩司王将に勝利

   強行日程、しかもタイトル戦に次ぐタイトル戦を戦い抜くだけでも驚かされるが、この期間すべて白星という事実は、もはや神業だ。なお、第21期棋王戦五番勝負の第2局以降については「全局集」に記述がなかったが、社会人将棋の「リコー将棋部」公式サイトによると第2局(2月23日)・第3局(3月8日)でも高橋九段にそれぞれ勝利し、防衛を果たした。

   王将戦第2局(1月22~23日)と第3局(2月1~2日)の間には、全日本プロトーナメント(1月29日)をはさんでいる。「全局集」42ページで、羽生氏は日程の過酷さを嘆くどころか、この第3局について「第2局との間隔が短かったのでいい状態のまま対局に臨むことができました」と記している。