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「ワクチンが来ない」予約停止相次ぐ 五輪開幕直前に自治体から悲鳴

   全国各地の自治体から「ワクチンが来ない」という悲鳴が上がっている。苦労して新型コロナウイルスワクチンを接種する態勢は整えたのに、肝心のワクチンが国からいつ届くのか、見通しが立たない状態になっている。このままでは住民の希望に沿えないと、いったん接種予約を停止する動きが各地の自治体に広がっている。

  • ワクチン接種予約を申し込めない状況が続く
    ワクチン接種予約を申し込めない状況が続く
  • ワクチン接種予約を申し込めない状況が続く

配分計画が見通せない

   千葉市は2021年7月2日、個別・集団接種のすべての会場の新規予約を一時停止すると発表した。大阪市も同日、1回目接種の新規予約の受け付けを12日から一時的に停止すると発表。愛知県一宮市も4日、新型コロナワクチンの64歳以下の予約が受けられない状況だと明らかにした。こうしたワクチン異変が、同時多発的に全国各地で起きている。

   東京・豊島区では、今月5日から19日までの間に配られるワクチンの量が希望の半分以下になることがわかり、区内の医療機関に「希望に応じた供給が困難な状況になった」という通知を送った。福岡市も、接種を実施している医療機関に、8月の予約を2~3割減らすよう要請した。いずれも、ワクチンの配分計画が見通せないことが理由だ。

   7日の衆院厚生労働委員会では、この問題が取り上げられた。立憲民主党の枝野幸男代表が、「自治体や医療機関などから『体制を整えたのにワクチンがなければ話にならない』と強い不満の声が出ている」と政府に説明を求めた。

   田村憲久厚生労働相は、「速いペースで打ってもらっている分だけ、ミスマッチが起こりやすくなっている」と説明した。

7月は希望の3分の1

   政府は7月23日の東京五輪開幕までになるべく多くの国民にワクチンを接種するという方針を打ち出し、各市町村や医療関係者は、会場整備や要員の確保を急いできた。ところが、ここにきて突然「ハシゴを外された状態」になり、戸惑いや不満の声が出ている。

   ブルームバーグによると、これまで日本政府は米ファイザー製のワクチンを同社の欧州製造拠点から輸入してきた。同社が独自に入手した欧州連合(EU)理事会の資料によると、6月30日時点で日本向けワクチンは計1億3450万回分が輸出された。一方、米モデルナからは9月末までに5000万回分を受け取る契約を交わしているという。

   西日本新聞によると、国からのファイザー製の供給は4~6月は1億回分だったが、7~9月は3割減の7000万回分。河野太郎行政改革担当相は2日の会見で、7月後半の配送量は「自治体の希望量の3分の1」とした。福岡県の服部誠太郎知事は6日、記者会見で「国の制度設計が甘かったのでは」と語っている。

モデルナワクチンの不足は分かっていた

   急にワクチンが不足することになった理由は種々取りざたされている。MBSニュースは原因の一つとして、政府がワクチン使用率を測る指標としているVRS(ワクチン接種記録システム)を挙げている。実際にワクチンを接種したとしても、VRSの入力が遅れた場合はその実績がすぐには反映されず、市町村のワクチン配分が希望より減らされるケースがあるという。

   一方、朝日新聞によると、河野太郎行政改革相は6日の記者会見で、米モデルナ製の新型コロナウイルスのワクチンの6月末までの供給量が、「世界的需要が非常に厳しいため」、当初の計画よりも6割以上少ない1370万回分だったことを明らかにした。また、そうなるということを、大型連休前ぐらいには知っていたことも明らかにしたという。

   モデルナ製のワクチンを用いている職域接種は6月21日に本格的に始まったが、政府はその直後の25日に新規の受け付けを休止している。

   この河野発言について、「女性自身」は7月7日配信の記事で、「えっ?そんなに早くわかったの」「これはひどい しかも供給大幅下振れはGW頃判明 なぜ2か月も黙っていた」というネットに広がる疑問の声を取り上げている。

短期間の増産が難しい

   厚労省のウェブサイトでは、ワクチンの扱いの難しさなどについて、以下のように説明している。

「ワクチンは、ウイルスや細菌などを実際に培養して生産されるため、また、多くの人が接種することから極めて多くの生産本数が必要なため、一般の医薬品に比べて、生産に多くの時間を要します。また、冷蔵で保存しなければならない製品が多く、有効期間が短いことなど、流通にも十分な配慮が必要です」
「国は、ワクチンの生産や流通が円滑に行われるよう、関係者への働きかけや調整を行っています。しかし、不測の事態等により、ワクチンの需給のバランスが不安定になった際には、短期間での増産が難しいというワクチンの特性を踏まえ、医療機関、卸売業者をはじめ関係者の方々や、接種を受ける皆さまに、様々なご協力をお願いすることがあります」

   TBSは7日夕のニュースで、都内のクリニックではワクチンの入荷が激減、1回目の接種は受けたものの2回目が予定通りに受けられない「2回目難民」が発生し始めていると報じている。

   東京都が発表した7日の感染者は920人。前週よりも一気に206人も増えている。