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デルタ株猛威で「お盆の帰省やめて」 コロナ感染増加率、地方が東京上回る

   お盆や帰省で、新型コロナウイルスの感染が一気に広がるのではないか、と警戒感が高まっている。日々発表される新規感染者数は、東京が突出しているが、感染者の増加率では、すでに東京を上回っている県が少なくない。予想以上のスピードで、デルタ株が日本列島全域に広がっていることがはっきりしてきた。

  • 外出自粛が要請されてはいるが
    外出自粛が要請されてはいるが
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来県者に「陰性判定」求める

   全国知事会のウェブサイトには、危機感を強める知事からの切羽詰まった要請文が並んでいる。

「北海道では、8月31日まで、『まん延防止等重点措置』を実施しています。不要不急の帰省や旅行など北海道への移動は、極力控えてください」(北海道)
「県民の皆様には、現在、『岩手警戒宣言』に基づき、県民一丸となって感染対策に取り組んで頂いておりますが、新規患者数を増やさないため、お盆休みや夏季休暇の期間を含む8月末まで、都道府県をまたぐ不要不急の帰省や旅行等は原則中止・延期をお願いします」(岩手県)
「ウイルス(デルタ株等)を県内に持ち込まないために信州への帰省及び県外への訪問については、この期間中はできるだけ控えてください」(長野県)
「県外からの帰省については、控えて頂くよう、ご家族やご親戚の方にお伝えください。 また、県外への帰省と旅行についても、控えてください」(島根県)

   どの知事も「帰省」を控えるよう呼び掛けている。どうしても移動が避けられない場合には、感染防止の対策を求めている。

「出発前にPCR検査を受けるなど、体調管理の徹底をお願いします」(北海道)。
「やむなく来訪する場合は、本県入域前(3日前程度から直前まで)に確実にPCR検査又は抗原検査による陰性判定を受けてください」(沖縄)。

感染者の半数は県外関連

   岐阜県はすでに、ウイルスが県外から侵入してきていることを実感している。同県では7月から8月5日までの感染者のうち、県外からの帰省や県外への旅行、出張が絡む感染者が約半数に上るという。岐阜新聞によると、古田知事は11日、「現在もその傾向の延長線上にある」「感染のスピードが速い」と語った。

   同紙によると、岐阜県は感染事例を具体的にツイッターで発信している。「せきや喉の違和感があったが、感染拡大地域から県内に帰省し、家族にも拡大した」「窓を閉め切ったままドライブをして、同乗者が発症」など。このほか、単身赴任や大人数での旅行、ドライブなどによる感染が拡大したケースも取り上げ、「感染拡大地域からの帰省は自粛を」「体調不良時は行動をストップ」などと呼び掛けている。

   感染爆発中の沖縄は、離島との往来の自粛を求めている。徳島県も「久しぶりに会う親戚や友人との会食は特に注意」「県外の友人等との同窓会は見合わせる」などと細かい。

増加率は鹿児島県276.2%、岐阜県209.7%

   札幌医科大のウェブサイトは、都道府県別の「人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移」を掲載している。8月11日現在のまとめによると、前週とのパーセント比は、東京が114.5%なのに対し、全国平均は126.7%。東京よりも全国の増加率が大きい。

   人口の多い県では神奈川県131.3%、愛知県147.2%、福岡県141.7%などが目立つ。人口が少なく、これまで感染者も少なかった秋田県は213.5%も増えている。このほか、鹿児島県276.2%、愛媛県233.0%、岐阜県209.7%などが200%を突破。佐賀県189.2%、富山県188.9%、宮城県192.2%などが200%に近づいている。

   すでに全国多数の県で、現在の東京以上に急ピッチで感染が広がっていることがわかる。いったん感染が拡大し始めると、すぐには収束できないのは東京の実態からも明らかだ。休日が続いたり、大雨や台風などの天候不順があったりしているにもかかわらず、12日夕段階の全国の感染者は1万8880人を超えて過去最多になった。

「人流の5割削減」を

   今春、インドで一日の感染者が30万人になり、酸素ボンベを奪い合う映像などが全世界に報じられて衝撃を広げた。インドの人口は日本の10倍以上。インドの人口で換算すると、日本はすでに20万人規模の感染者になっている。

   震源地となっている東京都の12日の感染者数は4989人。ネットでは「四苦八苦」と話題になった。「モニタリング会議」で、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「制御不能な状況だ。災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態」と、都の現状を分析し、危機感の共有を訴えた。

   東京の状況で特に心配なのは重症者の増加だ。一週間前に比べて7割増。都医師会は「医療が機能不全に陥っている」と指摘する。感染者の絶対数が増えれば、少し遅れて必然的に重症者も増える。この傾向はほどなく地方にも波及すると見られている。医療体制が東京よりも劣る地方では、もっと大変な事態になりかねない。知事たちの「帰省自粛」の呼びかけは、切羽詰まったものだ。政府コロナ分科会の尾身茂会長も同日、「人流の5割削減」を訴えた。