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音声プラットフォームとラジオの違いは Voicy代表とDJ Nobby大いに語る

   スマートフォンを使っての音声による情報の受発信が、盛んになってきた。コロナ禍で注目を集めた米国の「Clubhouse」、ツイッターの「スペース」など、ツールも数多い。中でも、日本発の音声プラットフォーム「Voicy」は、「選ばれたパーソナリティーによる、音声配信」が特徴だ。

   経済キャスターとしてVoicyチャンネル「きのうの経済を毎朝5分で!」のパーソナリティーを務め、ラジオでも活動するDJ Nobby氏と、Voicy代表の緒方憲太郎氏が対談。「Voicyとラジオの違い」から、音声配信の価値と魅力まで、たっぷり語った内容を2回に分けてお伝えしよう。

  • (左から)Voicy・緒方憲太郎代表、DJ Nobby氏
    (左から)Voicy・緒方憲太郎代表、DJ Nobby氏
  • (左から)Voicy・緒方憲太郎代表、DJ Nobby氏

DJ NobbyがVoicyに「ジェラシー」

編集部:ずばり、Voicyとラジオは何が異なるのでしょう。

DJ Nobby:Voicyでも、チャンネル名に「~ラジオ」と付けている人が多いですよね。
緒方:ラジオはプロデューサーやディレクター、放送作家らが作ったものを演者が表現している世界ですね。Voicyはそうじゃなく、「声のブログ」に近いです。パーソナリティーとリスナーの間には誰もおらず、「一対一」でぶつかり合う。
DJ Nobby:ラジオでもその傾向が強まっていて、ワンマンで DJ をする人が増えて徐々に主流になってきています。コストもかからないので、僕は昔から、そうしてきました。
緒方:ラジオはパーソナリティーが番組を代表していて、その「人となり」自体が好まれる。リスナーは、パーソナリティーと飲みに行っているような時間が欲しいという感覚でしょうね。そこはVoicyもラジオも、あまり変わらないかもしれません。
DJ Nobby:最近、僕の周りで「Voicyパーソナリティーになりたい」人がすごく増えていて、よく相談されるんですよ。正直、ちょっとジェラシー(笑) 。ラジオマンの立場としては、いつの間にか、カッコよさで『ラジオがVoicyに追い越されるんじゃないか』と感じています」

編集部:Voicyパーソナリティーになりたい人が増えている理由、どう見ていますか。

DJ Nobby:選考の厳しさを前面に出しているからでしょうか(編注:Voicy公式サイトには、応募通過率5%前後の審査をクリアした人がパーソナリティーになれるとある)。ラジオのパーソナリティーになるのも、めちゃくちゃ難しいんですけど。
緒方:Voicyはフォロワーや再生数などが目に見えてわかるので、「その人自体が求められている感」がありますね。
それからパーソナリティーが、Voicyだけじゃなく多方面で活躍しているわかりやすさも理由の一つかと考えます。

経済ニュースより、「あなた」の話を聞きたい

編集部:一定の知名度があるパーソナリティーたちは、Voicy のどこに魅力を感じていると思いますか。

緒方:多くの人に知ってもらう場合は、ツイッターやインスタグラムの方が圧倒的に強いです。そこで認知されたうえで、さらに深いファン層を集められるところでしょうか。
Voicyでは、1つの放送の中に「チャプター」(編注:話題ごとに区切られた章)をいくつも作れます。1つのチャプターは最長10分で、リスナーはある程度の時間、習慣的にコンテンツに触れてくれています。 音声はニュアンスまで伝えられて、もし間違ったことを言ってしまっても謝罪が受け入れられやすい。そうした関係をリスナーと作れる点に、パーソナリティーたちは価値を感じていると思います。最後まで話を聞いてくれて、受け止めてくれる人に向けてしゃべれる「心理的安全性」ですね。
DJ Nobby:そこが本当にすごいなと。僕みたいな弱小アカウントでも、ツイッターだと変なコメントが来るときがあります。でも、Voicyはほぼ来ないです。
これは緒方さんも言っていたんですけど、「嫌いな人の声は10分も聞けない」。つまり、ちゃんとファンが集まってくる。音声の「安全性」と合わせて、大きいと思いますね。
緒方: DJ Nobbyさんは「経済ニュースを伝える」から、「その人の一言が欲しい」になってきたところがすごいですよね。
DJ Nobby:そのプロセスは面白いですよね。

編集部:つまり、どういうことでしょう。

緒方:Nobbyさんの場合、リスナーは「昨日の経済ニュースを5分でインプットできる」という効果性を重視して、放送を聞き始めるはずです。それが徐々に、パーソナリティー独自の知識や人間性の方にニーズがシフトし、「有料でも聴きたい」人が出てくるわけです。
DJ Nobby:最初、緒方さんに「経済の番組をやりたい」と相談したら「効果が分かるタイトルにしたら?」と言われたので、チャンネル名を「きのうの経済を毎朝5分で!」にしました。ありがたいことに当初から、「すごくわかりやすい経済ニュースだ」と盛り上がったのですが、先日出版した著書「実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!」のイベントを行った際、リスナーさんから口々に「土曜日の夜のゆるっと話している配信が一番好き」って言われたんですよ。
初著書「実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!」を2022年9月16日に出版
初著書「実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!」を2022年9月16日に出版
緒方:番組がきっかけでインフルエンサーになっていった、Voicy初の例じゃないかと思います。優秀なプラットフォームとパーソナリティーの相乗効果ですね(笑)。

編集部:相乗効果と言えば、他のプラットフォームやメディアとVoicyの相性はどうでしょう。

DJ Nobby:僕のチャンネルは、ラジオとのタイアップで収益をあげている部分があります。そういった意味で、メディアを使わせてもらえるのはありがたいです。

   緒方代表は、特に活字ニュースメディアについて「時代が早すぎるので、記事になった頃には遅く、もはや後々の『答え合わせ』」と語る。例えばツイッターで大いに話題となった商品を、メディアが翌日に報じても、読者は「昨日タイムラインに流れてきた話が、今頃ニュースになったのか」と感じるのではないか。

   次回は、目でなく耳で情報を得るニーズの高まりを踏まえ、音声配信の未来を2人が語り合う。