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「命の危険」も取りざた 相撲「八百長告白」に注目

   週刊誌を読むのはそば屋がいい。現代、ポスト、朝日、文春、新潮を抱えて、早稲田大学近くの「金城庵」へ入る。

   板わさと塩味キャベツを肴に、パラパラページをめくりながら菊正宗正一合のぬる燗を呑む。

「大阪放火の容疑者」勤め先明記したのは…

   麻生政権ができた直後、朝日新聞などが「10月26日総選挙」とぶちあげたのは、解散風を煽りたいマスコミの「偏狂報道」だと上杉隆が怒っている(朝日)。何でこれが「誤報」だと批判されないのか。

   朝日とポストが総選挙予測をやっている。朝日は、自民党が実施した「極秘」選挙情勢調査から、自民党が180前後、公明党分を入れても過半数に届かない210程度。ポストは、民主党が実施した「門外不出」の世論調査データによるとして、「比例代表を合わせても見込めるのは160~180議席にとどまる」のだそうだ。自民党は引きずり降ろしたいけど、ワンマン・駄々っ子の小沢は恐そうだし。それが問題なんだよなと、ぶつぶつ呟きながら、焼き鳥を追加する。

   各誌、大阪ミナミの個室ビデオ店を放火して15人を「殺した」小川和弘容疑者を取り上げているが、彼が元勤めていた「超有名企業」名を松下電器(現パナソニック)と書いているのが、新潮と朝日。現代、ポスト、文春にはない。現代は、「46才リストラ男『超有名企業』の過去と狂気」とタイトルにまで謳ってあるのに。広告代理店から圧力がかかったのかと、ゆるゆる酔いながら茶々を入れる。

国技よどこへ行く

   だが、今週の話題を独占したのは、朝青龍が法廷に出たこともあって、現代の「若ノ鵬 八百長告白」である。出稽古に行った春日野部屋で受けたきつい「かわいがり」、大関琴欧州がカド番のとき頼んできた「プライグライ(負けてほしい)」、両国の上で渡されたお礼100万円などについて詳細に語っている。次号では、注射(八百長)だけではなく、大麻を吸引していた力士や親方の話をするそうだから、注目である。

   若ノ鵬は法廷でも証言する。したがって「(相撲に<筆者注>)八百長は一切ない」として、現代を訴えている相撲協会側の主張は崩れる。

   他誌も、この話題を扱っているが、温度差があって面白い。新潮は、石原都知事の「協会が、一切八百長はございませんと言い切れるだけのあれ(根拠)があるのかねぇ」発言を取り上げている。

   八百長追及では元祖のポストは、若ノ鵬が会見時、何かに怯えたかのような表情に注目して、「若ノ鵬は消される!」と忠告している。12年前、ポストで八百長と大麻を告発した元大鳴戸親方とその友人が、この問題について外国特派員協会で講演する直前、病院で同じ日に急死したことがあったからだ。ポストは、怯えの裏にあるのは、水産物や鉱物資源などの日ロビジネスに暗躍するロシア・マフィアではないかとし、朝日は、八百長告発で「相撲トトカルチョ」が仕掛けられなくなる暴力団ではないかと推測する。

   かつて「巨人、大鵬、卵焼き」といわれた時代があった。泥まみれになった国技よどこへ行くと、酩酊した頭でうだうだと考えながら、シメの鴨せいろをすすった。


元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)ほか