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烏山自動車学校「動画ツイート」投稿術 運用歴11年のベテランが秘訣明かした

【ツイッターは仕事!企業公式「中の人」集合(17)】

   「雨の日に速度を出したり車間距離を詰めたりすることは『運転が上手い』ことではなく『超危険』である」、「安全運転をするためには協調するこが大事である」。ドライバーが見ると「ドキッ」として、背筋が伸びるこれらの投稿は、烏山自動車学校(栃木県那須烏山市)公式ツイッターアカウントによるものだ。

   投稿には画像か動画がほぼ毎回添えられ、数百以上の「いいね」がつく。バズることも珍しくない。他人に広めたくなる、わかりやすいツイートの仕方を押えているようだ。ツイッター運用歴11年のベテラン担当者を取材した。

  • 烏山自動車学校公式ツイッター担当者
    烏山自動車学校公式ツイッター担当者
  • 烏山自動車学校公式ツイッター担当者
  • ツイッター担当者の娘が、教習を受けに来たときの記念写真

「気付くと見終わっている」がいい

烏山自動車学校】現役の教習指導員や技能検定員が、安全運転の知識を中心に、交通安全にまつわる情報発信をしている。2010年6月に現担当者がアカウントを開設し、現在も運用中。当時ウェブサイトの更新を任されており、キャンペーン情報などをツイッターで告知するために作ったのが始まりだ。

   ツイッター担当者は、烏山自動車学校の副管理者として、学科・実技教習を中心に、検定業務や生徒の送迎、管理者代行業務まで、幅広い仕事をこなす。合間を縫って、日に1~3時間ツイッター運用している。

   当初は一方的な情報発信のみだったが、16年にアイドルグループ「AKB48」の太田奈緒さん(現在はグループを卒業)が同校に通い、免許取得するまでを「運転免許取得プロジェクト」としてユーチューブで公開したことが転機となった。

「ユーチューブやツイッターに寄せられる太田さんやAKBファンからのコメントにお返事するうちに交流の楽しさに気付き、以来フォロワーと積極的にやり取りしています」

   4年ほど前から動画投稿にも力を入れている。模範的な運転例だけでなく、ベテランドライバーがやりがちな「片手ハンドル」、「危険な右折例」といった、避けるべき行動も示している。

   担当者自身が教習所内で運転している様子を収めた車内映像は、誰かが撮影・編集を手伝っているわけではない。「助手席のヘッドレストを持ち上げ、そこにスマートフォンをはめて自力で撮影しています」。初期は同僚のサポートを受け、1分以上の動画を作っていたが、労力に見合う反響がなかった。そこで、長くても15秒程度に収めるなど試行錯誤を重ねた。

「拡散され、視聴回数が伸びた動画はどれも、音声や字幕がなくてもわかりやすく、短時間です。ユーチューブとは求められる動画像が異なると思います。ツイッターでは、見ようとしなくても目に入ってきて、気付くと見終わっている...くらいが良さそうです。そういう投稿をほぼ欠かさず毎日、粘り強く続けること。結果が出るまでには相応の時間と、常に工夫しようとする姿勢が大切です」

   例えば、「交差点の横断歩道で道路ギリギリの場所に立たない方が良い」と注意喚起した19年12月1日の投稿は、再生回数が300万回を超えた。大型車の後部が曲がる時に外側へ大きく振り出す様子を収めた、たった5秒の動画だ。

自動車運転との共通点

   動画ツイートに限らず、投稿は基本的に短くまとめるようにしている。しかし「必要な説明まで削らないよう、調整する難しさ」と常に隣り合わせだ。内容によっては十分な下調べを行ったうえで、教本を片手に投稿を考えているという。

「免許取得前の人、今まさに勉強中の人、ベテランドライバーまで幅広い人の目にツイートが届きます。乗り物にも二輪や四輪、中型や大型とさまざまな種類がありますので、何かに偏ることなく『正しい情報を、正しく伝える』努力が欠かせません。撮影の仕方、言葉尻の表現一つで、悪気がなくても誤解を与えてしまうかもしれませんから」

   ツイッターの難しさを感じた、印象的な出来事があるという。19年8月25日に「教習車をあおらないでください」と投稿したところ、8万以上の「いいね」、教習車を擁護する多数のコメントが寄せられた一方で「教官の教え方の是非を問う厳しいコメントも頂き、反省点もあった」。それでも「初めて知った」「忘れていたので、思い出せて良かった」という反応を得られると、やりがいを感じるそうだ。

   今では、ツイッター担当者に会いたいという理由で通ってくる受講者もいる。「自分から担当者だと名乗ったり、そういう人の教習を優先的に担当したりはしませんが、授業以外の時間にお話させてもらうことはあります」。信頼を裏切らないためにも、全受講者の個人情報の取り扱いには万全を期し、「ツイートで使う画像や動画に顔や名前が写り込まないよう、細心の注意を払っている」そうだ。

   運用歴11年を数えても「ツイッターに慣れることはありません」。21年6月にアカウントに認証バッジ(公式マーク)が付いたことで、ますます投稿内容に気をつけなければと感じているそうだ。

   最後に、「ツイッター運用と、自動車運転に共通する大事な心構え」を教えてくれた。

「初心者・ベテランを問わず、互いが気持ちよく過ごせるよう、常にルールを守って安全運転すること。そして危険予測ですね。何かが起こってから対処するのは大変ですから。アクセルもブレーキも程々に、楽しく運用(転)していきましょう!」

各企業公式ツイッターアカウント担当者(通称:中の人)をJ-CASTトレンド記者が突撃取材。「業務」として日々ツイッター運用に取り組む担当者たちの魅力を紹介する。