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地震で鉄道「運転見合わせ」 数百キロの線路「歩いて安全確認」する

   福島県沖で2022年3月16日夜、最大震度6強の地震があった。東北地方や首都圏の鉄道では、運転見合わせが相次いだ。JR東日本では18日も、東北本線や常磐線といった在来線、東北新幹線の一部区間で運転を見合わせている。

   福島県や宮城県を通る常磐線では、17日にかけ線路の点検が行われていた。この路線のように数百キロメートルに及ぶ長い路線で大規模な地震が生じると、どのように安全確認をするのだろうか。歩いて点検するとも聞くが、その距離は。

  • 長い路線はどうやって保全される (画像はJR常磐線)
    長い路線はどうやって保全される (画像はJR常磐線)
  • 長い路線はどうやって保全される (画像はJR常磐線)

大きい地震は総出で対応

   ライトレール(東京都豊島区)で交通コンサルタントをしている、阿部等氏に取材した。1988年から2005年までJR東日本に勤務し、保線に関わる業務に携わっていた。当時の経験に基づいて話した。

   まず地震に対応するため、速度制限や運転中止を決定する震度の基準が定められている。線路の地震計と外部からの地震情報に基づいて判断するが、基準は各所の構造物の強度によって定まっている。

   運転を休止したら、再開が可能か、修繕工事が必要な箇所がないかを判断するため、安全確認の点検を行う。

   基本的には徒歩、もしくは「レールスター」(軌道自転車)と呼ばれる線路上を走る自転車のような機械で移動して回る。徒歩の方が時間はかかるが、どちらの手段を使うことが多いかは路線の立地条件によるとのことだ。

   数百キロにわたる路線でも「はじからはじまで順番に見て回ることはなく、地域ごとに『保線区』や『電力区』があり、エリアごとに分担して点検する仕組みです」。

   点検の対象や担当する人員は、部門によって細かく分かれる。線路そのものなら「保線区」と呼ばれる部門が、トンネルや橋といった「土木構造物」は土木関連の管理部門が、架線なら電力の部門が、踏切や信号施設であれば信号部門が、見て回る。

   沿線の各所には、各部門のオフィスが点在する。普段は現場の検査のとりまとめや工事の計画を立てているが、3月16日のように大きい地震が起きれば各オフィスから「総出」で対応をする。JR直轄の社員だけでなく、普段工事を依頼している外注会社のスタッフも動員するという。

   点検内容は、各エリアを統括する「支社」に報告。支社は現場からの情報を集約させ、一定の区間で点検が完了したと判断すれば、運転再開を行う。

複数人で「パーティー」組む

   各区のスタッフの数は区間によってまちまちだが、基本的には数十人のスタッフがいる。受け持つ路線の長さも千差万別だが、地方の場合は1つの区で50キロメートル、100キロメートルを受け持つ場合もあるという。

   ただ、「1つの区の中でも1パーティー(組)だけで全部を見るのは、非常に時間がかかる。そこで複数のパーティーも作り、数キロメートルずつを分担して点検します」。パーティーは基本的には2人ずつ、もしくは3~4人で、数十組が編成される場合もある。保線担当者が1人で何十キロメートルもの区間を歩くことはないのだ。

   線路や架線は、先述した通り徒歩やレールスターを使い、連続的に見回る。一方、土砂崩れしやすい場所や橋など、あらかじめ決まっている重点点検箇所もあり、こちらの場合は土木を担当する部門などが自動車で要所間を移動しつつ点検するという。

   こうした点検内容は、基本的にはJR東日本での経験に基づいた話だが、「ほかの鉄道会社でも大きな違いはないと思います」(阿部氏)。