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3トンの「規格外リンゴ」知恵絞ってドリンクに 外食産業の本気SDGs戦略

   40歳以下の「外食第5世代」と呼ばれる若手飲食店経営者団体「外食5G」が、東京・中野でイベント「外食5G『CSV』AWARD2021」を2022年3月15日に開催した。同団体の所属企業16社がCSV(共通価値の創造)経営に取り組んだ成果を発表し、表彰を行う場だ。

   廃棄寸前の食材を使ったメニュー開発による「フードロス」対策や、CO2削減などに意識的に取り組んだ企業が複数あった。SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)につながる戦略だ。イベントで受賞した二社に、詳しい取り組み内容を取材した。

  • 「外食5G『CSV』AWARD2021」参加企業
    「外食5G『CSV』AWARD2021」参加企業
  • 「外食5G『CSV』AWARD2021」参加企業
  • 「外食5G」代表理事でもある和音人代表取締役の狩野高光氏
  • イタリアンイノベーションクッチーナ青木秀一取締役社長

「熟成魚」で解決目指す乱獲・フードロス問題

   第一回「外食5G『CSV』AWARD2021」に選ばれたのは、「外食5G」代表理事でもある和音人(東京都世田谷区)代表取締役の狩野高光氏。東京・三軒茶屋で飲食店をドミナント展開し、山形で農業も手がけている。

   飲食店で提供している「マタギノビール」は、山形の農家から1トンものヤマブドウを買い取り、試行錯誤の末に開発したクラフトビールだ。21年10月に発売し、これまでに約2000リットル売れたという。

「山形の道の駅で販売していたヤマブドウなんですが、お客さんがなかなか来なくて売れ残ってしまったと相談されたんです。そこでビール会社と協力し、作ったビールです」

   道の駅で売れ残った品は、生産者である農家の元に戻ってきてしまう。廃棄されるかもしれなかった農産物をアップサイクルし、新しい価値を生み出したのだ。

   狩野代表は今後、外食産業が培ってきた技術を使って「熟成魚」の提供に力を入れ、乱獲防止やフードロス問題の解決に貢献していきたいという。例えば、熟成によって「魚のうまみのピーク」を水揚げから1週間後に合わせる。すると、水揚げ後間もなく食べなければならない魚とは違い、賞味期限が延びるため、「獲ったものの、食べられる内に誰の口にも入らず、廃棄される」リスク低減になる。

「日本は四方を海に囲まれているので、『海の豊かさ』を守るのは非常に重要と考えています」(狩野代表)

規格外のリンゴを「再生」

   特別賞である「KIRIN賞」に輝いたのは、都内で直営イタリアン14店舗を経営するイタリアンイノベーションクッチーナ(東京都渋谷区)青木秀一取締役社長だ。

   キリンビールはCSV経営推進企業として「外食5G」とパートナーシップを組み、1年にわたってサポートを行ってきた経緯がある。そこで「外食5G」側から特別賞を選んでほしいと要望したそうだ。

   青木社長は、長野県のりんご生産農家・丸西農園から買い取った規格外品のリンゴを使ってオリジナルのクラフトシードル「rinato(リナート:イタリア語で「再生した」の意味)」を開発した。醸造には、長野県飯綱町の廃校を活用したシードル醸造所「林檎学校醸造所」の力を借りたという。

   季節によって異なるそうだが「10月~1月くらいの間は、月に3トンもの規格外リンゴが出てしまうそうです。料理で使おうとしても追いつかない量だと考え、ドリンクにする企画を立てました」と青木社長。取引先である都内の農業コンサルティング会社・アグリコネクトの紹介がきっかけで、丸西農園と知り合えたと話し、「生産者やパートナー企業との結びつきを見つめ直し、関係を強化することの重要性」を強調した。