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大野将平に阿部一二三「金メダル」でも畳の上で笑わず 礼に生きる五輪の日本柔道

   大野将平選手(男子73キロ級)がきょう2021年7月26日、リオデジャネイロ五輪に続く連覇を果たした。25日には阿部一二三選手(男子66キロ級)と、阿部詩選手(女子52キロ級)が兄妹揃って同日に金メダル獲得。これは五輪柔道初の快挙となった。

   アスリートは試合中の立ち回りや勝敗だけでなく、その前後の一挙手一投足にも注目が集まる。金メダルが決定した直後に大野選手が見せた、畳上での振る舞いが高く評価されている。

  • 東京オリンピック柔道男子73キロ級決勝での大野将平選手(写真:AFP/アフロ)
    東京オリンピック柔道男子73キロ級決勝での大野将平選手(写真:AFP/アフロ)
  • 東京オリンピック柔道男子73キロ級決勝での大野将平選手(写真:AFP/アフロ)

相手に敬意、深々と頭を下げ

   決勝で、ジョージアのラシャ・シャフダトゥアシビリ選手との延長戦を制した瞬間は険しい表情を崩さず、ゆったりとした足取りで礼の位置に戻った。一瞬、虚空を見上げたが、畳の上ではニコリともしない。勝利判定を受けると大野選手はしっかり一礼し、対戦相手と固く抱擁を交わした。

   畳を降りる前にも数秒間丁寧に立礼し、そこを離れて初めて、笑みをこぼした。ツイッターでは「武士のような男っぷりにほれてしまいそう」「試合後もガッツポーズしない姿勢が大好き」と、称賛が飛び交っている。

   大野選手はリオ五輪でも金メダルに輝いたが、勝利を決めた後もあからさまに喜ぶ姿を見せず、畳上で対戦相手に敬意を払って深々と頭を下げる様が、「理想的な柔道家」として世界で評価された。当時の写真が、中学3年生の道徳の教科書にも掲載されるほどだった。

   前日、金メダルを手にした阿部一二三選手も畳を後にするまで、感情をあらわにしなかった。男子66キロ級決勝でジョージアのバザ・マルクベラシュビリ選手との死闘を制した後、厳しく引き締まった表情で相手から距離を取った。さらにマルクベラシュビリ選手と抱き合って健闘を称え合い、畳から降りる際は地に額をつけて深々と座礼する去り際だった。

   ツイッターには「優勝決まってもガッツポーズしない姿がカッコよかった」「礼節を重んじる、武道ならではの良い面を見ることができた」といった声が寄せられている。

「ガッツポーズ」はルール違反か

   勝利後に派手に喜んではいけないというルールはあるのか。国際柔道連盟(IJF)試合審判規定を見ると、「ガッツポーズ」を禁じたり、喜んではいけないと指示したりする文言は見受けられない。ただ、反則負け(重大な違反)の覧には、

・相手を傷つけたり危害を及ぼしたり、あるいは柔道精神に反するような動作をすること
・特に頸や脊椎・脊髄など、相手を傷つけたり危害を及ぼしたり、あるいは柔道精神に反するような動作をする

とある。

   「柔道精神」の具体的な中身は読み取れないが、柔道の研究・指導機関である講道館の公式サイトは「人間形成を行う柔道では、礼の精神は欠かせない」と強調している。相手があってこそ学ぶこと、試合をすることができるという考えのもと、「相手となる人には、特に礼をつくすべき」だという。

   ただ「練習や試合の場では勝敗にとらわれて、興奮のあまりともすれば粗暴な動作に陥りやすい」。そのような時にこそ、「心を平静にして、礼の精神ととるべき態度をかえりみ、自らを律することで、心身ともに鍛えられ、修行上の効果も大きいといえる」。試合を終えた後も礼を忘れるな、ということだろう