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「天然コケッコー」
映画初主演「夏帆」多感な中学生を好演

   公開されて3週間も経つが、評判が良いようで、筆者が見たシネスイッチ銀座は平日午後でも半分近く入っていた。若者に人気の少女コミック、くらもちふさこの「天然コケッコー」を原作に「ジョゼと虎と魚たち」で脚色の冴えを見せた渡辺あやが、7人の子供たちのエピソードを巧みに繋いで小さな分校での幸せの日々を綴っている。

(C)2007「天然コケッコー」製作委員会
(C)2007「天然コケッコー」製作委員会

   舞台は日本海に面した小さな町。中2の右田そよ(夏帆)が主人公。家族のような小中学校併せて6人の子供たちが通う分校。そよにとって初めての同級生が東京から転校して来た。大沢広海(岡田将生)だ。イケメンの広海はたちまち人気者。そよも心トキメキ組だが、小1の初子のオシッコをちゃんと拭いたかと言われ、頭に来る。その反面、皆で出かけた海水浴で広海の優しい心根に魅かれる。

   今でもこのような純朴で素直な子供たちがいるのだと微笑ましい。「行って帰ります」「ワシの名前はー」「帰るけ」など方言丸出しの会話。子供を取り巻く大人たちが子供の世界を揺るがす。父親が女を作って離婚したため広海は祖父の家に同居することになったとか、そよの父親(佐藤浩市)と広海の母親(大内まり)が怪しいとか、いろんな雑音がそよを襲う。

   憧れの東京への修学旅行は、聳え立つ都庁ビルを見ても村の山と同じだとさして驚かない。下級生へのお土産がルーズソックスというのも可笑しい。初キスを許すか、どういう切っ掛けでするか、二人を悩ます問題だが、厭らしさは無くスガスガしいキスシーンだ。オシッコ洩らしの小1の初子が笑える。「さっきしたんだから我慢しなさい!」と、そよは広海が気になって声を荒げるが、翌日膀胱炎になったと聞き、広海の誘いを断り、給食のスイカを持って初子の家へ駆けつける。

   「もう直ぐ消えてなくなるかも知れんと思やぁ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう」と呟くそよの言葉がこの映画「天然コケッコー」のテーマだ。山と田んぼが広がる木村町。少女が恋を知り、大人が心広く優しく見守り、中学校を卒業して高校生へと成長して行く。

   子供たち7人はそれぞれ伸び伸びと演技をしていて映画を引っ張る。特にCMでお馴染みになった夏帆が、映画初主演とは思えない中2の多感な少女を好演している。それに引き換え、佐藤浩市や夏川結衣などの演技派をキャストしたのに、大人たちを描ききれていないのが残念だ。監督は「リンダ リンダ リンダ」で女子高生の青春を好演出した山下敦弘。人気バンド、くるりの主題歌「言葉は三角で心は四角」が耳に残る。