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「病気で手足切断」救う自分の細胞 新医療を追う

   「薬ではなく、そして手術でもなく、患者本人の細胞の力を最大限利用して治療を行うのが『細胞治療』です」。番組冒頭、国谷裕子キャスターの第一声も、気のせいかいつもより明るく力強く感じられる。

1週間後、足が「温かい」

   今回のクローズアップ現代は「『自分の細胞』で病気を治せ~再生医療最前線~」と題して「革命的な治療法」(松原弘明・京都府立医科大教授)が取り上げられた。

   「まずはご覧いただきましょう」と国谷の力強いお言葉ののち、VTRに登場したのは京都府立医科大付属病院に入院してきた71歳男性。足先に血液が行き渡らず、組織が死んでしまう疾患が深刻で、すでに右足は切断されている。残る左足も見るからに黄色く、血色が悪い。

   こうした症状は糖尿病や動脈硬化の人に起きやすく、全国で400万人が患っているそうだ。悪化すると切断するしかなかったが、薬でも手術でもなく――「本来人間のもってる再生力を外からブーストするだけ」(松原)で治るという。

   その治療方法は、患者の腰骨から骨髄液を500ccほど採取し、骨髄幹細胞を抽出し、その細胞を今度は患部に注射するというシンプルなもの。骨髄細胞には血管をつくる(のを促す)働きがあるのだという。1週間後、骨髄細胞を注入した足には文字通り血が通うようになり、患者の妻は足を触って「温かい」と喜ぶほどに。4週間後には松葉杖を使って歩けるようになった。

臓器再生も臨床研究中

   骨髄細胞をつかった足の血管再生治療は国の先進医療に指定されており、17の医療機関で治療がうけられるという。細胞治療に使われる細胞にもイロイロあり、最近は万能細胞が注目されるが、とにかく現在は骨髄細胞が代表格だそうだ。肝硬変になった肝臓など、臓器を再生する働きも期待され、ただいま臨床研究中だという。

   気になるのは課題・問題点だ。この番組では、一見すると画期的な「対策・取り組み」が取り上げられても、番組が進むにつれて次第に問題点が明らかとなり、マイナスが積み重なって、最終的にはプロスとコンス(メリットとデメリット)がほとんど釣り合ってしまうような事態がよく起きる。

   しかし、今回に限ってはデメリット――麻酔が必要、血管の状態がひどく悪いと効き目が薄い、癌患者には使えないなど――をメリットが大幅に上回っているようだった。超高齢化社会や食料高騰、地球環境など、「対策」できるのか不安な問題が多い「現代」のなかでは、明るい光が感じられた回であった。

ボンド柳生

<メモ:万能細胞>
   人間のさまざま組織に分化できる細胞で、再生医療の切り札的存在として大きな注目を集める。従来研究が進んでいたヒトの受精卵から作製されるES細胞に加え、近年は皮膚細胞をもとに作製されるiPS細胞(人工多能性幹細胞)が脚光を浴びている。