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「政策論争なき冒頭解散」 与党に有利か

   <ニュース通信簿>麻生首相は、自ら閣僚名簿を読み上げ、期待する役割を付け加えたりして、「麻生スタイル」を演出したようにみえる。が、「このメンバーで選挙に向かう」といったように、選挙向けの布陣であることは見え見えだ。

   与党内の流れは、「ご祝儀相場」のうちに解散・総選挙へ、というのが主流で、臨時国会の冒頭解散、11月2日投票という日程がいわれている。首相としての初の会見でも、記者の関心はこの点に集まった。

「麻生政策」も「財源はどうするんだ」

   しかし首相は、「今年に入って不景気だと思う。補正予算はぜひ審議していただきたい。野党(民主)が応じてくれればありがたい。これを勘案して解散を考える」と、野党次第という口ぶりだった。本音はわからない。

   NHKは夜の解説「時論公論」で、影山日出夫解説委員が、解散をめぐる動きを整理してみせた。これがわかりやすい。

   総裁選を通して麻生首相は、景気対策を最優先と訴え続け、積極姿勢を印象づけた。主張は「消費税は3年間あげない」「投資減税・法人税見直し」「ばらまきはしない」の3点で、社会保障、農業政策、金融不安など生活に関わる経済政策にはほとんど触れなかった。

   民主党の政策を「財源はどうするんだ」と攻撃しながら、自らの財源問題、定額減税や道路特定財源の一般財源化などの中身も示していない。これでは、選挙で政権継続を支持してといわれても「判断のしようがない」と影山解説委員はいう。

   もうひとつ、後期高齢者医療制度がある。この「抜本見直し」を麻生首相が打ち出したのは、総裁選の投票日前日で、党内論議もなし。中身は選挙に勝ってから、ということのようだが、これも選挙で高齢者をつなぎとめようという意図は見え見えだ。きちんとした説明なしで、高齢者が理解するかどうか。

   冒頭解散にからんでは、補正予算を成立させなくていいのか、がある。総額1兆8000億円。燃料高にあえぐ農漁業者支援に1500億円、中小企業に4000億円など緊急のものを含む。これを仕上げずに選挙に入っては、「景気対策の麻生」が吹っ飛ぶ。

補正審議と支持率の綱渡り

   ここが微妙なところだ。民主党も、審議日程がきちんととれれば、補正予算審議に応じるとみられているが、ここで年金改ざんや事故米問題などをもちだされて長引くと、民主党の思うつぼ。またどんなボロが出るかわからないし、選挙にはかえってマイナスになりかねない。

   もうひとつは、内閣支持率だ。これが高く出れば、早期解散に傾く。逆に低くでれば党内は慎重になる。補正予算審議と内閣支持率の綱渡り。麻生首相は厳しい決断を迫られるわけだ。

   影山解説委員はここで、前々回の総選挙を引き合いに出した。小泉首相は安倍幹事長というサプライズを演出して解散したのだったが、結果は自民が議席を減らし、事実上の敗北だった。マニフェストを立てた民主党の政策論争に、有権者が耳を傾けた結果だった。このことから、政策論争なしで選挙に入った場合、国民がどんな審判を下すか。「リスクはもっぱら与党側が背負うことになるだろう」という。

   今度の選挙は、国民の1票が実質的に政権選択になるという珍しい選挙だ。国民の関心も高い。逆に有権者が問われる選挙でもある。マニフェスト選挙のあとの郵政選挙では、みごとに踊ってしまったのだから。

ヤンヤン

   *NHK「時論公論」(2008年9月24日放送)