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「ニンテンドースイッチ」世界販売数500万台減 1年で人気急落なのか

   ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の2022年3月期の世界販売台数が、前期比で約500万台減少した。任天堂が22年5月10日の決算説明会で発表した。

   新型コロナウイルス禍で外出を控える人が増えた前期、「スイッチ」は品薄が続き、売り上げの伸長と在庫不足が起きた。今期、販売台数が伸び悩んだ原因とは。

  • 海外でも国内でも売上が減少したスイッチだが(写真はイメージ)
    海外でも国内でも売上が減少したスイッチだが(写真はイメージ)
  • 海外でも国内でも売上が減少したスイッチだが(写真はイメージ)

国内も660万台から519万台に

   任天堂の決算発表によると、2021年3月期の販売台数は2883万台。かたや、22年3月期は2306万台と、前期比で約20%減だ。「半導体部品などの供給不足による影響 などにより、前期比で減少」と説明している。国内販売台数は、同社公式サイトによると21年3月期の660万台から、今期は519万台に落ちた。

   2022年5月現在、国内での販売状況は安定傾向だ。ECサイト「アマゾン」の売上推移がわかる非公式ツール「Keepa」によると、通常版のスイッチは20年2月以降、アマゾン公式からは欠品が生じていた。しかし21年7月には在庫が「復活」し、現在も通常価格で買える。

   東洋証券のシニアアナリスト、安田秀樹氏に販売台数減について取材で聞いた。「人気が落ちつつあるというよりは、家庭にかなり浸透しているために販売が鈍化するタイミングにきている」と分析する。

   安田氏によれば、過去のゲームハードの例を見るに、日本市場では人口のおよそ「15%」の台数が普及の限界だと考えられるという。任天堂公式サイトで発表の数字から計算すると、国内で少なくとも2463万台のスイッチが2022年3月期までに販売された。日本の人口を1.25億人とおくと、ごく単純な計算で約18%の普及率だ。

   また、国内で2000万台以上を売り上げたゲーム機は珍しいと話す。数少ない例としてソニーの「プレイステーション2」と、任天堂の携帯機「ニンテンドーDS」「ニンテンドー3DS」を挙げた。加えて、任天堂が発表しているデータによると、携帯機「ゲームボーイ」も3247万台で2000万台を超えている。

   こうした背景から、2000万台以上という数字は「(ハードとして)かなりの水準」と安田氏。日本での普及限界を考えると「スイッチ」は、「少し(売上の)勢いが落ちてくるのは当然のタイミングに入っている」というわけだ。

「有機ELモデル」が支える

   「スイッチ」の売上台数は減ってきたとはいえ、過去のハードに比べて「減少カーブ」は緩やかだと安田氏は指摘する。

   スイッチはテレビに接続してプレーする、外に持ち出して遊べる、といった多様な楽しみ方ができ、そもそもハードとして魅力があるという。さらに2021年10月、ディスプレーを一新した「有機ELモデル」を発売。画面は大きくなり、ディスプレーを囲む額縁(ベゼル)部分が狭くなっているが、これがユーザーを引きつける要素に。スイッチが普及の「天井」に差しかかる中、新モデルの発売も販売台数の減少をある程度食い止める効果があったのではと推測した。

   安田氏は決算説明会で、任天堂の古川俊太郎社長に質問した。それによると、廉価版モデル「ニンテンドースイッチライト」を発売した頃には、スイッチ所有者による本体の買い替えや追加購入がシリーズ全体の販売台数の約30%を占めていたという。一方、有機ELモデルが出てきた後は、買い替え・追加購入による売り上げが約40%に上がったとの話だ。

   今後新規購入者の獲得は、段階的に難しくなると予想される。だが、性能を向上させた新モデルを発売すれば、販売数を維持していけるのではないかと安田氏は考える。