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「学参」の名著、復活続く 『現代文解釈の基礎』はベストセラーに

   名著と言われた昔の受験参考書が、復刊されるケースが目立っている。最近では『着眼と考え方 現代文解釈の基礎』が一般書として、筑摩書房の「ちくま学芸文庫」から出た。

   ほかにも古文や漢文、さらには英語の参考書なども復刊されている。

  • 受験生が毎日「にらめっこ」する参考書の数々
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幅広い読者層を対象

   『現代文解釈の基礎』は、小説や評論を題材に、重要な箇所をどのように見分けるかを解説している。半世紀近くにわたって受験生に愛用されてきたという。もはや入手困難になっていたが、10月11日、「新訂版」として復刊された。アマゾンの「高校現代文教科書・参考書」部門では1位になった。刊行前に早々と重版が決まっていたとのこと。


   著者は、京都大学で国語学・国文学を教えた遠藤嘉基(1905~92)氏と、渡辺実(1926~2019)氏。59の文章を実際に読み解きながら解説している。

   ちくま学芸文庫ではこの数年、ほかにも学参名著の復刊が続いている。東京教育大や筑波大で比較文学を教えた小西甚一(1915~2007)氏の『古文研究法』や、東大で中国文学を教えた前野直彬(1920-98)氏の『精講 漢文』などだ。

   復刊本は、特に現代の受験生向けというわけではない。幅広い読者層を対象としている。アマゾンのレビューでは、「本書(『現代文解釈の基礎』)は受験参考書であると思わない方が良いと思う。イメージとしては、古き良き高校の国語の授業を本にしたような感じであろう」「受験参考書(『古文研究法』)がこんなに面白いものであったとは」など、様々な感想が掲載されている。

当時の受験生は後期高齢者に

   受験参考書には二つのタイプがある。一つは、学者として著名な大先生が力を入れて執筆しているケース。もう一つは、「受験のプロ」がノウハウを駆使して作成したケース。最近では予備校の先生などが書いた後者が主流だが、復刊されるのはいずれも前者だ。

   若くして日本学士院賞を受賞し、海外の大学でも教え、のちに文化功労者にもなった小西氏は、学者がきちんとした参考書を書く意義を『古文研究法』の中で書いている。

「これからの日本を背負ってゆく若人たちが、貴重な青春を割いて読む本は、たいへん重要なのである。学者が学習書を著すことは、学位論文を書くのと同等の重みで考えられなくてはいけない。りっぱな学者がどしどし良い学習書を著してくれることは、これからの日本のため、非常に望ましい」

   最近は英語の参考書でも復刊本が出ている。東大で英文学を教えた朱牟田夏雄(1906~87)氏の『英文をいかに読むか』は、2019年に研究社が復刊している。「学参」のレベルを超えた、大学の教養課程並みの高度な英文解釈本として有名だった。


   一橋大で英語を教えた佐々木高政(1914~2008)氏の『和文英訳の修業』も来年2月に金子書房から復刊されるそうだ。初版はなんと1952年だという。

   同書の冒頭には「暗記用例文500」が掲載されている。これを必死になって覚えた受験生たちの多くは、今や前期・後期の高齢者になっている。