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コロナ「持続化給付金」また不正 国税職員ら2億円を「泥棒」

   新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金をだまし取ったとして、新たなグループが逮捕されている。今回は、国税局の職員や元職員が含まれている。新型コロナの影響で収入が減った事業者に、国が最大200万円を給付する「持続化給付金」。なぜ制度の悪用が続くのか。

  • 国税の職員が詐欺容疑で逮捕とは
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暗号資産に投資

   読売新聞は2022年6月2日、「国税職員ら20代男女7人、給付金詐欺...受給2億円の大半を暗号資産に投資か」という記事を報じた。

   警視庁が東京国税局職員(24)ら20代の男女7人を詐欺容疑で逮捕。7人は投資仲間で、名義人に不正受給させた約2億円の大半を暗号資産に投資していたという。逮捕者の中には、東京国税局元職員(24)も含まれているという。

   7人のうち複数のメンバーがオンライン上の投資サロンに所属。「給付金をビットコインに投資して2倍にする」などと言って知人らを勧誘し、約200件の不正受給を行わせたという。国税職員と元国税職員は申請に必要な確定申告書の作成を担当し、1件あたり5万円の報酬を得ていたとみられるという。本来は不正をチェックする立場の公務員が、不正に加担していたことになる。

セミナーで募集

   持続化給付金を巡っては、家族ぐるみで計約9億6000万円もの不正受給にかかわったとして、三重県の一家が摘発されたばかり。

   TBSによると、容疑者らは、まず、セミナーを開くなどして、ウソの給付申請をするための「申請者」を募集。それぞれの「申請者」がコロナで収入が減ったというウソの申請を中小企業庁に提出して、持続化給付金を受給。そのうえで、1件あたり十数万円から数十万円を報酬として受けとっていたとみられる。

   このほか、経済産業省の元キャリア官僚2人がウソの申請を行い、持続化給付金400万円をだましとったなどの2つの罪で有罪判決をうけている。

   さらに朝日新聞によると、昨年3月、衆院議員事務所元スタッフの男ら4人が給付金100万円を詐取した疑いで愛知県警に逮捕されている。セミナーを開いて「私ども自民党としましては、みなさんが持っていない情報を持っている」などと話し、不正受給を持ちかけていたとされる。

   大阪国税局OBで元税理士の男も、身分を個人事業主と偽るなどして同じく4500万円を詐取したとして今年1月に有罪判決を受けている。

制度的なぜい弱性

   日本テレビは、なぜ、持続化給付金で不正受給が相次いでいるのか、その理由を専門家に聞いている。

   税金制度に詳しい中央大学法科大学院の酒井克彦教授は「制度的な構造が持つ、ある種のぜい弱性はあった。コロナというパンデミック下で起きた給付金。『急いで困っている人に届けないといけない』という、行政の社会的な要請があった」と背景を指摘。

   そのため申請手続きも簡素化されていたという。

   「申請者本人に直接電話などを行い、仕事や収入などの聞き取りをしていれば、不正を防げた可能性が高くなったのでは」と話している。

   朝日新聞によると、要件を満たさなかったとして給付金の受給者が自主返還を申し出た件数は5月26日時点で約2万2000件。このうち約1万5000件についてすでに返還があり、その総額は約166億円に上っている。