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「サイバー暴力」規制騒動 韓国に学ぶべきか

   ネット上の言葉の暴力。日本でも問題になっているこの『サイバー暴力』の規制を巡って韓国社会が揺れ動いている。

   誹謗中傷の書き込みで自殺者が多発し、昨2008年10月には韓国の国民的女優がネット上に書き込まれた中傷を苦に自殺した。

賛否めぐり与野党激突

   これがきっかけで、サイバー暴力の規制強化が必要だとした与党・ハンナラ党が11月、『サイバー侮辱罪』の法案を国会に提出したのだが……

   野党・民主党が言論弾圧に繋がると猛反発し、本会議場を占拠する騒ぎにまで拡大。市民団体を巻き込む争いにエスカレートしているのだ。

   番組は、韓国ネット事情に詳しいITコンサルタントのヨム・ジョンスンが生出演し、サイバー暴力の被害例や書き込みの実態、さらにネット規制の在り方を探った。

   インターネットの普及率が90%を超え、世界で最も普及していると言われる韓国。比例して書き込みによる名誉棄損処理件数もウナギ昇り。04年の1259件から07年には3610件と3倍に膨れ上がっている。

   番組は、一般市民がサイバー暴力のターゲットにされ、生活が一変した例を取材した。

   夫と子供3人の5人で暮らしている女性。子供好きから3人の子供のうち2人の男の子は孤児院から引き取り、養子にして育てている。

   女性は昨年6月、米国産輸入牛肉の再開に反対する市民デモに子供3人を連れて参加した。デモに加わったのは、子供の食の安全を訴えて脚光を浴びた「乳母車部隊」だった。

   数週間後インテーネットのニュースサイトを見て目を疑った。デモに参加した時の模様が写真付きで掲載され、「養子を虐待している」といった誹謗中傷の文句が多数書きこまれていた。

   女性は、精神的に追い込まれ、夜も眠れない日々が続き、挙句に引っ越しをするハメに。

「訴えられると判断できない人たち」

   もう一つは、サイバー暴力のために仕事まで失った男性が裁判で立ち向かっている例だ。

   大手ポータルサイトが、この男性の元恋人が自殺した事件を実名入りの写真付きで報じたことから書き込みが始まった。

   「女性は妊娠していた」「女性に暴力をふるった」など。男性によると、「瞬く間にネット上で破廉恥な人間にされ、仕事を辞めざるを得なくなった」という。

   男性は、書き込みをした人の責任を追及したいと調べたが、あまりの多さに断念。代わりに掲載したポータルサイトを訴えた。

   1、2審で裁判所はポータルサイト側の責任を一部認め、賠償金300万円の支払いを命じた。が、ポータルサイト側はこれを不服として上告、最高裁に持ち込まれている。

   キャスターの国谷が「書き込んでいるのはどんな人たちですか?」という疑問に、事情に詳しいヨムは「大人なら名誉棄損で訴えられると判断できるが、それができない小・中・高校生たちの書き込みが非常に多いと思う」と。

   韓国では現在、誹謗中傷の書き込みに対して最高300万円の罰金制度が設けられ、書き込んだ人物の身分を捜査機関が確認できる法律もある。ただ、それも被害者の訴えがあって初めて捜査が開始できる仕組み。

   問題になっている『サイバー侮辱罪』では、捜査機関が常時、誹謗中傷の書き込みを監視し、悪質と判断すれば被害者の訴えがなくても捜査し、逮捕できる仕組みに強化されている。

   言論の自由を守りながら悪質なサイバー暴力をどうするか? ネット社会・韓国が突きつけられている課題だ。

モンブラン

*NHKクローズアップ現代(2009年1月14日放送)