J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

重信房子・元最高幹部は76歳で出所 日本で高齢受刑者が増え続けている

   刑務所の高齢化が進んでいる。受刑者に占める高齢者の割合が年々増加しているという。その1人ともいえる元日本赤軍最高幹部の重信房子・元日本赤軍最高幹部が2022年5月28日、懲役20年の刑期満了で出所した。76歳。後期高齢者の年齢だ。

  • 入所中に病気になる服役者も少なくない(写真はイメージ)
    入所中に病気になる服役者も少なくない(写真はイメージ)
  • 入所中に病気になる服役者も少なくない(写真はイメージ)

高齢受刑者の罪名トップは窃盗

   刑務所の高齢化は近年、大きな社会問題となり、しばしば報道されている。

「刑務所、まるで介護施設に」(NHK、19年8月21日)
「受刑者高齢化、『リハビリ』も刑務作業...『塀の中』は福祉施設」(読売新聞、21年6月18日)
「受刑者が受刑者を"老老介護"...刑務所が直面する『高齢化問題』」(文春オンライン、21年5月8日)

   最近も、池袋暴走事故の90歳の被告が収監されたことが話題になった。犯罪白書によると、2019年の65歳以上の高齢入所受刑者は、2252人(前年比1.4%増)。2000年と比べて約2.5倍に増加している。特に、70歳以上の入所受刑者人員の増加が目立つ。00年と比べて約4.8倍。高齢者率も上昇傾向にあり、19年は12.9%。00年と比べると9.6ポイント上昇している。

   社会の高齢化で、全人口に占める高齢者の割合が増えている。一方で、全体の服役者数が減少傾向になっているので、高齢者の増加ぶりが目立つ結果となっている。高齢受刑者の罪名のトップは窃盗。いわゆる万引きが多いとされている。男性では覚醒剤取締法違反、道路交通法違反が続く。

日本最大の「医療刑務所」

   入所中に病気になる服役者も少なくない。症状が重いと、東日本成人矯正医療センターに移される。報道によると、重信元最高幹部は同センターで服役していたという。

   『ルポ 老人受刑者』(斎藤充功著、中央公論新社、2020年刊)によると、同センターは廃庁になった八王子医療刑務所を整備・拡充してつくられた施設だ。18年1月にできた。要するに日本最大の医療刑務所だ。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ルポ 老人受刑者 (単行本) [ 斎藤 充功 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2022/5/30時点)


   医師が24人。12の科目で総合病院並みの診療をしている。手術も行う。一度に30人が人工透析できる設備もある。収容定員は580人。取材時は心身の疾患受刑者約250人が収容されていた。すでに同書には、重信元最高幹部もここで治療を受けていると書かれていた。最高齢の収容者は86歳。一般の刑務所のように、外界と隔てるコンクリートの壁はない。

刑務官の離職が増える

   高齢の受刑者が増えることは、刑務現場にとって大きな負担だ。NHKは、「ここは、日本の縮図なんです」という刑務所職員の声を紹介している。倉庫には大人用のオムツが並び、食事では具材が細かく刻む必要もある。入浴や排せつに手助けが必要な受刑者もいる。

   認知症の疑いがある高齢の受刑者が、自分の持ち物を盗まれたと勘違いして、他の受刑者とケンカになったこともあったという。

   持病がある受刑者は、薬を常用している。担当の職員が、受刑者が服用する薬の仕分けを、確認する作業もある。

   刑務所職員は、以前よりもはるかに多彩な仕事をこなさねばならず、多忙だ。神経も使う。

   刑務官は、全国におよそ1万7500人いるが、NHKによると、3年未満で職を離れる刑務官が増えている。18年の場合、3年未満に離職する刑務官の割合は、22.1%。10年前は18.5%だった。女性刑務官はさらに深刻で、18年には37%が辞めているという。