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山形県の「麺絆英」冷凍ラーメン自販機 売り切れ続出大ヒットの舞台裏

   山形県三川町の道の駅「庄内みかわ」には、冷凍のつけ麺やラーメンを買える人気の自動販売機がある。「麺絆英」(めんばんひで)という店が運営する自販機で、2022年2月10日に提供を開始したばかり。ところが15日までに、店舗ツイッターやファンの間ではメニューの「売り切れ」報告が相次いでいる大ヒットぶりだ。

   同店は三川町近隣の鶴岡市内で2022年1月10日まで、通常のラーメン店のように店内飲食できる店として営業していた。閉店から1か月後、自販機の稼働をスタート。店舗ツイッターの名前には「自動販売機専門店」を掲げている。

  • 山形県三川町・道の駅「庄内みかわ」に設置された自販機(画像は麺絆英の提供)
    山形県三川町・道の駅「庄内みかわ」に設置された自販機(画像は麺絆英の提供)
  • 山形県三川町・道の駅「庄内みかわ」に設置された自販機(画像は麺絆英の提供)
  • 販売している冷凍つけ麺の実際の調理イメージ(麺絆英の提供)

人気店が「自販機専門店」に

   「麺絆英」は、東京・東池袋大勝軒で修行した庄司英高さんの店。東池袋大勝軒の味を継承したつけ麺や、煮干しラーメンを提供している。地元放送局「さくらんぼテレビ」が実施した「やまがたラーメン道GP」ではプロや県民の投票のもと、2019年に「おすすめ店」として1位を獲得した。

   人気店がなぜ自販機専門店となったのか。22年2月15日、店主の庄司英高さんに取材した。鶴岡市で営業していた当時の「麺絆英」は2021年12月に一度閉店しつつ、翌年1月10日まで数日営業し、限定メニューの提供を行った。

   新型コロナウイルスの影響でテイクアウトを始める飲食店が増えた中、庄司さんも店舗内外やECサイト、自動販売機でラーメンの販売を考えていた。ところが、旧店舗の設備の関係上、製造業としてテイクアウトに向けた営業の許可を行政側から得られなかったと明かす。

   庄司さんにはもともと、新たに店を建てたい思いもあった。そこで店舗増設ではなく、テイクアウトのための設備を備えた店の新設を決断し、旧店舗は閉店するに至った。ところが、新店の工事はコロナ禍などの影響で遅延。本来は21年11月に完成する予定だった。冬は雪の影響もあり、竣工予定は22年3月末までにずれ込んだ。

   閉店後は当然、売り上げゼロ。一方で21年12月、22年1月に旧店舗で営業したため、取引先の業者への支払いが発生した。急場をしのぐ手段として、「気が付くと」自動販売機での販売を始めていたという。これがヒットした。

売り上げは想定の4倍、行列も

   自販機は想像以上の人気で、当初の想定の4倍の売り上げに。稼働直後は在庫の補充から2時間で、「売り切れた」との連絡が客から寄せられることもあったという。仕込みが追いつかず、ピーク時には深夜2時に起床して調理した。反響は「想定以上でびっくりしています。ありがたいことです」と庄司さん。

「『待っていました』と言われることが本当にうれしいです。1か月とはいえ休んでいたので、(店のことを)忘れられていてもおかしくはない。『もう(麺絆英を)食べられなくなったと思っていたので...』などと言っていただけると、うれしいですね」

   ラーメンやつけ麺は、新店の総菜用の厨房スペースで作り、冷凍。それを自販機に補充して売っている。補充は朝7時と13時、18時にそれぞれ行う。

   自販機に補充スケジュールは掲示されているが、入荷直前の時間には関係者から「自販機前に行列ができている」と連絡が入ることもあったという。

   新店は現状3月末に完成予定だ。ただ想定以上の自販機での売れ行き好調に加え、飲食店にとっては悪条件となるコロナ禍の先行きは不透明だ。実際に新店として開店するか、今後も工場のような扱いで冷凍つけ麺・ラーメンの製造に徹するかは検討中と話した。